自然・生物

ベルギーにおけるspadefoot toad (スキアシガエル)の状況

両生類に関する世界的な保全活動を継続して行っているAmphibian-Arkのサイトhttp://www.amphibianark.org/ の2021年発行のNewsletter54より、ニンニクガエルについての記事を紹介いたします。

ベルギーにおけるspadefoot toad (スキアシガエル)の状況

Loïc van Doorn, Jeroen Speybroeck, Johan Auwerx and Bruno Picavet, Research Institute for Nature and Forest, Belgium; and Lily Gora, Agency for Nature and Forest, Belgium

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ニンニクガエルのメス成体(撮影Loïc van Doorn)

旧世界(ユーラシア大陸)のSpadefoot toad(スキアシガエル類)は、Pelobatidae科(スキアシガエル科)に属する古い科のカエルで、ユーラシア大陸の西部地域に広く分布するほか、ユーラシアの東部近辺や極端な例ではアフリカの北西部にまで分布しているカエルです。現存する唯一の属であるPelobates属(ニンニクガエル属)には6種がいて、いずれの種も角質化して硬い隆起がある足を使って砂地を後方に掘り進んで潜り、生活環のほとんどを地中で生活しています。 

The Common Spadefoot Toadニンニクガエル(Pelobates fuscus)はヨーロッパ大陸に広く分布しています。夜行性で、好みの天候になったときに地上に姿を現します。地中に戻る明け方まで暗闇の中で広範囲にわたり無脊椎動物を食べ回ります。繁殖は春に行われ、繁殖地の水の中に入って水面の下でメスを呼びます。卵は水辺の陸地に産み付け産卵数は数千個、幼生は15㎝以上の大きさになり、変態するまで多様な餌を食べます。多くの両生類と同様に、変態のタイミングは状況で変わります。ニンニクガエルの幼生は通常夏の終わりにその生涯を陸域から始め、数か月かけてかなり大きな体長のオタマジャクシになります。

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ニンニクガエルの大きなオタマジャクシ(撮影Loïc van Doorn)

歴史的にも、この種は砂地の土壌に隣接した広大な水辺、季節によっては洪水に見舞われる川辺に生息していることが知られています。そのような場所は現在でも両生類の生息に適していて、ニンニクガエルは最もよく見られる両生類と考えられます。けれども、このような生息環境は西ヨーロッパでは少なくなり、河川は運河化し、湿原は水を排出し、周囲の生息環境がさまざまな構造的要因によって失われて来ています。結果として、ニンニクガエルは農地、特に小規模でさまざまな穀類を生産している農地の環境に生息するようになりました。そうした、人の手が加わった環境で大きさも深さも十分にある畜牛用の池で繁殖します。しかし、ここ10年ほどメタ個体群(局所的集団)を形成していた本種も農業の変化などによって生息場所が失われ、その数は減少し往時の生息数を留めてはいません。

したがって、本種は実質上、分布域の西側から減少していることになります。スイスとルクセンブルクでは地域によっては消滅、西ヨーロッパや中央ヨーロッパでは7ヶ国以上で危機に瀕しているとされています。ベルギーではここ数十年の間にいくつもの個体群が消滅し、離れた2つの地域に小さな個体群が残っているに過ぎません。生息地の破壊がまた起こり、状況が悪化したり、繁殖地にパンプキンシード(Lepomis gibbosus ブルーギルに似た北米産の外来魚)やイースタンマッドミノウ(Umbra pygmaea 北米産のコイ科の小型魚)やブラウンブルヘッド(Ameiurus nebulosus 北米産のナマズ目の魚)やトップマウスガジェオン(Pseudorasbora parva アジア産のモツゴ)などの生物が増えればベルギーにおける本種の幼生は数を減らし、個体群の減少はさらに悪化することになるでしょう。

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数千個の卵をもつニンニクガエルのひも状の卵(撮影Jeroen Speybroeck)

