カエルの本の図書館

寒い季節はカエルの本の図書館でお過ごし下さい

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立冬も過ぎ、私たちでさえ寒さが身にしみる季節になりましたが、カエルのことを考えるともっとツライような寂しいような気持ちになる。カエ~ル大学の図書館では今せっせと本を整理しては、「絵本」「生物」「カルチャー」「小説」「その他」と分けた書棚に1冊1冊入れているところです。「絵本」は10冊入りました。他のジャンルももっと楽しんでいただけるように書評を書いていきますので、ゆっくりお付き合いください。

100年カエル館・カエ~ル大学はこちらから http://kaeru-kan.com/kayale-u

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<関連サイト>

「コトバデフリカエル」http://kaeru-kan.cocolog-nifty.com/kotobadefurikaeru

「キモノ・二・キガエル」http://kaeru-kan.cocolog-nifty.com/kimonokigaeru

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カエルの本の図書館「生物」コーナーに本が入りました

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本日、生物のコーナーに『カエルが消える』(キャサリン・フィリップス著)が入りました。  

100年カエル館/カエ~ル大学へはこちらから http://kaeru-kan.com/kayale-u

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カエ~ル大学「カエルの本の図書館」からのお知らせ

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  本日、カエ~ル大学の「カエルの本の図書館」絵本のコーナーに「青がえるの騎手」という本が追加されました。

100年カエル館/カエ~ル大学はこちらから http://kaer-kan.com/kayale-u

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カエ~ル大学・カエルの本の図書館からのお知らせです

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現在、カエ~ル大学では「カエルの本の図書館」で100年カエル館所蔵の図書資料を少しずつご覧いただいております。画像などまだ不完全な点が多々ありますが、鋭意改善してまいりますのでしばらくの間ご不便をおかけいたします。

100年カエル館/カエ~ル大学はこちらから http://kaeru-kan.com/Kayale-u

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<関連サイト>

「コトバデフリカエル」http://kaeru-kan.cocolog-nifty.com/kotobadefurikaeru ※エッセイで時代をふりかえるサイトです。

「キモノ・二・キガエル」http://kaeru-kan.cocolog-nifty.com/kimonokigaeru  ※ゆかたやキモノ着用で優待割引のある施設をご紹介するサイトです。

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真剣に遊ぶパパたちが贈る『アマガエルのヒミツ』

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『アマガエルのヒミツ』

文◎秋山幸也 写真◎松橋利光

発行:山と渓谷社

 好きか嫌いかに大きく分かれると言われる、蛙という生き物に対する人間の反応。でも嫌いな人でも「あの小さな緑色の蛙なら大丈夫」と、好感度の平均値が高いのがアマガエルだ。この本はそんなアマガエルの魅力について、蛙が好きで蛙と関わることが仕事や生き方の一部になっている二人、秋山幸也氏の文と、松橋利光氏の写真で構成されている。

 「蛙は身近な生き物」といいながらも、私たちは蛙について意外に知らないことが多い。蛙は天敵から身を守るために、体の色を周囲の色に合わせて変える特徴があることは知られているが、実はすべての種類の蛙が色を変えるわけではない。アマガエルは期待通り体の色を変えてくれるが、だからといって人間の手でその個体を移動して、たとえば葉っぱから土の上に持っていっても簡単に色を変えてくれるわけではないらしい。

 そのようにこの本では、蛙好きならではの思いのこもった観察と、しっかりと研究された自然科学の知識に基づいて、アマガエルの生態や生活行動が親切にわかりやすく紹介されている。一度読めば誰でもアマガエルをさらに身近に感じることは間違いない。著者は相模原市立博物館の学芸員で、そこでは植物を担当しているが、蛙は子どもの頃から好きだったという。本の中で、中学生の著者が試験勉強中に自分の部屋の窓にたまたま張り付いたアマガエルをじっくり観察している様子が描かれている。ユスリカやガをパクリパクリと食欲旺盛に食べるアマガエルと、それを飽きずに見ている著者。秋山さんにとってアマガエルはほんとうに友だちのような存在だったのだろう。

