2025年12月 2日 (火)

カエルタイムズ第4号[文化](2005年10月25日発行)落語のカエル かはづの「錦名竹」(青木 隆)

<落語のカエル>

江戸庶民の暮らしが話芸で伝わる落語。そこには「蛙」が登場することもあります。カエルタイムズでは文筆家で落語への造詣が深い青木隆氏に「落語のカエル」を連載していただきました。

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かはづの「錦名竹」 青木 隆

店に来た男は、仲買人・弥一の道具七品に関することづてを小僧の定吉に伝える。だが、男は上方訛りで早口に道具の名前を連呼するため、定吉にはチンプンカンプン。七品とは、名刀鍛冶・則光が打った脇差、隠元禅師が京都に建てた寺庭に生えている錦名竹(きんめいちく)使用の自在鉤(じざいかぎ)、竹を寸胴切りにした花活け、織部がつくった香合(香を入れる器)、京都の楽焼である温古(のんこ)の茶碗、風羅坊(ふうらぼう)正筆の掛け物、張り交ぜの小屏風・・・定吉でなくても、現代のわれわれにも理解しがたい。

そのなかに「風羅坊」とあるのは、松尾芭蕉のこと。もともとは、人の心に気まぐれな行動を起こさせる「そぞろ神」の意味で、それに誘われ奥の細道に旅立った芭蕉を、人々は「風羅坊」と呼んだ。ことづてを話す男は「古池や蛙飛び込む水の音と申しまする風羅坊正筆の掛け物」と説明する。正筆とは、芭蕉が直々に書いたという意である。

男は、数回にわたりことづてを伝えたあと「ほな、わては急ぎますよって・・・・」と帰ってしまう。そこへ、定吉の主人が店に帰ってきた。

「いま、だれかが店から出ていったようだが」

「仲買人の弥一さんのことづてです」

「おお、弥一がどうしたって?」

「古池に飛び込んだそうです」

「なに!。弥一には道具を買えと指示しておいたのだが、ちゃんと買ったのか?」

「いえ、買わず(蛙)でございます」

というのがオチ。錦名竹は口慣らしのための前座噺だが、「居酒屋」などで知られた三代目・三遊亭金馬など、名人たちもよく高座にかけていた。

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タイトル画は100年カエル館所蔵の郷土玩具のカエルをイラスト化した“カエルの風羅坊”。(写真:100年カエル館発行『蛙辞林』より。)

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2025年11月30日 (日)

カエルタイムズ第4号[文化](2005年10月25日発行)映画とカエル テリー・ギリアム『ブラザーズ・グリム』(高山ビッキ)

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カエルタイムズ第4号より

<映画とカエル>

洋画、邦画を問わず、映画を観ていても“飛び出して来る”ことがあるカエル。第4号のカエルタイムズでは、『未来世紀ブラジル』『バロン』など独自の型破りな映像表現で知られるテリー・ギリアム監督作品で2005年に日本でも公開された『ブラザーズ・グリム』を紹介しています。

映画とカエル テリー・ギリアム最新作『ブラザーズ・グリム』

グリムのカエルは登場するだろうか。

先日(2005年当時)行われた東京映画祭のオープニングのために来日した、鬼才テリー・ギリアム監督。その最新作が、あの「グリム童話」を世に残したグリム兄弟を主人公に、そこから発想を得て奇想天外なファンタジー・ワールドを創り上げた作品『ブラザーズ・グリム』である。

実在したグリム兄弟(兄ヤーコブ 1785―1863、弟ヴィルヘルム 1786-1859)は、19世紀の初め二人で集めた49編の民話を「子どもと家庭のメルヒェン集」として出版した。映画では、マット・デイモン扮する兄のウィルとヒース・レジャーが演じる弟のジェイコブ(役者のキャラクターの都合上兄弟の名前が逆転しているようだ)は、さまざまな土地の魔物を退治することで賞金を稼ぎ、各地の民話も集めていた。

