ほっと・ねっと「かえるモノ語り」

メリー・クリスマスの心を伝えるカエルたちの物語

Img_1289_20211224184001

 朝起きて窓の外を見て、庭木に白く降り積もった雪に、「雪だ!」と叫ぶとき、心は子どもの頃に帰ります。

 世界が一晩で変わってしまったように見える不思議。そして、クリスマスがやってきます。

 その頃、世界各地の雪の降る地域ではカエルは冬眠していて活動はオフシーズンのはずなのに、絵本や童話ではカエルたちがクリスマスを楽しみにしています。

 たとえば、日本ではどちらも1970年代に翻訳が出版された米国の『がまくんとかえるくん』シリーズと、『ひきがえるとんだ大冒険』シリーズ。

 アーノルド・ローベル作の『がまくんとかえるくん』はシリーズ4冊のうち、『ふたりはいつも』に「クリスマス・イブ」のお話があり、ひきがえるのウォートンとモートン兄弟の活躍を描くシリーズには、「ウォートンのとんだクリスマス・イブ」があります。

 冬眠中とはいえ、童話作者に描かれるカエルたちの家の中は暖かく、おいしそうなごちそうの匂いに満ちていて、その日はクリスマス・ツリーやクリスマスプレゼントが用意されています。

 でも、ストーリーの中でそんな幸せな時間は簡単にはやって来ません。      

 予定より遅くなっている「かえるくん」を待っている「がまくん」は、心配でしかたなく「かえるくん」が遅れている理由にアレコレ妄想を膨らまし大げさなレスキュー体勢で外に出ます。  

 一方、ひきがえるのウォートンは、弟のモートンが得意の料理をつくって待っている家に帰りたくても、雪の中で道に迷い、ほっとけないモグラや横暴なクマとの遭遇で思いがけない困難を抱え、もう二度と家には戻れないかもしれないとさえ思います。

 それはもしかすると、私たち誰にも経験のある、クリスマス・イブに待ったり、待たせたりしたときの切ない思いに通じるかもしれません。

 日本でもすっかり歳時記になったといえるクリスマス・イブ。この日だからこそ言えること。子どもたちに人を思いやる気持ちを伝えたいとき、大切な人に感謝の思いを告げたいとき。そんな雪の中に落としてしまって見失いかけた言葉を素直に受け取れる、心のプレゼントになるカエルたちの物語です。

<関連サイト>

「100年カエル館」 http://kaeru-kan.com

「カエ~ル大学」http://kaeru-kan.com/kayale-u

「コトバデフリカエル」http://kaeru-kan.cocolog-nifty.com/kotobadefurikaeru

※現在、「コトバデフリカエル」では「カエル白書」Vol.3を配信中です。

http://kaeru-kan.cocolog-nifty.com/froggy_museum/

|

我らが「カエル愛」、受賞なるか!

Img_1299

まもなく発表される「新語・流行語大賞」にノミネートされた「カエル愛」。

 思い返せば20年ほど前、それまではなぜかあまり表立って「カエルが好き」と言えなかった人が、「カエラー」と称して(歌手の安室奈美恵さんのファンがアムラーと呼ばれていた頃です)、カミングアウトし始めました。

 その頃、私たちは自分たちが企画するイベントなどで、来場者の方々に「カエラー度チェック」にトライしてもらうことがありました。たとえば、

緑のカタマリを見ると「カエルだ!」と思わず駆け寄ってしまう。

気づくと部屋の中にカエルグッズが増えていた。

旅行はカエル・スポットと決めている。

水族館にはカエルを見に行く。

ファッションにカエルの小物やアクセサリーは欠かせない。

など、カエル好きにありがちな性格や行動、関心事の項目を50以上挙げて、レ点を入れていただきました。

 2012年に私は『かえるる』(山と溪谷社)という本を出版したのですが、そのサブタイトルは「カエルLOVE111」。導入には「本書は、徹頭徹尾『かえる愛』にもとづいた本」と書きました。