このような流れを変えるために、ANBAgency for Nature and Forest,Belgium/ベルギーの自然保全部門)は本種の保護プログラムを策定し、INBOInternational Network of Basin Organizations ベルギーの自然保護機関)にニンニクガエルの再導入の取り組みを要請しました。まず2つの個体群のひも状の卵を採取します。それらを幼生になるまで育て、幼体に変態させ、その後、生き残った個体群を元々分布していた生息地に再導入します。その再導入の前にすべきこととして、ニンニクガエルの個体群を最初の導入に導くための生息地の問題(外来種の除去や環境の整備など)を解決する必要があります。

ひも状の卵はINBOの域外に設置された特別な施設で飼育されます。そのようにして病気に罹患していない状態でできるだけ多くの個体を成長させます。2020年には11,465匹の幼生と190匹の幼体が二つの新生息地と二つの残存していた生息地に放流されました。2021年は例年の春の寒く乾燥した気候のためか採集できる卵の数が少なく、再導入の努力を続けるためには追加採集する必要がありそうです。現在、2つの解決方法が試されています。ニンニクガエルの飼育下の繁殖のために野生の育種素材を確立すること。そして、次に隣国などの健康な個体群や育種素材から質量ともに素材に成り得る紐状の卵や幼生を優先的に集めることです。どちらも遺伝子的多様性を高めるのはもちろん、野外でうまく繁殖しない時や施設での繁殖がうまくいかない時の保障にもなります。

その狙いは、ニンニクガエルの幼生や幼体を放流することにより、少なくてもこの4年間の保全期間に、自然個体群の補強を図り、個体群の構造をしっかりさせて、持続が保証された生息群を再形成することです。そのために使用可能な幼生の育種素材の蓄積に依存しながら、ニンニクガエルを他の地域に広く導入する前に、あらかじめ決めておいた一部の小個体群の中に導入します。この理論的根拠としてオランダでの成功があり、ここではニンニクガエルの鳴き声が再び国中で聞かれるようになりました。ベルギーもそのようにこの象徴的な種にとって安全な生息場所になることを望んでいます。

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水の循環システムを備えるベルギー自然林調査研究所の繁殖設備の一部(撮影Johan Auwerx)

(翻訳高山ビッキ 監修桑原一司)

<関連サイト>

「100年カエル館」 http://kaeru-kan.com

「カエ~ル大学」http://kaeru-kan.com/kayale-u

「コトバデフリカエル」http://kaeru-kan.cocolog-nifty.com/kotobadefurikaeru

※現在、「コトバデフリカエル」では「カエル白書」Vol.3を配信中です。

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2021年Amphibian-Ark両生類保全活動助成者の紹介(AArk Newsletter54より)

100年カエル館のHPでもリンクを貼らせていただいているAmphibian-Arkは両生類に関する世界的な保全活動を継続して行っています。サイトhttps://www.amphibianark.org/ では季刊でNewsletter.が発行され、AArkや世界各地でカエルを含む両生類の保全活動に取り組んでいる人々の活動が紹介されています。Blogカエルタイムズではその中からAArkの記事掲載の許可をいただき紹介いたしております。今回は2021年に発行されたAArk Newsletter.よりケビン・ジョンソン博士による記事を紹介いたします。

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2021AArk両生類保全活動助成者の紹介    

AArk Newsletter 548~9

ケビン・ジョンソン、Kevin Johnson, Amphibian Ark

両生類の箱舟(AArk)の両生類保全活動助成プログラム(www.amphibianark.org/conservation-grants/)では、現在、野外で生き残れない両生類種のために、生息地での研究活動との適切な連携のもとに域外保全活動(生息地から離れた場所や施設での救出・増殖や保全教育などの保全活動)をする保全プロジェクトの立ち上げをサポートしています。助成は、域外(生息地外)への救出や域外での研究の必要があると判断された種、もしくは国際的な保全評価リストに掲載されている種Conservation Needs Assessment (www.conservationneeds.org)やそれに類する国の評価からの推薦を受けた種を優先して与えられます。2009年よりAArkでは22ヶ国43の団体に総額203,970USドルを助成しました。