そんな時、ある村で起きた10人の少女たちの失踪事件を依頼される。赤いずきんの少女もグレーテルという名の少女も、みんな森に入ったきり帰ってこない。二人は調査を進めていくうちに、森の奥にそびえ立つ搭の物語にたどり着く。そこにはかつて非常に美しく傲慢な性格の女王がいた。彼女は今では鏡の中だけでしか美しい姿を見せられないようになっていた。少女たちの失踪事件は、若さを失った鏡の女王と関係していることがわかってくるが……。

ストーリは、「赤ずきん」「白雪姫」「シンデレラ」「眠れる森の美女」など、グリム童話の中のお話の数々がみごとに織り込まれて展開していく。ただし、テリー・ギリアム監督によって現代の“魔法”をかけられた本編は、きっとグリム兄弟、そしてグリム童話に親しんだ誰をも驚愕させる未知のファンタジー・ワールドへと誘い込んでいく。

さて、グリム童話といえば「かえるの王様」も有名なお話のひとつ。本紙ではこの映画の作品の魅力を伝えつつ、読者の皆様のために本作にカエルが出てくるかどうかをお伝えする責務がある。そこで配給元の東芝エンタテインメント㈱からカエルが登場するワンシーンの写真をお借りした。フェアリーテイルに基づいているとはいえ、アクション、アドベンチャー、ホラー、コメディ、ラブ・ロマンスなどなど、いろんな要素に満ち溢れているテリー・ギリアムワールドの中で、できればカエルも見逃したくないものである。

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2025年11月21日 (金)

カエルタイムズ第4号[趣味・生活](2005年10月25日発行)「気づいたらいつもカエルがそぼにいてくれた。」(和田美保)

<100年カエル館と和田美保さん>

100年カエル館やカエルタイムズを通してカエルを愛する方々と知り合う機会が増えました。長野県松本市にお住まいの和田美保さんもそのお一人です。気づけば出会って約20年。こちらが松本かえるまつりに参加したり、和田さんが100年カエル館や同館主催のカエルのイベントに足を運んでくださったり、年に1回会うか会わないかですが長いおつきあいになりました。カエルタイムズにも寄稿していただきました。そのカエルライフはとてもファンタジックです。

気づいたらいつもカエルがそばにいてくれた。 和田美保(長野県松本市)

私が家中のあちこちにカエルグッズがあるのに気づいたのは、およそ10年前です。少しずつ増え続けていたカエルグッズ達は自己主張せず家の中の景色に溶け込んでいました。

いつから? 記憶をたどると・・・ずーっと昔、幼稚園の頃から。

私の実家は松本の「松本かえるまつり」の行われる縄手通りのすぐ近くにあります。庭の池にはツチガエルが居て一番の遊び相手でした。ひっくり返してお腹をさすり死んだまねをさせて催眠術ごっこをしたものです。叱られて庭に出された夜には、月の光の中で蛙達の丸い瞳と鳴き声が私を慰めてくれました。

蛙好きの子供でしたのでプレゼントをはじめ図画工作の作品などは当然のようにカエルさん。

東京で一人暮らしの大学時代にはヒキガエルを飼っていました。テレビドラマに出てきた魔法使いのお爺さんの分身のヒキガエルの名前を取って「グーチェ」と命名。「グーチェ」と過した日々は楽しい思い出です。しかし同時期、実験用のカエルを扱うのも私の得意分野で友人らにはかなり頼りにされたものでした。

あれから数十年。「カエルとの縁」を確信してから、私のカエルのコレクションには「こだわり」が加わり、ますます「とりこ」に・・。「こだわり」とは、昔叱られ、庭に出された夜のあの蛙達のイメージ。月夜の蛙です。

