カエルツボカビのその後と日本のカエルへの影響
カエルツボカビや世界的なカエルの
減少が話題になって、昨年2008年は
国際カエル年としてカエルをはじめと
する両生類を救おうというキャンペー
ンも行われた。しかし、キャンペーン
も終わり、話題に新鮮味がなくなると
まるですべては解決したかのように
語られなくなってしまう。それではいけないと
いうことで、カエルタイムズでは獣医師で
カエルの生態に詳しい田向健一氏に、2009年
の段階で知っておくべきツボカビをめぐる日本
のカエルの現状について書いていただいた。
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[日本のカエルが消えてしまう!?
~カエルツボカビ、日本初確認とその後]
カエルタイムズを読まれている方なら、
この名を知らない方はいないと思います。
世界のいくつかの両生類を絶滅にまで
追いやったとされるカビの一種、ツボカビ。
そんなカエルにとって恐怖の病原体が
2006年12月、日本でも発見されてしまった
のです。その衝撃は大手新聞の一面を
飾ったほどです。
もともと、この菌の存在が世に知らされる
ことになったのは、以前より問題になってい
たカエル減少の新たな犯人である可能性が
浮上したことによります。それ以前のカエル
の世界的減少は環境破壊や汚染、地球温暖
化などが主な原因と考えられていたのでした
が、詳しく調べてみると人間活動の影響を
受けにくいようなパナマやオーストラリアの
自然保護区や山地奥地でも生息数の減少
が起きており、その原因がカエルツボカビ
によるものと判明したからです。
日本でカエルツボカビが確認されて以降、
研究者や獣医師、環境省などが中心となっ
て日本の野外に生息する在来種について
検査を行いました。その結果、驚くべきこと
に日本の野外に生息する両生類からも、
ごくわずかですが、一定の割合でカエルツボ
カビが検出されたのです。しかしカエルツボカ
ビが見つかった両生類の個体群に目を向ける
と、大量死、変死、激変などの事例は一切見ら
れていません。
カエルツボカビによってパナマやオーストラリア
など被害著しい地域もあれば、日本のように目立
った影響がない地域もあることが判りました。この
不可解な現象に対して、もともと日本固有のカエル
ツボカビがいたのではないか、外国からカエルツボ
カビは侵入したけれども、日本のカエルには耐性が
あるかもしれない、など様々な仮説が挙がっています。
しかし、本当の理由はいまだに不明です。日本から
検出されたカエルツボカビの遺伝子には様々な系統
のものがあることも判明し、これは海外の報告では
見られないことでした。したがって、日本ではカエル
ツボカビ=カエルの死の病原体であるとの一方的な
構図を論じることは難しいと判ってきました。
謎多き菌、カエルツボカビ。さらなる研究が望まれ
ます。(田向健一)
※写真はカエルの減少や絶滅が深刻な中南米の
コスタリカのヤドクガエルのマグネット(100年カエル
館所蔵)
100年カエル館・カエ~ル大学はこちらからhttp://kaeru-kan.com/kayale-u/
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