夏休みのカエル講座最終回「カエルの色彩表現とフェルメール」
カエルは色彩表現の天才だと思うことがあります。
日本で「蛙色」といえば基本はグリーン系というイメージがありますが、実際にいろいろな種類のカエルを見ると黒っぽかったり、茶系だったり、かと思えば、黄緑色のアマガエルの中にきれいな水色や白色の個体が見つかったりすることもあります。
日本ではアカガエル科のカエルとアオガエル科のカエルは多いのですが、アカガエルといってもアフリカのトマトガエルほど赤くなく、渓流の石の上で鳴くカジカガエルはアオガエル科なのにグレー系だったり、その色彩表現はまさに天性の芸術家といえそうです。
そんなカエルがまさに体現している色彩表現について、広島大学の三浦郁夫氏はその論文「カエルにおける色彩発現の遺伝的メカニズム」で詳しく述べられています。
カエルの皮ふには基本となる3種類の色素細胞、「黄色細胞」「虹色細胞」「黒色細胞」があり、オタマジャクシからカエルに変態すると、それら3つが表皮から順に三層に配置し「真皮性色素胞単位」というユニットを形成して色彩を発現するのだそうです。さらに「第4の色素細胞にアカガエルでは赤色細胞が黒色細胞の下に配置し、アオガエルでは紫色細胞が黒色細胞に代わって出現する」と解説。
アカガエルとアオガエルの違いはそこに由来するのかと納得がいきました。さらにカエルの〝表現力”にかかわるともいえるのが「虹色細胞」に含まれている「反射小板」という、色をもたない色素。これは黒色細胞の黒色を背景として、外から入射した光を表に返す機能をもっているのだそうです。この仕組みについて三浦氏は、時々田んぼなどで発見される青い色のアマガエルを例にとって説明されています。
「(普通に見られるアマガエルの)グリーン色は、虹色細胞が青色付近の波長の光を外に返し、途中、黄色細胞の黄色い色素を通過するため、両色が混ざって発現する。しかし、この黄色素が欠損するか、あるいは極度に凝縮すると黄色のフィルターがなくなり、皮膚色は反射光のブルーを呈する」そうです。イエローの絵の具を切らしたカエルの画家は本来の蛙色(=グリーン)を生み出せないのでしょう。
詳しくは下記URLから「カエルにおける色彩発現の遺伝的メカニズム」をご覧ください。
https://ir.lib.hiroshima-u.ac.jp/files/public/4/47719/20190704092219945395/BHSJ_2009-2_151.pdf
最近、BS放送で映画『真珠の耳飾りの少女』を観ました。17世紀オランダの画家フェルメールとその作品のモデルとなった若い女性のことが描かれていますが、画家が少女に雲を見ながらその色を問うシーンがあります。彼女は最初「白」と答えますが、すぐにそれを否定し「黄、グレー、そして青」と実際に目に映る色を挙げます。
今回、カエルのもつ色彩表現のメカニズム、特に「反射小板」の機能を知ることで、この画家を気取ったカエル(画像)は“光の天才画家”と呼ばれるフェルメールをまねているのではないかと、秋の日の雲を見ながら空想してみました。
<関連サイト>
「100年カエル館」 http://kaeru-kan.com
「カエ~ル大学」http://kaeru-kan.com/kayale-u
「コトバデフリカエル」http://kaeru-kan.cocolog-nifty.com/kotobadefurikaeru
※現在、「コトバデフリカエル」では「カエル白書」Vol.3を配信中です。
カエル大学通信 www.mag2.com/m/0001378531.htm
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