カエルグッズは次第に増え、今では趣味で始めていたステンドグラスの中に私の「こだわり」を表現するようになりました。まだまだ未熟ですがオリジナルの作品を作るのが何よりの喜びです。ステンド教室の展示会で神妙な面持ちで鑑賞していた人が私のカエル作品の前ではにこっと笑う。これもカエルが持っている癒しのパワーだと改めて感心しています。

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和田美保さんのステンドグラス作品のカエル

3年前には「かえる友の会」に入会。様々な形でカエルと接するカエル好きの人達の中にドップリ浸かるのは年に数回のお楽しみとなりました。さらに、4回目を迎えた「松本かえるまつり」では去年から「かえるルーム」のお手伝いをさせてもらっています。

蛙との思い出が詰まった実家のすぐ近くで「かえる祭り」開催とは、やはり深いご縁があったのですね・・・。

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2025年11月18日 (火)

カエルタイムズ第4号[自然・総合](2005年10月25日発行)「東京のカエル」(浅井ミノル)

<100年カエル館と浅井ミノルさん>

2005年当時、井の頭自然文化園水生物館館長をされていた浅井ミノル氏にカエルタイムズにご寄稿いただきました。ここでは第4号の自然・総合面に書いていただいた「東京のカエル」を紹介いたします。カエルの生息地の減少は当時すでに言われていましたが、特に東京をはじめ都市部においては身近にカエルを見かけることがなくなったことについて書かれています。

あれから20年経ってカエルを取り巻く状況はあまり変わっていないようにも見えますが、カエルについて関心をもつ人や研究する人は確実に増えていると思います。都市部におけるヒキガエルの生態についても調査報告を読むことがあります。高層階のベランダのプランターなどに姿を見せるいわばアーバンフロッグは、新しい自然を歩み出しているのでしょうか。

特別寄稿「東京のカエル」浅井ミノル(井の頭自然文化園 水生物館館長)

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23区内にすむヒキガエル

いま東京都の23区内で見ることが出来るカエルの筆頭はアズマヒキガエル(以下ヒキガエル)でしょう。ほかのカエルの仲間がほとんど姿を消してしまった都心の近くにもまだすんでいるようです。東京都環境局がまとめた「東京都の保護上重要な野生生物種」(いわゆるレッドデータブックの東京版 1998年刊)によれば都内区部のヒキガエルの現状は「希少種」に相当するランクとされています。

私が見ている限りですが、23区内のヒキガエルの将来は決して明るくはありません。彼らがすむのに適した、庭のある昔の家はどんどん取り壊され、コンクリートで地表が固められたマンションに変わっています。一般の家屋も昔のような生垣や竹垣から、小動物が自由に通り抜けることができないブロック塀に変わっています。初春や秋には道路で自動車にひきつぶされたヒキガエルの姿を見かけ、心が痛みます。

カエルにとっての都会生活のきびしさ

ヒキガエルは通常は池などの水場がなくても生きていけますが、産卵とオタマジャクシの成長には水のある場所が必要です。都内には安定して水をたたえ、オタマジャクシを捕食する魚がやって来ない、浅い池が少なくなっています。最近都内の小学校では“ビオトープづくり”として学校に池をつくるところがありますが、私たちのビオトープ経験からいうと、ヒキガエルは産卵はできるのですがオタマジャクシになってからなかなか育ちません。一方で都会のビオトープ池にはトンボはたくさん飛んできて産卵しヤゴが育ち、いつの間にかアメリカザリガニがすみ着きます。オタマジャクシの捕食者が多すぎるのでしょうか。

そしてもうひとつの障害、つい最近も電話で相談を受けました。「うちの庭にもう何年もカエルがすみ着いて、気持ち悪くて困っているんだけど何とかなりませんか?」・・・カエルがすめる自然のあるすばらしい庭ではないですか、とお話しても理解してもらえそうもありません。都会の高層ビル化の動きはなかなか覆すのは難しいのでしょうが、人のカエルへの理解が少しでも高まってほしい、と思うのです。

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2025年11月16日 (日)

