児童文学『マガーク少年探偵団⑧ まぼろしのカエル』(あかね文庫)/シュシナクアアアルアラアアルアラアアルナアアルアグラアアルク!」と鳴くカエルとは?
『マガーク少年探偵団⑧ まぼろしのカエル』(ヒルディック作 蕗沢忠枝訳 山口太一絵)
イギリスの作家エドマンド・ウォレス・ヒルディック(E.W.Hildick 1925-2001)による児童文学シリーズ『マガーク少年探偵団』は、1974年に始まり1996年まで24作発表されました。“マガーク・ミステリー”と呼ばれた人気シリーズです。日本語版はあかね書房から翻訳 蕗沢忠枝、作画 山口太一によって刊行されています。
その中の一作に『まぼろしのカエル(原題The Case of the Phantom Frog』1979年発表)があります。
作中の「マガーク少年探偵団」は、10歳のジャック・マガークが創設して団長を務める探偵団。推理小説的にはマガークがシャーロック・ホームズだとしたらワトソン的役割を務める記録係のジョーイ、嗅覚がよく「鼻のウィリー」とあだ名されるウィリー、木登り上手なおてんば少女ワンダが創設メンバーで、後から科学知識が豊富なブレインズ、日本人少女のマリ・ヨシムラが加入します。
そしてこの『まぼろしのカエル』でマガーク少年探偵団は、幼い甥っ子を一時あずかっているという彫刻家のクランツ夫人から最初はその男の子ベラの子守りを頼まれるが、探偵団としてのプライドが許さず断る。しかし、夫人の依頼の裏にはその子が家に泊まるようになってから夜になると怖ろしい鳴き声が聴こえ、それは夫人が大嫌いなカエル、しかも“ものすごいカエル”ではないかと不安に思っていたところ、ベラはそんな声を聞いていないという。その真相を調べてほしいと依頼された、探偵団としては引き受けがいのある事件だった。
名付けて「まぼろしのカエル事件」。マガーク少年探偵団の捜査が始まった。
7歳の少年ベラとマガークたちの頭脳戦、心理戦に読み応えがあり、ハンガリー出身のベラは「吸血鬼」や「オオカミ男」ならぬ「カエル人間」なのかと思う場面も。ネタを明かせば最後はペットとして飼っていた「キューバ・ツリー・フロッグ(Cuban Tree Frog/学名Osteopilus septentrionalis) へのベラの愛情があったのでした。
本種は国立環境研究所の侵入生物データベースによれば、元々はキューバ、ケイマン諸島、バハマ諸島などに分布していたアマガエル科のカエルだが、ある時期に米国フロリダにヤシ類の輸送に伴って持ち込まれたという。アマガエルとしては大きく、オスは最大で9㎝、メスは14㎝にもなる。鳴き声が大きく、口に入るものは昆虫からトカゲ類、他のカエル類、鳥類のヒナなど何でも食べる。
目はクリッとしてかわいいが、クランツ夫人から“ものすごいカエル”ではないかと怖れられただけはある。本作の中でこのカエルは、「シュシナクアアアルアラアアルアラアアルナアアルアグラアアルク!」と鳴いています。「るてえる びる もれとりり がいく。……」と詩集『ごびらっふの独白』を蛙語で書いた草野心平なら理解できたかもしれないと思いました。
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