今年は、イランとペルーで計画されている新しいプログラムに助成を決めました。どちらも域外での繁殖保全に注力しています。

ペルシアヤマサンショウウオ(Paradactylodon persicus gorganensis)の域外保全戦略の確立

Establishing an ex situ conservation strategy for Paradactylodon persicus gorganensis in Iran
Dr. Seyyed Saeed Hosseinian Yousefkhani; Institute of Biological studies, School of Biology, Damghan University,
Damghan, Iran

絶滅危惧種と見なされているペルシアヤマサンショウウオ(Paradactylodon persicus gorganensis)は、イランの渓谷に棲む固有種で、イラン北部のゴレスタン州のヒルカニアンフォレストで見られます。とても狭い分布域に棲息しています。この亜種は、以前は同じ種と見られていましたが、2つの分類学的調査((Stock et al., 2019; Ahmadzadeh et al., 2020)により亜種(subspecies)と判明しました。これまで観光による生息地破壊がこの種にとって最も大きな脅威でしたが、これからはこの種の個体群とBd(ツボカビ)病原体の関わりを調査することも重視されるようになるでしょう。地域の収入源である観光は多くの環境問題を引き起こします。旅行者は環境をきれいにすることをせず、訪問期間中のゴミをそのままにしていきます。そして森の中の水場で水泳をする旅行者は、さまざまな真菌(ツボカビなど)の原因をこの地にもたらし、それはサンショウウオだけでなく他の両生類にとっても危険です。

Shirabad-cave-13840424-30絶滅危惧種とされているペルシアヤマサンショウウオ(Paradactylodon persicus gorganensis) 撮影Dr. Haji Gholi Kami.

このプロジェクトは、ペルシアヤマサンショウウオの個体群を2つの方法で緊急救済するもので、一つはヒルカニアンフォレスト内の自然管理池での飼育育成と、もう一つはダンファン大学の生物学研究所での実験室内の水槽での飼育下繁殖を行います。

1年目の目標は以下の通りです。

  • ヒルカニアン地域内に、サンショウウオを生存させるための最適な池(自然管理池)を決定する。
  • ヒルカニアンフォレストの中で新しく設定した生息地に繁殖用の個体群を移動させる。
  • 自然に近い条件で管理された池(自然管理池と大学の水槽)での域外繁殖プログラムを開始する。
  • 地域の人々の理解や教育のために印刷物や動画を作成し域内保全プログラムを進める。 

1年後にこのプロジェクトの結果が明らかになります。IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストが更新され、その新しい池は分布地図に加えられるでしょう。この保全プログラムについてのビデオやパンフレットはこの問題への公の関心を高める役割を果たすでしょう。

このプロジェクトは3年間行われ、私たちはその間観察を続けます。プロジェクトの完了後すべての池と放された生きものの観察は続けられ、池の周辺がさまざまな脅威から守られることでこのプロジェクトは成功したと評価されるでしょう。

Img_0668-10 旅行者が水泳をする森の中の水場はこの地にさまざまな真菌をもたらしている。撮影 Seyyed Saeed Hosseinian Yousefkhani

フニン両生類保護センター

The Junin Amphibian Conservation Center
Roberto Elias, NGO Grupo RANA, Peru

Lake Junin Frogレイクフニンガエル(Telmatobius macrostomus)はペルーの固有種です。IUCNと国の登録によるとこの種は絶滅に瀕していて、この10年でその個体群は劇的に減って来ていますが(個人的な調査によれば1950年から95%も減っている)、その理由は違法な捕獲や外来種のニジマス(Oncorhynchus mykiss)の存在、生息地の減少、そして繁殖のためのテクニカルセンターがないことです。そこで域外保全の観点から個体群を安全な自然環境に移動させ、その生息数を増やす必要があると考えられています。私たちはフニン国立保護区にあるニナカカ地区に必要な基盤(脱出防止溝、廃棄物管理施設、繁殖池、実験のための場所)がある繁殖調査センターをつくることを提案します。すでにこのプロジェクトの実行を可能にする場所の住人であるジーザス・エスピノーザの同意を取っています。

Telmatobius-macrostomus-x-oscar-damian-2 レイクフニンガエル(Telmatobius macrostomus)はペルーの固有種。域外保全を図ることは安全な自然環境でその個体群を再生させ、個体群を増やすために必要である。(撮影Oscar Damian)