カエルタイムズ第4号[自然・総合](2005年10月25日発行)自然写真家前田憲男氏の「晩秋のカエルたち」

<100年カエル館と前田憲男さん>

100年カエル館は2024年に前田憲男氏の日本のカエルの写真と故柴田まさる氏の日本のカエルを基にしてキャラクター的に描いたスケッチ画を併設展示した「カエルアートマン展」を開催しました。日本の全種類のカエルを撮影されている前田さんには、カエルタイムズにもフォト・エッセイを書いていただきました。日本全国、カエルが棲息しているところに出向いて撮影するフットワークは、まるで日本列島各地のカエルたちとのネットワークがあるかのようで、それぞれのカエルと自然環境の関係まで映し出されています。カエルタイムズを編集していたときには、当時東京・池袋にあった弊社事務所まで「近くまで来たから」と軽快なフットワークで写真を届けてくださいました。

フォト・エッセイ「晩秋のカエルたち」自然写真家 前田憲男

広島県のダルマガエル救出作戦

本州の稲刈りが終わった、初秋の水田にはまだ暖かみを残した陽光が輝き、トンボたちが過ぎ行く何かを探すがごとく飛び交っている。わずかに伸びた雑草の中に足を運ぶと、思いも及ばぬほどの虫たちが飛び出してくる。わずかな地域にこんなにも多くの生命が生存していたのか息がつまる思いがする。田んぼに積み残された藁(わら)クズを踏むとカエルが飛び出してきた。厳しい冬にそなえ体力を貯えるための絶好のレストランに足を踏み入れたようだ。

一昨年の秋、広島県でダルマガエルの生息していた水田が商業地区開発により埋め立てられることになった。少数の識者と子供たちによる救出作戦が思い出される。藁クズや雑草をかき分け、冬眠の準備に入ったカエルを手にマメをつくりながらスコップで掘り起こし探す。体力のいる作業だが、救出できたカエルはわずかだった。救出したカエルたちの移転先をどこにするかも大きな問題だった。以前、同県で移転事業を行ったとき、近くだが少し環境が異なる場所に移転を試みたが定着できなかったからだ。

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ダルマガエル(上)トウキョウダルマガエル(下)

紅葉の天城山中のモリアオガエル

週末の伊豆箱根に向かう道路では、大変な車の渋滞に巻き込まれた。快適な季節に自然の大気を求め、紅葉狩りや温泉に向かうためコンクリートジャングルの首都圏から逃れてきた人たち。さずがに天城山中に入ると車も少なくなり、目的地の池に続く林道に入ると対向車は見られなくなった。池に至る登山道は、実をつけた雑草や秋花におおわれていた。小さな沢を渡り最後の登り坂を越すと池に至る森林に踏み込む。足元からは春先と異なり、早くも散りはじめた落ち葉を踏む柔らかな感触が伝わってくる。

樹林に届くかすかな光に照らされたツチアケビの赤い実が浮き上がる。池の近くにはホトトギスが秋光を受け紫色の可憐な花びらを広げている。9月初めにはあれほどいたモリアオガエルの子ガエルの姿は見られないが、まだ時折鳴き声が聞こえてくる。落ち葉や朽ち木をそっとめくってみると、太った子ガエルがうずくまっていた。厳しい生存競争に残ったわずかな子ガエルたちにはさらに過酷な冬が待っている。近くのコケの下には成体もひそんでいた。

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モリアオガエル

繁殖期を迎える沖縄の秋のカエルたち

北欧では上空に冷たい寒気が強くなり、日本列島に寒波が押し出す気配が強まってきた。沖縄北部の山岳部、山の沢を目指し森林の林床を小鳥のような鳴き声で鳴き交わしながら移動するカエルがいた。日本列島に到達する寒波にタイミングを合わせるかのように産卵するリュウキュウアカガエルたちである。沖縄の山間部ではこのカエルを筆頭に、ハナサキガエル、イシカワガエルがこれからの寒い時期に繁殖期を迎える。カエルたちの活動が活発になると、寒さにも関わらずヒメハブやハブの活動も活発になり生残りを賭けた生存競争がここでも繰り広げられる。