 写真家の松橋さんの作品は、特に白バックで撮影する蛙の愛らしさにとても人気がある。最近はテレビやラジオにも登場する松橋さんは、どちらというと大柄な方だが、野外で蛙などを撮影するときは「姿(存在感)を消す」のだそうだ。それは他の人がマネをしようにもできないワザで、やはり子どもの頃から蛙とふれあってきた写真家ならではの蛙との約束のようなものがあるのだろう。この本では松橋さんのカメラで生き生きとしたまま捕らえられたアマガエルの写真が堪能できる。

 秋山さんも松橋さんもまだ小中学生のお子さんをもつ「お父さん」である。昔、父親といえば働く後ろ姿を子どもに見せるのが役割のひとつだったが、いまは子どもの頃の遊びを大人になってもやり続けられるかどうかも父親力の大きなポイントになっているようだ。

 

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岩手・盛岡から生まれた『カエルの学校』

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『カエルの学校』

作者◎森 壮已池(もりそういち)

発行:未知谷

 岩手県盛岡生まれの森壮已池(本名・佐一)(1907-1999)は、岩手日報社で学芸欄を担当し、退社した後文筆活動に専念し、昭和19年に『蛾と笹舟』『山畠』の2作品で直木賞を受賞した作家である。

 そして、この『カエルの学校』は、1952年に「岩手の警察」という官庁の雑誌に発表された作品である。これが創作される経緯についてはわからないが、掲載された雑誌の編集方針からだろう、舞台は「カエルの世界」であり、主に「カエルの学校」だが、語られるのは自殺や殺人、男女の色恋沙汰、教育問題や政治の退廃など妙に人間くさい。

 これを単なる「カエルの擬人化」と捉えると、「人間社会の風刺」になってしまいちょっと寒々としてしまうのだが、初めにカエルの世界ありきで、そこから人間の世界を見るととても愉快になってくる。

 人間界で有名な俳句「古池や蛙飛び込む水の音」についても、カエル界の文学者たちは人間の文学者とはちがう、さまざまな見解を唱えている。

 「カエルは古池に飛び込む途中で蚊を何匹飲み込めるかという試験を試みていた」説。「失恋で世をはかなんでいたカエルがちょうど古池を見おろしたら大きな鯉がボカンと口を開けていたので飲み込まれてやろうと飛び込んだ」という自殺説。また、「人蛙(じんあ)一体説」もある。霊感のあるカエルが芭蕉の才能を見抜き、歴史に残る句をつくらせたいとその好機を伺い、芭蕉が句を詠もうとするまさにその瞬間にみごとなダイビングを行ったという説。

 いろいろあるが、すべては取るに足らぬ俗論であり、これは文学的な問題ではなく、カエル族の生活に結びついていて、そのカエルは蚊を食べるために跳躍したのであって音を立てたのは第二次的な事件にすぎないという定説に落ち着いてきたという。もしその句がつくられたとき、本当に飛び込んだ蛙がいたとしたら、人間が想像しても堂々巡りになるだけだからその議論を早くやめにしてほしいと、カエル界の方々は思っているようなのである。

 恋愛に関してもカエルは精神的に高度なレベルに達しているようだ。「カエルの世界の最高の哲学者トローベラールによりますと、人類もやがて何億年かたって身体のあらゆる部分から“毛”がなくなる時代が来ると、カエルのようにただじっと目を見合って精神的な恋愛をするようになるだろう」という深遠な説をもっている。

 カエル界の一流新聞は『カエル夕陽新聞』(カエル界は夕陽以降の夜が活動時間だからこの名前になっているらしい)。その新聞社が提携先のテレビ局と行った座談会のことを描いたシーンがある。テーブルにはカエル界最高の料理人が作ったごちそうが並ぶ。「ボウフラのフライ。糸ミミズとツユ草の花の酢の物、トンボのしっぽのソーセージ。オケラの脳みその塩から。」これをおいしそうと思ったあなたは相当カエラー度が高いといえるだろう。