その初期個体数は自然環境から採集した12匹のオタマジャクシと6匹の成体で、それはペルー政府によって違法飼育場や狩猟行為から取り上げられた個体群です。私たちはこの比較的少ない数の個体を対象にして、不必要に現状の個体数にダメージを与えることなく、それらを育てる方法や繁殖に導く方法を知るために活動します。この保護センターの目的は、これらの初期のペアが繁殖に成功することにより個体数を増やし、かつ健全な遺伝的変異を確保することです。

すべての個体が検疫や完璧なツボカビ症の検査を受けなければならないでしょう。この新設されるセンターは、米国のデンバー動物園とNGOグループRANA(Rana属のカエルを守るNGO)の指導のもとに活動している地域の市民科学プロジェクト「チンチャイコッチャガエル保護の会」に生息地の特性を研究するための機会や飼育に必要な餌の生産方法や住民の保全教育のための資料などを提供するでしょう。収容される個体は必要とする水化学の理論値に合う自然の水場で飼育され、できれば50%以上のオタマジャクシや没収した個体が通常の生育ができることを目指しています。この繁殖プログラムを継続することで、飼育されている半数の個体がゴスナーによる成長段階36に達したときに、市民の観察プログラムが実施される地域の観察地や自然破壊の脅威のない再生可能な場所で、かつ、国の保護地でもあるような場所に放されます。また、一部のカエルはこのプロジェクトを着実に継続させるために飼育施設内に残されます。この域外保全施設は地域コミュニティ、デンバー動物園、フニン国立保護区、両生類生存同盟、地域の自治体、ペルーのカエタノ・ヘレディア大学、ニナカカ地区によって活用されます。

 私たちは、現在、「チンチャイコッチャガエルの保護の会」と呼ばれるデンバー動物園基金の会とともに、地域住民によるフニンガエルの生息状況調査活動を発足させています。このプロジェクトの目的は域外保全活動を通してレイクフニンガエルの個体群を保護することです。私たちは、飼育施設を起動させることによって、今行っている地域個体群の保全プログラムを強化し保全能力を高めたいと思っている人達とともに、本種の地理的分布域内に飼育下繁殖技術を持った保護センターがあることの必要性を強く訴えます。

このプロジェクトから予測される結果

  • レイクフニンガエルを繁殖させるために必要な施設の設置及び強化
  • この種の生態系内における必要性の評価
  • 飼育下繁殖プログラムの発展
  • 両生類の飼育、生きたエサの生産、バイオセキュリティや飼育下繁殖に対する地域住民の教育
  • 小規模の生息地をつくり、保全への共感を求めるなど地域を変えてゆくことによるプログラムの強化

1-roberto-e-member-2-30レイクフニンガエルを撮影するロベルト・エリアス(Roberto Elias,)(撮影Jhusely Navarro)

 

(翻訳高山ビッキ 監修桑原一司)

 

<関連サイト>

「100年カエル館」 http://kaeru-kan.com

「カエ~ル大学」http://kaeru-kan.com/kayale-u

「コトバデフリカエル」http://kaeru-kan.cocolog-nifty.com/kotobadefurikaeru

※現在、「コトバデフリカエル」では「カエル白書」Vol.3を配信中です。

http://kaeru-kan.cocolog-nifty.com/froggy_museum/

 

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フィル・ビショップ博士のカエルたち、両生類とともに歩んだ人生

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Amphibian Arkのご協力のもと、本ブログで時々紹介させていただいているA-Ark NEWS LETTERの「両生類の貢献者たち」。今回はニュージーランドのオタゴ大学動物学のフィル・ビショップ博士に、カエルが博士にどんな幸せをもたらしてくれたかについて語っていただきましょう。

<両生類の貢献者たち> Amphibian Ark Newsletter Number43 Amphibian Advocatesより

フィル・ビショップ(Phil Bishop)博士/IUCN(国際自然保護連合)SSC(種保存委員会)ASG(両生類専門家集団)共同代表、ASA(両生類保全同盟)チーフサイエンティスト