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リュウキュウアカガエル

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2025年11月13日 (木)

カエルタイムズ第4号[自然・総合](2005年10月25日発行)岩澤久彰先生のコラム A murmur of kaeru「冬眠前のカエルの呟き」

<100年カエル館と岩澤久彰先生>

大学で長く教鞭をとられた故岩澤久彰先生は、発生学がご専門でカエルの研究者でした。名誉教授になられてからは日本両生類研究会を創設されカエルに関わる後進を育てることにも尽力されました。100年カエル館と先生の出会いは、先生もカエルグッズの蒐集を趣味にされていたことで喜多方の骨董店に立ち寄られることがあり、父と共通のご友人がいらっしゃったことからわが家を訪ねてくださったことがあります。100年カエル館を創設する前のことです。

100年カエル館の創設やカエルタイムズの刊行は岩澤先生の激励があって実現したと言っても過言ではありません。当初カエルタイムズは100号をめざして刊行を始めました。先生も100号までがんばりたいと執筆を受けてくださいました。その手書きの原稿はファックスで届き、図版は郵送していただきました。ここではカエルタイムズ4号(蛙新聞壱百分之四號)に掲載した先生のコラム「冬眠前のカエルの呟き」を紹介します。

コラム A murmur of kaeru「冬眠前のカエルの呟き」新潟大学名誉教授 岩澤久彰

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秋も深まってきた。山野のカエルは夏の間、老いも若きも、起きては喰い、喰っては寝ての毎日を繰り返してきたが、同じ変温動物のヘビやトカゲのような鱗(うろこ)さえない丸裸の素肌に夜風の寒さを感じる頃になると、冬の厳しい寒さを経験したことのある1歳以上のカエルは前年の辛い経験を思い出すだろうが、この春に生まれた若ガエルは、何となく様変わりしてきた周囲の光景に気づき、戸惑っていることだろう。夜霧にぬれて体が冷えると、カエルは変温動物だから体温が下がり、体の諸々の働きが鈍ってくる。この秋口の冷気は0歳の若ガエルには強いストレスになっている筈(はず)である。カエルはとてもストレスに弱い。

私はカエルの言葉が判らないので、明言はできないが、ひと冬の経験を持つ1歳のカエルと初めての冬を迎える0歳のカエルを自然に近い状態で飼育してみれば、冬の入りに対する両者の振る舞いの違いが何となく判る筈である。自然に近い状態の飼育室で大切に飼育されてきた、2、3回の冬眠経験のある中年のカエルなどは、冬の到来を小学生の冬休み入りぐらいにしか思っていない点が感じられる。私はここ2、3年の思案で、発育のよいカエルにとって、冬眠は大したイベントではないようだと考えるようになった。

カエルは人間よりうんと短命だから、少し前のことも知らないだろうが、カエルの寿命にも関わることで、昨今、大きく変わったことといえば、地球の温暖化である。

私はカエルの多い越後の田舎町で生まれ育ったが、小・中学校の頃の冬の雪はとても大変で、気の小さい私は、文化の日を過ぎた頃から、もう冬の通学のことを心配していた。ところが今は、冬になっても雪らしい雪は積もらない。冬近くになって気になるのは、年賀状書きのことくらいである。

この温暖化のお陰で、近年は雪国でも冬眠中に凍死するカエルは稀ではなかろうか。凍死するのは、たぶん、充分な餌を捕れず、栄養不足で冬を迎えたか、病気の個体くらいのものであろう。

いくらひもじいといっても、秋枯れの地面には、もはや餌になる小動物は多くはない。変温動物のヘビは既に寒さで動きが鈍い。餌探しの時に気をつけるべきは、今が書き入れ時の元気一杯なモズである。モズに捕まると枯木の小枝に刺されて俳句のネタになるのが落ちつくところだ。