 しかし、カエルがひとつだけ、人間にかなわないと思っていることがある。それは日本酒づくり。カエル界にもお酒はあるがそれは花蜜酒で、アルコール分はあるかなきかの微弱なものなのでとても酩酊できるような代物ではないらしい。「彼らの住み家も同然の水田に稔る米からその酒が造られるということが解っているのに、彼らが酒を造ることができないことが彼等の唯一の人間に対する劣等感」だという。その理由も明快。おいしい日本酒を造るには冬を越す必要があるのに、まさにその時期、カエルは土の中深く移動して冬眠しなければならないからだ。

 東北は米どころ、酒どころ、そしてカエルどころである。岩手・盛岡ではカエルのことをビッキ、カエルの卵をゲェラゴというようだ。そんな自然に恵まれた盛岡を拠点に作家活動をした森壮已池。人間はときに、カエルの世界の自然法に照らし合わせてものごとを見てみることも大切かもしれない、と思わせてくれる作品である。

<宮沢賢治と森壮已池>

 岩手県の文学者といえば花巻出身の宮沢賢治(1899-1976)を思い浮かべる人が多いだろう。宮沢賢治と森壮已池。二人には親交があった。森の才能は若くして聞こえ、旧制中学時代の大正14年に宮沢賢治の訪問を受けている。あの天才をして「あなたを尊敬しています」と言わしめた人。二人の交友は賢治が昭和8年に亡くなるまで続き、その後森は賢治作品と賢治に関する文章を発表し続け、賢治全集の編集にも関わる。

 この作品『カエルの学校』は、2002年から2003年にかけて「もりおか啄木・賢治青春館」で「森 壮已池展」が開催されたのを機に再び注目されることとなった。 解説をみやこうせい、挿絵版画をたなかよしかずが担当している。

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かえるえんみどりぐみで時計のべんきょう『いま なんじ』

Imananji

かえるえんみどりぐみ①とけいのえほん『いま なんじ』

作◎山下明生 絵◎村上 勉

発行:1979年初版発行 あかね書房

 子どもの頃、学校で時計の見方を教わったときは、誰でもちょっと大人になったような気がしたのではないだろうか。それは、この絵本のなかの「けろくん」たち、「かえるえんみどりぐみ」の皆も同じようだ。

 児童文学者の山下明生(やましたはるお)と画家村上勉(むらかみつとむ)による、表紙を見ただけでも楽しさが伝わるこの絵本は、3歳から6歳の子どもたちがカエルたちといっしょに時計の読み方を学ぶための絵本である。

 からだが時計になっている「とけいおじさん」が、短針と長針を回しながら、時刻の読み方はもちろん、同じ7時でも朝と夜があることなどを教えていく。そしてけろくんたちは、ごはんを食べたり、お昼ねをしたり、池で遊んだりするときに、時計の針はいつも動いていることを知る。

 ところで、けろくんには「ころたん」という小さな弟がいて、このお話の最初のほうで、けろくんといっしょに学校に「いきたーい」と叫んでいた。でも、「まだ小さいからだめ」とお母さんから止められたころたん。ところが、晩ごはんの後、テレビを見ていたけろくんが、「あーあ、いま なんじかな?」というと、「いま 8じ」と答えたのは、ころたん。

 ころたんはどうして時計の読み方がわかったのか、もう一度この絵本のページをめくり直すとわかるしかけ。

 村上勉が描いたカエルの世界は、トーストとボイルドエッグの朝食のシーンから、学校生活、ハンモックでのお昼ね、夕食後家族で寝そべって本を読むシーンまで、子どものみならずカエラーの心もとらえる可愛らしさにあふれている。

<ファンタジーとネイチャー>

カエルの種類 : 生活の場が樹木のまわりなので、英語でTree frogのアマガエルもしくはアオガエル(?)