 しばしば尋ねられることがある「なんでカエルなの?」という質問。これにはずいぶんと答えに困った。気づいたときにはもう両生類に夢中だったからね。なぜかなんてわからない。ただただ両生類が好き、特にヒキガエルが好きなんだ。50年ほど前、まだ子どもだった頃、カエルとの最初の出会いをしたことは覚えている。それはとても美しい煉瓦色のメスのヒキガエルだった。私はその時4歳か5歳ぐらいだったと思うが、カエルは私の小さな手の中でじっと動かず、微笑んでいた。それですっかりとりこになってしまったわけだ。

 多くの両生類保護活動家と同じように、私も庭でヘビやイモリ、ヒキガエル、その他のカエルをいっぱい飼っていたが、それは両生爬虫類学者になるために通る道でもあった。カーディフ大学では動物学を学び、修士課程で熱帯医学や寄生虫学を専攻していた。しかし、修士課程の終わり頃、私の指導教官だった著名な寄生虫学者が私に大きなアドバイスをくれた。彼は私の研究室(そこで私は12の水槽に32種の両生類を飼っていたが、修士論文とは関係のないものだった)に来てこう言った。「君は両生類の道を歩むべきだと思うよ」。そのアドバイスを受けることで、幸運にも南アフリカのネビル・パスモア(Neville Passmore)教授の指導のもとで無尾類の意志伝達と社会行動について研究し、博士号を取得することができた。カエルのことを学ぶために南アフリカに行くことは、キャンディショップにいる子どものように楽しかった。だってそこにはいろんな鳴き声のカラフルなカエルたちがたくさんいて、想像を絶するような生活行動を見せてくれていた。両生類を勉強するには最高の場所だったんだ。

 博士課程も終盤に向かった頃、第1回世界両生爬虫類会議に参加する機会があった。そこで世界の両生類の減少が進んでいる現実を知り、何とかしなければならないと思った。また、その開催地から南アフリカに戻る途中にこう考えた。カエルが減少していると言ってもアフリカではその証拠がないから、どれだけの種類のカエルがどこに生息していて、どんな生活をしているのか記録し、早急に生息の全体像を明らかにすることが大切なのではないか、と。それで南アフリカのカエルの分布図を作るプロジェクトを立ち上げ、カエルが実際どういう状況にあるのか記録証明することにした。ということで、数百人のボランティアと一緒に10年かけて記録したものが「南アフリカ共和国・レソト王国・エスワティ二王国のカエルアトラスとレッドデータ」という図表集。南アフリカ地域のすべての種のカエルについて正確な分布と生息状況を示すことができた。これは国境を越えたプロジェクトとしては私の初めての仕事だった。

 1990年代の終わりに私はニュージーランドに移り、ムカシガエルという信じられないほど奇妙なカエルの研究をすることになった。ニュージーランドにはムカシトカゲ、そしてキーウィやカカポなどのような飛べない鳥など変わった生きものがいるが、最初ここにやって来た時、その鳥たちが保護基金の対象になっているのを知った。ところが、さらに絶滅の危機に瀕しているカエルたちが忘れられているのではないかと気になった。それで私はニュージーランドの在来種のカエルの惨状を知らせる行動を起こし、それがさらに地球規模の両生類を巻き込んだ保護活動へとつながった。実際、グローバルなキャンペーンの必要性は感じていたので、ロッテルダムで行われた国際カエル年の企画会議に参加し、その後、ニュージーランドの国際カエル年大使になった。両生類の減少がどんどん広がっていることが報告されていたので、科学者たちが地球規模で協力体制をつくることが求められ、世界的な両生類の保護は広い視野で行われなければならないことは自明だった。いくつかの団体による金融支援があり、また故ジョージ・ラブ氏によるASA(the Amphibian Survival Alliance)が2011年に創設され、私はそのチーフに任命された(今も継続中)。2013年にはアリアドネ・アングロとともにICUN SSC両生類スペシャリストグループの共同代表を任された。この2つの役職を通じて私は両生類が子どもの世代、孫の世代、さらに次の世代まで生存し続けることができるように、世界中の両生類の保護活動を支援していく取り組みに力を注いで行きたいと思う。