眼にふれて 日ごとからびぬ 鵙(もず)のにえ (杜夫)

新潟地方気象台の長期予報によれば、北陸地方の今冬は暖冬小雪の可能性が強いという。予報があたってもらいたいものである。

前述のように、私はカエルの言葉が判らず、その上老齢のためカエルの呟きがまったく聴きとれない。それで題名に外れた文面になってしまった。お許し下さい。(写真はアズマヒキガエル)

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2025年11月 9日 (日)

カエルタイムズ第4号(2005年10月25日発行)「カエルうた暦 四」霜月から師走へ、冬眠へ/大澤秀人(元「かえる友の会」会長)

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<「カエルタイムズ」をアーカイブ化>

100年カエル館は2005年に「人と地球とカエルのためのヒーリングメディア」をキャッチフレーズにした新聞「カエルタイムズ」を創刊し、12号まで刊行しました。このブログ「コトバデフリカエル」では、私たちがかつて刊行した印刷物等をアーカイブとして紹介しておりますが、今回からカエルタイムズに掲載した記事を取り上げて参ります。

創刊からあっという間の20年。当時、カエルの情報だけを集めた珍しい新聞ということで一般紙・ラジオなどメディアでも話題にしていただいたことを思い出します。編集当時を振り返りながら紹介して参ります。

<大澤秀人さんの「カエルうた暦」>

今回は元「かえる友の会」会長の大澤秀人氏にトップ面に連載していただいた「カエルうた暦」から、晩秋の現在に合わせて「「霜月から師走へ、冬眠へ」を掲載いたします。「カエルタイムズ」を発行するにあたり、「かえる友の会」の当時の会長の大澤さんにお会いし、本紙トップ面に蛙を詠んだ詩歌について、また、文化面にカエルの絵柄の切手について連載していただくお願いをしました。

[カエルうた暦🐸四] 霜月から師走へ、冬眠へ 大澤秀人 (「かえる友の会」会長2005年当時)

前田夕暮の詩に、寒い日だ。はりつけられた蛙のなま白の腹がまだぬれていて(水源地帯) がある。鵙(もず)の速贄となる蛙。しかし、鵙は速贄にした餌の在所(ありか)を忘れたまま放置してしまうことがあり、犠牲となった蛙の姿は痛々しい

藪先の鵙がわるさの蛙かな 一茶 こうした悪さも逃れて、生き残った蛙たちはどうしているのだろうか。

生残る蛙あはれや枯蓮  子規  枯葦の中にごそつく蛙哉  子規  次第に仲間が姿を消して行く中、われ一人生き延びたところで、すでにすることもなく独り言をつぶやくだけ。それは人の世も同じだ。この季節、山形県地方に伝わるこんな話がある。「十月に田にいる蛙はつかまえてもいい。この時期、本来は田の神のお供をして出雲に集合することになっているのにまだ田に残っているのは、肝心なつとめを果たしていない証拠だから」。

やがて、蛙たちは周囲の虫の声を聞きながら、これからの自分たちの辿る道を考えるようになる。草野心平の「秋の夜の会話」の登場である。                                                  さむいね/ああさむいね/虫がないてるね/もうすぐ土の中だね/土の中はいやだね/痩せたね/君もずゐぶん痩せたね/どこがこんなに切ないんだらうね/腹だらうかね/腹とったら死ぬだらうね/死にたくはないね/さむいね/ああ虫がないてるね  土の中にもぐった蛙のせつなさ。多くの蛙の詩歌の中でも、もっとも印象深い詩のひとつだ。

やがて、蛙たちは土の中へ。しかし、まだこの時期、地にへばりついている蟇もいる。冬の蟇川にはなてばおよぎけり 蛇笏  なんといういたずら。ただでさえ泳ぎの得意でない蟇は、もうろうとする意識の中でさぞや驚いたにちがいない。