カエルの生活行動 : 蛙は夜行性で、寒くなると冬眠し、啓蟄の頃になると這い出してくる

              ものが多いでの、時間感覚にすぐれているようなイメージがある。

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蛙の気持ちで読みたい『ごびらつふの独白』

Gobiratsuhu

『ごびらつふの独白』

詩◎草野心平 絵◎いちかわなつこ 編◎斎藤孝

発行:ほるぷ出版

 福島県いわき市出身の詩人草野心平(1903-1988)は、蛙の詩人と呼ばれるほど蛙について実験的で印象的な詩を遺している。

 そのひとつに「ごびらつふの独白」がある。ごびらつふとは、独白できるほど、蛙のなかでも意識のひじょうに高い蛙らしい。その「独白」の出だしはこうだ。

 るてえる びる もれとりり がいく

 ぐう であとびん むはありんく るてえる。

 いくらカエル好きでも、この実験的難解さに、“本当にすぐれたカエル”になるには、まだまだ修業が必要だと思えてくる。

 ただし、ありがたいことにこの詩には、心平自身による日本語訳がついている。出だしの独白の意味は、「幸福といふものはたわいなくつていいものだ。おれはいま土のなかの靄(もや)のやうな幸福につつまれてゐる」となる。

 そして、こんなくだりも。

 「なみかんたい りんり もろうふ ける げんけ しらすてえる。(みんなの孤独が通じあふたしかな存在をほのぼの意識し。) けるぱ うりりる うりりる びる るてえる。(うつらうつらの日をすごすことは幸福である。」 

 「ぐう しありる う ぐらびら とれも でる ぐりせりや ろとうる ける(地上の動物のなかで最も永い歴史をわれわれがもつてゐるといふことは平凡ではあるが偉大である。)」ともつぶやく。

 そして、大切なのは、「りりん てる。(素直なこと)」「ぼろびいろ てる。(夢を見ること)」

この絵本は、そんな、草野心平の「ごびらつふの独白」に絵本作家のいちかわなつこが絵をつけている。日本語の本を声を出して読むことを推奨している斎藤孝の編による一冊。

 確かにこの本は、一度日本語訳なしに蛙の言葉として声に出して読んでみるといい。自分なりの発見があり、カエルの気持ちに少しでも近づけるような気がする。

 そうして心平が感じとった意味を改めて読んでみると、いま私たちが地球の先輩である蛙から、何を学ぶべきかが見えてくるだろう。

(ファンタジーとネイチャー)

カエルの種類:(絵的には)トノサマガエル

カエルの歴史:人類が登場する前のジュラ紀頃から地上に現れている

※いわき市立草野心平記念館は今回の大震災により臨時休館しています。いわき市の一日も早い復興を心からお祈り申し上げます。

 

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『かえるのしゃちょうさん』にグチをこぼしたい人は多いかも

Shachousan

『かえるのしゃちょうさん』

作◎舟崎靖子・真理 絵◎黒井 健

発行:ポプラ社 1987年12月 第1刷

 「かえるのしゃちょうさん」は、「かぼちゃ畑三ちょうめ」に住んでいる。この絵本の表紙を開くと最初に「かぼちゃ畑三ちょうめ」の絵地図が広がる。まさにかぼちゃ色(緑と黄色のまだら)の下地に線描きされた地図には、「えき」を中心に「かえるさん」や「ねずみさん」や「もぐらさん」それぞれの家のかぼちゃ畑が広がり、駅のそばには「かぼちゃかいかん」、東のはずれには「あなぐまさんのホテル」、南には「うさぎさんのアパート」も見える。海へ流れ込むゴロスケホー川は、「がちょうのくちばし」という所でゴロスケ川とホー川に分かれる。