 両生類が私にとても好意的だったせいか、アフリカ、ボルネオ、オーストラリア、チリ、マダガスカル、そしてイギリスなど世界各地でその保護プロジェクトの仕事を続けることができた。そして彼らはまた、私に素晴らしい人々との出会いをもたらしてくれた。ナイトの称号をもつデビット・アッテンボロー氏やジェーン・グドール博士、サム・ライミ監督によるファンタジー映画のヒロイン、ジーナ、チャールズ皇太子とカミラ夫人、そして故ジョージ・ラブ氏など、私にとって子どもの頃からのヒーローたちだった。

 我々は両生類を護るために真剣にやらなければならないことがたくさんある。人間の生命も両生類の存在と切り離して考えることはできないと思うからね。

(翻訳 高山ビッキ 監修 桑原一司)

 

 

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■絶滅からよみがえるエクアドルのカエル

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(写真:Ernesto Arbelaez Ortiz 協力:Amphibian Ark)

100年カエル館で所蔵しているカエルの置物でいえば、那智黒石のカエルのような写真のカエルは、南米エクアドルで1989年から見られなくなり、2002年には公式に絶滅したと宣言されたことのあるカエル、学名Atelopus nanay です。ところが、2013年に2つの小さな個体群が再発見されました。エクアドルにあるビオパーク・アマル動物園内の両生類保全センターでは、その後この種のための捕獲繁殖プログラムが立ち上げられています。

Webカエ~ル大学内のWebカエルタイムズでは、Amphibian Arkのご協力のもと季刊で更新されているAArk Newsletterの一部の日本語版を紹介しています。最新号では、このエクアドルのカエルの捕獲繁殖プログラムのように、緊急の捕獲救済が必要とされる両生類種についてAArk 両生類種分類担当官のケビン・ジョンソン氏による報告を掲載しています。

英語版はAArk Newsletter NO.36 September 2016 P5

http://www.amphibianark.org/news/aark-newsletter/

日本語版は  Webカエ~ル大学 http://kaeru-kan.com/kayale-u の校舎からご覧ください。

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<100年カエル館情報>

2016年の営業は終了いたしました。ご来館ありがとうございました。

場所 : 100年カエル館

      〒966-0096福島県喜多方市字押切南2-6

      (旧桐工芸館裏、自動車用品ショップコクピット121隣)

開館時間 : 午後1時~午後4時30分

入館料  : 大人 500円 小中高生 100円

お問い合わせ 03-3981-6985(ケーアンドケー内)

100年カエル館コレクション展 「かえる曼陀羅」  ~100年カエル館から河竹登志夫さんへのオマージュ~ は11月10日で終了いたしました。ありがとうございました。

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※新刊『ときめくカエル図鑑』(山と渓谷社刊 文・高山ビッキ 写真・松橋利光)販売中です。どうぞよろしくお願いします。

Photo

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<関連サイト>

「100年カエル館」 http://kaeru-kan.com

※Webミュージアムでは2011年に福島県立博物館で開催した「喜多方『100年カエル館』コレクション展」を画像でご覧いただいております。

「カエ~ル大学」http://kaeru-kan.com/kayale-u

「コトバデフリカエル」http://kaeru-kan.cocolog-nifty.com/kotobadefurikaeru ※エッ

セイで時代をふりかえるサイトです。

カエル大学通信 www.mag2.com/m/0001378531.html 

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■2015年のアカガエル産卵前線北上中です。

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自然と人とのより良い関係を模索して活動している「カエル探偵団」(慶應大学生物学教室 福山欣司氏主宰)では、毎年、皆さんから寄せられる情報をもとに「日本全国アカガエル産卵前線をWeb上で公開しています。http://user.keio.ac.jp/~frog/frogs/temp/2015text.html  3月9日には青森県東津軽郡でヤマアカガエルの産卵が見られた報告があります。因みにここに掲載した写真は相模原市立博物館の秋山幸也さんが4月10日に津軽地方で撮影したヤマアカガエルです。Webカエ~ル大学のWebカエルタイムズでは、秋山さんに「カエルのまわり」を不定期で連載していただいています。最新号ではこのヤマアカガエルの産卵をめぐってその周辺の状況をレポートしてくださっています。

