東京・下北沢で言葉と香り、そしてカエルに出会いました。
久しぶりに下北沢に行ってきました。最後に訪れたのはいつだったか……、再開発が進むずっと前だったと思います。演劇に興味をもっていた時期には、「本多劇場」や「すずなり」で学生演劇から始まって大きく飛躍した「夢の遊民社」や「第三舞台」の芝居を観て、京都の大学から生まれたリズム&ブルースのバンド「ウエストロードブルースバンド」を知ったのもこのまち。20世紀後半にはサブカルチャーの熱気に満ちていたことを思い出します。住んでいる方も魅力的で、仕事ではよくアンティーク・ジュエリーを研究しているK夫人に取材するために通ったことがあります。
食べ物屋さんの壁にはたくさんの小劇団の公演やバンドのライブのチラシが貼られていて、思えば言葉に溢れたまちでした。その頃の言葉を見つけに時を経てやって来たわけではないのですが、今回、未来の言葉に出会いました。
下北沢駅西南口に再開発でできた新しいスポット「ボーナストラック」のギャラリーで開催されているイベント「言葉でつなぐ、私と香り展」(2025年2月5日~2月11日)を観ました。直木賞作家で独自の言葉の世界を表現されている千早茜さんと、京都から香りの文化を発信している創業300余年の香老舗松栄堂のコラボレーションで、来場者参加型のイベントでした。
そのイベントで言葉と香りをつなぐ仕掛けともいえるのが文庫本サイズで文字が全く印刷されていない5冊の本。唯一「いろはにほ」の各一文字が記された本には一冊ずつ異なる香りのシートが貼られています。それを手に取りページをパラパラと捲ると立ち上る香りはまさに新しい文学ではないかと感じました。香りが本という形態をもつことで生まれる文学。香りで脳や記憶が刺激されて人によってはこれまで読んだことのある物語が蘇えることもあるでしょうし、自分の物語の創造につながることもある。表題の「言葉でつなぐ、私と香り」の意味が伝わりました。
同じ本の形態でも物語が視覚的に伝わるのがコミックだとしたら、これは嗅覚的に広がる物語。21世紀の言葉のまち、東京・下北沢で未来の文学に出会えたような気がしました。
「ボーナストラック」とは反対側にある南口商店街の通りを久しぶりに歩くと、三叉路になる辺りに「三叉灯(SANSATO)」という、コーヒーショップ、雑貨店、アートギャラリーが一体となったアンティークビルがありました。階段スペースに設置されたブリキのカエルを発見し、お店の方にお断りして撮影させていただきました。この三叉路には、外観写真の右手の方に(写ってはいないのですが)「庚申塚(こうしんづか)」が祀られていました。庚申塚といえば猿田彦大神。このカエルはサルタヒコの使い神、下北沢を守っているようでした。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「100年カエル館」 http://kaeru-kan.com
「カエ~ル大学」http://kaeru-kan.com/kayale-u
「コトバデフリカエル」http://kaeru-kan.cocolog-nifty.com/kotobadefurikaeru
| 固定リンク
最近のコメント