 イギリスの童話「たのしい川べ」にもヒキガエル氏の館をはじめ、その仲間の動物たちの家が配置された地図が見られるが、こうした絵地図はいくつになってもジッと見入ってしまう魅力がある。たぶん、本当は人間もこのくらい小さい共同体で、いろんな人たちと助け合って生きてみたいという願望があるのではないだろうか。

 もちろん、その中でのつきあいはわずらわしいことも多い。ちょっと人がよかったり、気が弱かったりすると、何から何まで頼まれて断れないこともある。その典型がこの「かえるのしゃちょうさん」。あなぐまさんから「あなぐまさん」になってホテルの留守番をしていてほしいと頼まれて、うっかり引き受けたものだから、さあタイヘン。

 最後は自分の名刺に「なんでもします、ただしあなぐまさんはのぞく」と書き加えるほど、身をすり減らすことの連続。人間の社会にもこんな人っているような・・・。「それって私かも」と思った人には特におすすめの一冊。かぼちゃ畑三ちょうめのかえるさんの家にお茶でも飲みにいくといいかもしれません。

 どんな地域コミュニティにもいろんな“人”がいて、その“人間関係”は決して楽しいことばかりじゃない。でも、皆でいっしょに目にする風景が明るくやさしいものであれば、それだけで幸せなのだろう、と思わせる絵本である。

(ファンタジーとネイチャー)

カエルの種類:たぶんアマガエル、水かきがある

カエルの生活行動:繁殖のとき以外は群れない、生態系ピラミッドの中間に位置し、さまざまな動物のとの関係にさらされて生存している

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カエル好きなら一度は入居したい『かえるのアパート』

Apart

間もなく開校するWebカエ~ル大学には「カエルの本の図書館」があります。これは100年カエル館に収蔵された、「カエル」が中心テーマになっている本を1冊ずつ解説していくコンテンツになります。ジャンルも図鑑、絵本、生物学、文化史、漫画、キャラクター本等々、幅広く収集しています。なかでも多いのが絵本。カエルは擬人化しやすいからか、さまざまな絵本の中に“生息”しています。いずれ「カエルの本の図書館」に収蔵される絵本を同ブログで少しずつご紹介しましょう。

『カエルのアパート』 

文・佐藤さとる 絵・林 静一

発行:講談社 昭和57年9月28日発行

 三輪車に乗った男の子、あっちゃんの前にぴょんと飛び出してきた一匹のカエル。そのカエルは言葉を話す。カエルはあっちゃんに、赤と白のしぼりの椿(つばき)の根本にあるアパートを探していると言う。季節はそろそろ冬に向かう頃。そう、カエルは冬眠するために、そのアパートに“入居”したかったのだ。

 コロボックルシリーズで知られる佐藤さとるが書くそんな可愛らしいストーリーに、CMの「小梅ちゃん」の絵も人気の林静一が、奇妙な雰囲気のカエルを描く。断面で表現された、椿の木の下にある「かえるのアパート」には、カエル好きなら思わず“入居”したくなるだろう。

 枕と旅行かばんをもったカエルは、人間の言葉を喋り、擬人化されている。しかし、その物語のモチーフは、野外の蛙が毎年繰り返す生活場所の移動、冬眠する場所が人間の手によって取り払われてしまうと困る蛙の生活事情がたくみに織り込まれている。そして、椿の木(の下のアパート)に象徴される、失われた自然も、その椿の“子ども”が“第二つばき荘”となり寒い季節からカエルを守ってくれるように、再生が可能であることを伝えている。

 あっちゃんは、第二つばき荘のそばに冬眠明けのカエルのための小さな池がほしいと思う。そうすれば、また会えるから。自然と人間の、「そうあればいいのにね」と思える関係を、日常シーンのなかにさり気なく描いた素敵なファンタジーである。

(ファンタジーとネイチャー)

カエルの種類:たぶんアマガエル

カエルの生活行動:冬眠、移動、繁殖には水辺が必要

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