http://kaeru-kan.com/kayale-u/campus/kayaletimes/editorial/editorial.php

写真1 メスを待ち構えるヤマアカガエルのオス

写真2 ヤマアカガエルの水たまり

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「キモノ・二・キガエル」http://kaeru-kan.cocolog-nifty.com/kimonokigaeru  ※ゆかたやキモノ着用で優待割引のある施設をご紹介するサイトです。

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収穫の秋、カエルとミツバチについて考えました。

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今年の自然界における大きな話題のひとつに、世界各地で大量のミツバチがこつぜんと消える現象が挙げられます。働きバチが幼虫や女王バチを残したまま巣に戻らなくなる現象で、「蜂群崩壊症候群」と呼ばれています。原因はよくわかっていないようですが、ハチが田んぼで水を飲んだ後に多くみられることで、さまざまな説があるなかでも農薬説が有力視されています。

 ここ10年ほどは世界的にカエルの数が減っていることが、カエル好きならずとも気になる現象として注目されてきましたが、地球環境の変化はカエルだけでなくさまざまな生きものたちに影響を及ぼしているようです。

 そんなことを考えると、最近見つけたカエルグッズ(写真)のように、生態系まで反映しているような造形に思わず反応してしまいます。

 さて、明日(9月21日)は収穫の秋のひとときをカエ~ル“プチ”大学祭へ、ご来場お待ちいたしております。

◎カエ~ル“プチ”大学祭

時間 : 午後2時~

【出し物】

●カエルグッズの販売

●カエルトーク 午後2時~3時(無料)

「カエルグッズで学ぶ日本の美術」 高山ビッキ

カエルグッズを通して見えてくる日本美術の話や著書『かえるる』と『ときめくカエル図鑑』を執筆して改めて気づいたカエルの魅力などについてお話させていただきますので、その後皆さまとカエルについていろいろと語り合える場になればと考えております。

●一柳亭 第19回善立寺寄席(有料)

善立寺は初代紙切り正楽の菩提の寺です。現住職の新倉典生氏は年2回の「善立寺寄席」を開催しています。

時間 : 午後6時~

木戸銭 2000円

定員 100名

出演 

開口一番 柳家さん坊

落語 古今亭駒次

紙切り 林家正楽

  仲入り

落語 柳家我太楼

お楽しみ 柳家喬太郎

<場所> 足立善立寺

〒123-0851東京都足立区梅田1-26-10

<お問い合わせ>

善立寺寄席/TEL03(3886)1367 http://www.zenryuji.or.jp

カエ~ル大学祭/TEL03(3981)1367 http://kaeru-kan.com

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※新刊『ときめくカエル図鑑』(山と渓谷社刊 文・高山ビッキ 写真・松橋利光)販売中です。どうぞよろしくお願いします。

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カエル書籍フェア「蛙 ~書籍で見る“カエル曼荼羅”~」×カエルグッズフェア「カエルグッズで大人のままごと遊び ~カエルさんのフレッシュサラダ~」

http://tsite.jp/daikanyama/event/002037.html

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「空からオタマジャクシが降って来た」現象2011

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2009年に新聞・テレビなどのメディアでも騒がれた「空からオタマジャクシが降ってくる」事件。振り返れば、同年6月に石川県七尾市で約100匹が発見されたのを発端に、同秋までに北海道から鹿児島までの20道県27市町で確認されたという。

そして今年、2011年6月。スポーツ報知によれば、8日朝、石川県加賀市の南河武志さん宅の玄関前で約20匹のオタマジャクシが死んでいるのが発見されたという。玄関ポーチ屋根にも数匹見つかったそうだ。南河さんの話によると、自宅から約100メートルのところにある営巣地に向けて飛来するシラサギを日頃から目撃することが多く、「ひなに餌としてもっていく途中に口からこぼれたのでは」と語っていると報道されている。

