かえるモノ語り―自然と文化をつなぐカエル 55 「ほっと・ねっと」2021年7月号 2匹の「井手の蛙」
<満開の牡丹の園で再び出会った2匹の「井手の蛙」>
高山ビッキ(100年カエル館)
森本寛治作品「UTAHIME」
目も眩むほど無数に描かれた牡丹の花の中で、潜(ひそ)むように跳ねるように佇む2匹の蛙。
この絵は、愛知県碧南市で創作活動をしている日本画家森本寛治氏の作品「UTAHIME」、140㎝×300㎝の大作です。
2019年に100年カエル館は、福島県立博物館で「ときめくカエルアート図鑑」展と題して、碧南市でたくさんのカエルを描いた故柴田まさる氏の作品を展示紹介しましたが、森本さんは柴田さんのアーティスト仲間のお一人。同展へも遠路はるばるお越しくださいました。そのときからご自身の創作の中でも蛙を表現してみようと考えられたようでした。
森本さんの作品に「牡丹」はなくてはならない画題になっていて数多く描いていらっしゃるのですが、そこにぴょんと紛(まぎ)れるように描かれたカジカガエル2匹。アオガエル科のなかまにもかかわらず、黒茶色の体色で、渓流の石の上などでフィフィフィフィーと鳴くカジカガエルは、昔も今も見る人の心を和ませます。
万葉集が成った奈良時代には「かはづ」と言われ、平安時代以降は「井手の蛙(かはづ)」として、「井手の山吹」とともに歌枕「井手」とつながる歌語として位置づけられていったと考えることができます。
森本さんは、鎌倉時代に歌論書『無名抄』を著した鴨長明が抱いていた「井手の蛙」のイメージ、「その鳴き声は、心澄みわたり、もののあはれを感じさせる、まるで清流の歌姫のよう」に着想を得てこの作品「UTAHIME」を描きました。
一方、鑑賞者として私は姉と一緒にこの絵を見て、この2匹の蛙は、今は亡き父と母に違いないと思いました。
以前家の庭に毎年大振りの花を咲かせる牡丹がありそのひとつに、母は父の名前である「連天(れんてん)」を付けて「連天牡丹」と呼んで愛でていました。
この絵が、大きな花柄のフレアスカートを翻す、ありし日の母のようにも思えて……。この絵に彼岸で父と母が「牡丹の園」で再会できたと確信できました。
思えば今年は、父の十三回忌、母の七回忌でありました。
<関連サイト>
「100年カエル館」 http://kaeru-kan.com
「カエ~ル大学」http://kaeru-kan.com/kayale-u
カエル大学通信 www.mag2.com/m/0001378531.html
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