■「ゆかいな若冲・めでたい大観ーHAPPYな日本美術ー」(山種美術館)とカエル
伊藤若冲 《河豚と蛙の相撲図》18世紀(江戸時代) 紙本・墨画
この絵に描かれたカエルの種類は何でしょうか。
この作品は、江戸中期の絵師伊藤若冲の手になる「河豚と蛙の相撲図」。現在、山種美術館(東京・広尾)で開催中の特別展「ゆかいな若冲・めでたい大観ーHAPPYな日本美術ー」で観ることができます(2016年1月3日ー3月6日)。
春から縁起がいいテーマの同展は、鶴と亀、松竹梅、七福神、富士山、干支の動物など、日本では昔から吉祥のシンボルとされているものをモチーフにした作品などを通して、日本美術の魅力を味わうことができます。また、思わず笑みがこぼれそうな「HAPPYな情景」が描かれた作品の展示のなかには、カエル好き期待の「カエル」の絵もありました。
今年は伊藤若冲生誕300年で、同展はその記念の特別展でもあり、展示会場の入り口でまさに来場者を「ムカエル」位置に展示されていたのがこの作品。
数年前に発見されたこの絵は、そのユニークな画題で他の美術館でも話題になっていましたが、筆者自身、実物を見るのは初めて。同館顧問で美術史家の山下裕二氏のお話では、日本美術史においてもあまり見られないモチーフなのだそうです。
同館本展担当の学芸員さんとお話させていただいたとき、このカエルの種類は何かということになりました。フグとカエルが相撲をとるという現実にはありえない設定ですが、日本美術史においてはかの「鳥獣戯画」でカエルはウサギと相撲をとった“前例”があるので、フグとだって対戦しないことはない⁈ 「鳥獣戯画」のカエルは、生物学的にトノサマガエルとの見方ができるようですが、果たしてこのカエルは?
有力候補としてフグ同様、昔から毒をもっていることで知られたガマ(ヒキガエル)が挙げられます。今回展示されている作品ではありませんが、若冲が描いた10メートルに及ぶ巻物「菜虫譜」には、最後の方にこのカエルによく似た顔のカエルが登場します。「七十七歳画」と記されたその絵においてそのカエルは晩年の若冲本人をイメージさせるのですが、他にアオガエルなども描いていることから、対比的に若冲が描くこのタイプのカエルはヒキガエルと特定したくなります。
しかし、それでは生物学的な立証としては弱いと思い、両生類に詳しい桑原一司氏(元広島市安佐動物公園副園長)に伺うと、背中のボコボコした線はヒキガエルのように見えるが、以下の顔やあしの特徴からヒキガエルとは特定しないほうがよいのでは、というご意見。
1 瞳が丸い(ヒキガエルは瞳が横長)
2 口の線が円弧(ヒキガエルは口の先が尖り気味)
3 後ろ肢の指が4本(ヒキガエルは5本)
鶏を描くために鶏を飼うほど動物の観察をよく行ったといわれる若冲は、全30幅の「動植綵絵」のひとつ「池辺群虫図」にヒキガエルの特徴をほぼ備えていると見られるカエルをたくさん描いています。その一方で、この絵のように若冲がデフォルメしたヒキガエルを通して隠喩的に伝えたかったこととは何だったのか想像をかき立てられます。
今回、若冲の絵に描かれたカエルの生物学上の分類を考えることで、同展のテーマである“HAPPY”について感じることがありました。幸せにリアルな「かたち」はないのかもしれないということ。それがこの絵に表現された、若冲が毒をもって毒を制してでも求めたかったものではないか、と。同展に足を運んで、ぜひカエルの形と幸せの「かたち」について考えてみてはいかがでしょう。
特別展 伊藤若冲 生誕300年記念
ゆかいな若冲・めでたい大観
ーHAPPYな日本美術ー
会期 : 2016年1月3日(日)~3月6日(日)
会場 : 山種美術館
主催 : 山種美術館、朝日新聞社
お問い合わせ 03-5777-8600
http://www.yamatane-museum.jp/
※カエルもしくはカエルになりかけのオタマジャクシが描かれた作品は、他に柴田是真の「墨林筆哥」、歌川国芳の「きん魚づくし ぼんぼん」が展示されます。余談ですが、同ブログアップの本日2/9は、「河豚の日」、同展が終了するのは蛙も土から這い出して動き出す啓蟄(2016年は3/5)の時期です。
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※新刊『ときめくカエル図鑑』(山と渓谷社刊 文・高山ビッキ 写真・松橋利光)販売中です。どうぞよろしくお願いします。
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<関連サイト>
「100年カエル館」 http://kaeru-kan.com
※Webミュージアムでは2011年に福島県立博物館で開催した「喜多方『100年カエル館』コレクション展」を画像でご覧いただいております。
「カエ~ル大学」http://kaeru-kan.com/kayale-u
「コトバデフリカエル」https://kaeru-kan.cocolog-nifty.com/kotobadefurikaeru ※エッセイで時代をふりかえるサイトです。
カエル大学通信 www.mag2.com/m/0001378531.html
※『かえるる カエルLOVE111』(山と渓谷社)全国の書店等で販売中です。
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