2009年の「空オタマ」現象については、カエルタイムズでも着目し、元平塚市博物館館長で、現在、神奈川大学教授の浜口哲一氏にご寄稿いただいた。カエルが好きで、古くからのバードウォッチャーでもあるという浜口氏は、カエルや鳥に関する日頃の観察やデータ分析から「成体に比べれば少ないものの、意外に多くの鳥がオタマジャクシも利用している」と説明。「オタマジャクシを喉にためて巣に運んでいく途中の親鳥が、何かに驚いて吐き出した可能性が高い」と述べている。

また、澁澤龍彦(1928-1987)の『東西不思議物語』には似た現象についてこんなことが書かれていたので紹介したい。「空から異物が降ってくるという現象は、よくあることらしく、庄司浅水の『奇談千夜一夜』によれば、1924年3月、オーストラリアのクインズランド州のロングリーチ市では、雨に混じって3センチから7センチくらいの生きた魚とカエルが降ってきて、付近の住民は大騒ぎをしたという。種を明かせば、これは沼や池の水が、旋風や竜巻で空中に巻きあげられ、その中の魚やカエルが雨と一緒に降ってきたので、べつに不思議でも何でもないのだ。」

日本の「空オタマ」事件でも竜巻説が挙げられていたが、日頃、自然観察をしていればあたりまえにあることなのかもしれない。浜口氏も「ふだんからどんな鳥が何をしていたかという行動記録を積み重ねていくことが大事だと改めて感じた」と締めくくっていた。

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ナガレタゴガエルの繁殖に成功

  5月24日付けの同ブログでは、越前松島水族館の「かめ・かえる館」で展示されている福井県在来13種の蛙を紹介したが、同館ではまた全国の水族館で初めてナガレタゴガエルの人工繁殖に成功し、一般公開している。

 ナガレタゴガエルは、北関東から中国地方の山間部に生息する蛙で、成体の体長は4~6cm、繁殖期になるとたるむ皮ふや後ろ足の発達した水かきが特徴である。たぶん多くの人にとってあまり馴染みのない蛙だと思うが、それもそのはず1990年に命名されたばかりで、詳しい生息状況はまだ解明されていないそうだ。

 飼育員の百崎孝男さんによると、ナガレタゴガエルは昨年(2010年)の10月に福井県勝山市の滝波川の支流で親個体4ペア(8個体)を採集。ナガレタゴガエルは生息地の確認がむずかしく、今回の採集も3年がかりで実現した。福井県でも2年前に発見されていながらその分布域はまだはっきりしていなかった。詳しい人の話では、採集にはピンポイントとなる場所と時期があるらしく、結果的に発見の初記録のある場所で、水温が10℃を切った時期に採集できたそうだ。

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その後、45cm水槽で飼育開始。小石を水槽に設置。給水に落差をつけて水を落とし、水温を下げることで可能な限り「渓流」を再現。温度は最低3度まで下げ、「雪渓」を意識した環境づくりを行った。次第に皮ふがたるみ始め、お腹に卵が透けて見え始めた。

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3月31日に産卵。卵は12℃で様子を見、孵化後にオタマジャクシを3つの温度に分けて飼育する。

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水温は24℃は早々(5/12)に上陸し、5月28日現在、水温12℃のオタマジャクシはそろそろ前肢が生えそうなので上陸間近。

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上陸した亜成体(5個体)は親個体(3個体)と隔離して同じ60cm水槽内にて展示中。上陸直後は9mmほどの小さな蛙で、2~3日はトビムシサイズしか食べられなかった。さらに2~3日で小さなコオロギを食べられるようになる。

越前松島水族館では、2008年に行われた「国際カエル年」をきっかけに福井県の在来種をすべて集めることにした。その次のステップとしてトライした今回の人工繁殖。実現のためには、捕獲から繁殖まで温度など渓流という生息環境に起因する課題をクリアしていくことが最もむずかしかったという。

今回の成功をきっかけに百崎さんは「ナガレタゴガエル同様むずかしいと言われるカジカガエルやタゴガエルの人工繁殖にも挑戦したい」と語った。

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