海と空とカエルと、一枚の布に誘われて
最近、夏休みが終わって登校が始まった近所の小学生の女の子とすれ違い、朝の挨拶を交わしました。すると、その女の子がやって来た方角にある住宅の階上から「行ってらっしゃーい」「気をつけてねー」と窓に張りつくようにして涙声で叫ぶ幼い女の子の姿が見えました。長い夏休みをお姉ちゃんと過ごした妹さんなのでしょう。お姉ちゃんは意を決しているかのように振り返ることもなく遠ざかっていきます。そのランドセルを背負った後ろ姿が印象的でした。
そんなふうに夏休みの終わりを感じたら、カエルが登場する絵本や童話について書く宿題を終えていない気がして……。今回は2冊紹介いたします。
どちらにももちろんカエルが登場しますが、どちらのカエルも1枚の布を手に入れることで、自分を取り巻く世界を変えることができました。1枚は青いバスタオル、もう1枚は赤いハンカチで。
『うみをあげるよ』(山下明生・作、村上勉・画、秋書房、1977年刊行)
『うみをあげるよ』では、団地の上の階に住んでいるワタルくんの、それがないと眠れないほど大事にしている「あおい すてきな タオル」が、ある日、ベランダの物干しから風に飛ばされてしまします。そして、その青いタオルは、ワタルくんの家の近くの森に住んでいるカエルの兄弟が、初めて目にした「うみ」になりました。海を思いっきり楽しむ2匹のカエル。タオルの端にとまったホタルの光は灯台に思えたようです。ワタルくんもカエルたちを見守っているうちにちょっとお兄ちゃんになっていきます。作・画のお二人によるカエルが登場する絵本は「かえるえんみどりぐみ」シリーズなど、他にも読むことができます。
『カエルのフレディ空を飛ぶ』(ジーグムーント・フレンケル作、きしむらこたろう訳、PHP研究所、2000年刊行/現在品切れ)
一方、赤いハンカチで凧を作って、空へと飛び出したのは『カエルのフレディ空を飛ぶ』のフレデイです。やはり、干してあった洗濯ものが風に飛ばされてきたのか、こちらは1枚の「真っ赤なハンカチ」を手に入れます。フレディはその活用のしかたをあれこれ考えて、ついには2本の小枝を使って凧を作ることに。そうして、カエルにはできないような空の旅に出て、そこで出くわしたコウノトリの攻撃に対しても知恵を絞って応戦します。作者のジーグムーント・フレンケル氏(1929-1997)は、ポーランド生まれで、ロシア、イギリス、ベルギーでの生活を経て、イスラエルに定住して創作活動をしました。そのコスモポリタンらしい視点なのか、ちょっとシニカルですが世の中を渡るときのヒントがいろいろ発見できる大人のための絵本です。姉妹本に『カエルのフレディ海を行く』もあります。
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<関連サイト>
「100年カエル館」 http://kaeru-kan.com
「カエ~ル大学」http://kaeru-kan.com/kayale-u
「コトバデフリカエル」http://kaeru-kan.cocolog-nifty.com/kotobadefurikaeru
※現在、「コトバデフリカエル」では「カエル白書」Vol.3を配信中です。
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