が、その蟇も季節の推移に抗えない。蟇ねむり世はざわざわと人地獄 楸邨  やがて、師走から年初の人の世のざわめきも消えて、あたり一面銀世界。雪が多ければ多いほど、蛙たちは浅いところで冬眠する。・・・そして、春へ   の夢をつなぐ。 ◎雪しんしん夢は古池かけめぐる 詠み人知らず  

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2025年1月23日 (木)

ヘビとカエルが今に伝える遥か昔の物語/かえるモノ語りー自然と文化をつなぐカエル97

かえるモノ語りー自然と文化をつなぐカエル97

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ヘビとカエルが今に伝える遥か昔の物語

100年カエル館

高山ビッキ

 

 巳年の今年にちなんで、蛇と蛙について考えてみました。

 よく知られているのは、カエルにとってヘビは天敵、丸ごと吞み込まれることもあるプレデター(捕食者)です。

 けれども、カエルには回避したいはずのその関係からたくさんの文化的事物が生まれています。たとえば今でも絵本や童話で語り継がれている日本昔話。

 6万話にも及ぶ日本の昔話を収録した「日本昔話通観」(稲田浩二・小澤俊夫責任編集)には、「蛇と蛙」にまつわる話は51話収められています(藤沢浩憲著「日本蛙昔話30選」より)。なぜヘビがカエルを食べるようになったかの由来譚として神様から「蛇の餌(えさ)は蛙だ」と決められる話が多く、神様が決めない話では蛇と蛙は喧嘩をするようです。

 また、たくさんの類型をもつ日本の昔話には「異類婚姻譚」に括られる、人間と動物が結婚する話があり、その中に「蛇壻(むこ)入り」があります。蛙が蛇に呑まれそうになったときに、人間が通りかかり「自分の娘をやるから助けてやれ」と言って蛙を救ったことから、その娘は泣く泣く蛇と結婚することに。蛙は人間が蛇と望まぬ結婚をするきっかけをつくってしまったことから、蛇退治はできないまでも人間に知恵や貴重なものを授けることで恩返しをします。蛙の側からみれば「動物報恩譚」に類型される話になります。

 現代人からしてみれば、ありえない話ではありますが、記紀神話に遡れる説話であり、平安初期の仏教説話集『日本霊異記(りょういき)』にもそれに近い話が見られます。ただしそれは神話的世界観から仏教的世界観に語り直された内容だったとも考えられています。

 さらに時計の針を巻き戻せば、縄文土器にも「蛙と蛇」は表現されています。それは物語紋様とも呼ばれ、女性の手になるものかもしれないと考えられるそれらの土器は、何らかの物語とともに土が捏ねられ、焼き締められた伝承説話ではないかという見方もあります。

ヘビとカエルをめぐる物語が紀元前の昔から伝えられていると思うと、昔話がより壮大な叙事詩のように響いてきます。

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2024年11月23日 (土)

“その年の冬”が来ると思い出すカエルのこと/かえるモノ語りー自然と文化をつなぐカエル95

かえるモノ語りー自然と文化をつなぐカエル95

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<❞その年の冬❝が来ると思い出すカエルのこと>

100年カエル館

高山ビッキ 

 

 紅葉で山が賑わう頃になると、カエルの多くは冬眠場所を決めなければならないでしょう。変温動物のカエルは寒さで動きは鈍くなり、うっかりすると天敵の鳥に狙われます。

 「鵙の速贄(もずのはやにえ)」といった、カエルに親しみを抱く者には辛く思える光景もこの季節の風物です。

 これを短編小説の中に印象的に表現した昭和の作家に立原正秋(19261980)がいます。

 100年カエル館を運営する弊社は、広告やPR誌の編集の仕事を通して数多くの作家の方々と出会いました。その中で弊社が京都と長くかかわる道開きとなった存在が立原正秋、その小説やエッセイです。