 そして、2021年のオリンピックイヤーの今年、「カエル愛」が注目される功労者となったのは、ボクシングのゴールドメダリスト、入江聖奈選手でした。その発言「カエル関係の職種に就きたい」「カエルのためにも金メダルが取れてよかった」には、カエルのみならず、多くのカエル好きも我が意を得たのではないでしょうか。

Photo_20211128101401

 今回、他に候補になった新語に「Z世代(1997年頃から2012年頃までに生まれた世代)」がありますが、ゲームも大好きという、現在、21歳の大学生、入江選手もZ世代。 

この世代はデジタルネイティブで、自分の世界を持ち、さらに国境を越えた人とのつながりもつくれると期待されています。

 その代表のような入江選手が、ピョーンとリープフロッグ(蛙飛び)して世界を相手に活躍したことで、どちらかと言うと、マニア的な趣味の世界から生まれた「カエル愛」を飛躍的に進化させた功績はとても大きいと思います。

Img_1295

<関連サイト>

「100年カエル館」 http://kaeru-kan.com

「カエ~ル大学」http://kaeru-kan.com/kayale-u

「コトバデフリカエル」http://kaeru-kan.cocolog-nifty.com/kotobadefurikaeru

※現在、「コトバデフリカエル」では「カエル白書」Vol.3を配信中です。

http://kaeru-kan.cocolog-nifty.com/froggy_museum/

|

ほっとねっと第301号 かえるモノ語り㊵ あなたを見守るカエルアートマンが誕生しました。

20dm_20200427154701

 ウルトラマンに仮面ライダー。私はそのテレビでの初登場をリアルタイムに見た世代なので、今も「~マン」「へんしん」といったワードに親しみを感じます。

 そして今年、100年カエル館から「カエルアートマン」が生れました。

実は、そのお披露目のイベントを「カエルアートマン20 日本のカエルがHENSHIN」と題してGWに東京で開催する予定にしていたのですが、今回の新型コロナウイルスの影響により開催を控えることにしました。

 私たちが名づけた「カエルアートマン」とは、昨年、福島県立博物館で紹介した愛知県出身のカエル好きの画家故柴田まさるさんが、スケッチブックに遺した、キャラクター性豊かな水彩画のカエルたちです。

 今世紀に入って登場したマンガ・アニメのカエルキャラクターといえば、『ケロロ軍曹』がいますが、ケロロ軍曹率いる小隊のメンバーは、いずれも外国産のカエルを基にキャラクター化されています。一方、カエルアートマンの場合、モデルは日本産のカエルたちです。

 柴田さんのスケッチに姿を現したカエルたちは、1点1点、カエルの種名が手書きされていました。案内のDMに掲載したカエルアートマンは、左からアズマヒキガエル、二ホンアマガエル、ヤマアカガエル、トウキョウダルマガエルです。その他カエルアートマンは20号までいますので、日本列島に生息するカエルの種類の約半分がカエルアートマンとして誕生しています。

 カエルの図鑑などで同種名のカエルの写真と見比べてみると、柴田さんが野外観察や図鑑から目で捉えたカエルにどのようなパーソナリティを与えているか、アート化するとはどういうことか感覚的に伝わるような気がしました。人とカエルをアートでつなぐヒーロー。それがカエルアートマンの名前の由来です。

 そして、カエルアートマンたちはカエルらしくとても目力があります。

 ウルトラマンや仮面ライダーのように敵を倒して救ってくれることはありませんが、心が弱くなりかけたとき、その絵を見ているだけで「だいじょうぶ、そばで見張っているから」と守ってくれるヒーロー、それがカエルアートマンです。

(福島県喜多方市の月刊のフリーペーパー「ほっと・ねっと」(おもはん社発行)に連載中の「かえるモノ語り~自然と文化をつなぐカエル~」より)

|