書籍・雑誌

家にいて野外のカエルたちの活動を想像できるカエルの本の紹介

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 知れば知るほど興味深い存在だと感じる日本のカエルたち。私自身は野外のカエルの調査研究に携わっているわけではありませんが、日本両生類研究会に参加し毎年開催されるフォーラムや、発行される「両生類誌」を通して、日本のカエルの生態や行動、地域ごとの分布状況などにも少しずつ関心をもつようになりました。

 同会は、昨年末、創設20周年を記念して『両生類に魅せられて』(発売元 市民科学出版を出版しました。本誌では、現在第一線で活躍中の両生類の研究者の方々による長期に亘る調査研究や、新しい視点で取り組んでいる研究活動などについての報告を読むことができます。本誌は生物学や自然史の研究者を対象にした内容ですが、私はカエルと人間とのかかわりから生まれた文化に焦点を当てて書かせていただきました。

 そうして益々、カエルの文化的探究とカエルそのものについて知ることは切り離せないと感じるように。100年カエル館(福島県喜多方市)のまわりに生息しているカエルの観察から始めたいと考えていたところ、そのガイドを買って出てくれるような本が出版されたのでご紹介します。『見つけて検索!日本のカエルフィールドガイド』(カエル探偵団 編 文一総合出版 刊)です。

 本書は、野外でカエルと出合って何というカエルかわからないとき、「カエル検索表」により、北海道から先島諸島までその地域ごとに大きさや体色、外部形態から種名を類推してくれます。ヒキガエルのなかまやトノサマガエルのなかまなど区別のつきにくい種は「似ている種を見分けよう」のページでチェック。特定できた種ごとに「カエル図鑑」ページで詳しい情報を得ることができます。

 たとえ遠くに野外観察に出なくてもこのガイドブックを“観察”すれば、日本列島北から南まで、カエルを通して土や木や水のある風景、自然の感触も伝わってくるような一冊です。  

※日本両生類研究会20周年記念誌『両生類に魅せられて』は、市民科学出版 https://kahokugata.stores.jp/ 『見つけて検索!日本のカエルフィールドガイド』は、文一総合出版 https://www.bun-ichi.co.jp/ から、またどちらもアマゾンからご購入できます。

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■『かえるふくしま』(矢内靖史著)と写真展「かえるふくしま」

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昨年(2015年)、このブログでも紹介させていただいた福島民友新聞社の報道カメラマンで、福島県に棲息するカエルの写真を数多く撮影している矢内靖史さん。今年は2月にポプラ社から『かえるふくしま』というタイトルの写真絵本を出版しました。

カエルは、夏目漱石が「大方は同じ顔なる蛙かな」と詠んだように、みんな似ているように見えることがあります。しかし、その顔をいろんな角度から見つめると、「笑っているように見えたり、おこっているように見えたり、なにか考えごとをしているように見えたりもする」(本書より)。カエルが意識して表情をつくっているわけではないのに、人間の目にはそう見えてしまう。それはカメラマンの矢内さんにシャッターを切らせる、カエルの大きな魅力のひとつかもしれません。

そして、身軽にどこにでもよじ登るアマガエルなら、植物の茎の上も、近くに人の足音が聞こえそうな路上も、ブルーの土嚢(どのう)の上も、気ままにのって佇む。こんなところにカエルのもうひとつの大きな魅力があります。野外のどんなシーンも自分のものにして、人間に暗黙のメッセージを発信しているように見えることです。

福島のカエルはいまどんな思いで、何を語りたがっているのでしょうか。

写真絵本『かえるふくしま』は、信頼する一人の報道カメラマンの前でカエルが語った、終わりのない物語であり、受け手がそれぞれの目で読み解く絵本といえるかもしれません。

矢内さんはこの出版に合わせて3月2日から15日まで、仙台で写真展を開催します。ぜひ足をお運びください。

写真展「かえるふくしま」

会場 : ニコンプラザ仙台 フォトギャラリー

            宮城県仙台市青葉区中央1-3-1 AERビル29F       

日時 : 2016年3月2日(水)~3月15日(火) 午前9時30分~午後6時(日曜休館、最終日は午後3時まで)

お問い合わせ 022-715-1490

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※新刊『ときめくカエル図鑑』(山と渓谷社刊 文・高山ビッキ 写真・松橋利光)販売中です。どうぞよろしくお願いします。

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<関連サイト>

「100年カエル館」 http://kaeru-kan.com

※Webミュージアムでは2011年に福島県立博物館で開催した「喜多方『100年カエル館』コレクション展」を画像でご覧いただいております。

「カエ~ル大学」http://kaeru-kan.com/kayale-u

「コトバデフリカエル」http://kaeru-kan.cocolog-nifty.com/kotobadefurikaeru ※エッセイで時代をふりかえるサイトです。

カエル大学通信 www.mag2.com/m/0001378531.html 

※『かえるる カエルLOVE111』(山と渓谷社)全国の書店等で販売中です。

 

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