 弊社は1980年代に週刊誌上で連載広告「立原文学の香気」を企画しました。

 作家はすでにこの世を去っていましたが、読売新聞社の記者で作家絶筆となった新聞小説『その年の冬』の担当を務められた故中田浩二氏が執筆に当たりました。

 その後中田さんと弊社は京都の老舗企業をはじめ、40年さまざま仕事で時間を共有しました。

 中田さんは日本橋生まれのチャキチャキの江戸っ子。その切れ味のいい物言いや文章が今も思い出されます。

 戦中戦後の昭和を生きた作家を死の直前まで支え見つめ続けた中田さんに、私たちは時に厳しく指導していただきました。

 定年後は文筆活動の傍ら家庭菜園で野菜作りに励まれていました。いただいた白菜は清らかに甘く美味しかった。

 中田さんの絶筆ともいえるエッセイがあります。そのタイトルは「蛙(かわず)蝉(せみ)の真実」。松尾芭蕉の句の「古池や~」の「蛙」と、「閑けさや~」の「蝉」。後者の「岩にしみ入る蝉の声」と一句詠んだ場所が山形県山寺の立石寺(りっしゃくじ)とされています。近くに大きな蟇岩(ひきいわ)があるので、私たちにとってはどちらもカエルの句、中田さんからの贈物だと思っています。

 生前、演劇研究家でカエルのコレクターとしても知られた故河竹登志夫さんとも親交があった中田さん。「あのカエルたちはどこに行ったのかな」とおっしゃっていたことがあります。

 「中田さん、100年カエル館に展示してありますよ」。

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2024年10月24日 (木)

大路・小路が歴史に連なる京都で出会う。/かえるモノ語りー自然と文化をつなぐカエル94

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<大路・小路が歴史に連なる京都で出会う。>

 

100年カエル館

高山ビッキ

 

 記録的な酷暑となった今年の9月。私たち100年カエル館は初旬の1週間ほどを京都に滞在しました。

 京都には仕事で毎年訪れるのですが、そんなに長く連泊したのは初めてのこと。

 昨今の観光客の増加で、ホテル料金は高騰しているので、どこに泊まるか悩むところでしたが、100年カエル館として開催するイベント「カエルアートマン×20展 京都編」の会場、松栄堂薫習館のある烏丸御池に歩いて通えるところに最適なホテルを見つけることができました。

 平安の都から続く、京都の大路・小路を毎日暮らすように歩いていると、京都のすべての道は歴史につながっていると感じる瞬間がしばしばありました。それは教科書で学ぶ系統立った歴史ではなく、個人的な記憶の中に収められている印象深い歴史の断片に、いとも簡単につながってしまう感覚でした。

 会津出身の私には、京都守護職の会津藩と幕末の京都が結びつき、降り立った駅に「壬生」の方向が示されていると、いるはずのない会津藩預かりの新撰組がまだそこに駐屯している錯覚を覚えます。

 毎朝、会場まで堀川通りを歩き二条城を目の前に右折するのですが、直進すれば幕末の重要な一幕に遭遇できる胸騒ぎがしました。

 「錦小路」の表示を目にすると、江戸中期にあったはずの絵師伊藤若冲の実家の青物問屋を覗きに行きたくなり、耳を澄ませば、絵巻「鳥獣戯画」に描かれたカエルのようにビンザサラを鳴らして平安時代の大道芸人たちもやって来る気配がして……。

 展示イベントには、カエルアートマンの生みの親、故柴田まさる氏夫人の和子さんも息子さんと一緒に愛知県から来て下さいました。夫人は、カエルアートマンに亡き柴田さんの存在が蘇るようで、何ごとか語り掛けられていました。

 写真は柴田さんの手に成る、コミック調のカエルが描かれた小石アート。

 京都という、さまざまな時空が交差する場所に届けられた石のカエルは、家族とやって来た柴田さん自身であることを、柴田さんのメッセージのように受け止めました。

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