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2020年10月

カエルが引き合わせてくれたあの頃のニューヨーク発現代アート

Duco-cement

《Duco CEMENT》1980年 米沢市上杉博物館 通期展示

カエルに導かれるように美術展に出会うことがあります。現在、渋谷区立松濤美術館で開催されている「後藤克芳 ニューヨークだより “一瞬一瞬をアートする”」展もそのひとつ。目の前に現れた広告には、ドーンとカエルが造形された立体作品。ポップで愉快なカエルの胴体部分が、なぜか「Duco CEMENT®」という商品のパッケージになっていました。この「デュコセメント」は、アメリカでは家庭などでも日常的に使われている接着剤で、作家自身、木工制作の際によく使用していたもののようです。(※画像)

後藤克芳(1936~2000)は、1964年に渡米して以降亡くなるまでニューヨークを舞台に活動し、半立体のスーパーリアリズムの作品を制作したアーティストです。出身は山形県米沢市。今回の展覧会は、没後郷里の米沢市上杉博物館に寄贈された作品群を中心にその全貌が紹介されています。

米沢市は、100年カエル館のある福島県会津・喜多方市と隣接するどちらも山に囲まれた自然豊かな土地。生息しているカエルの種類もほとんど変わりません。カエルは子どもの頃から身近な生きものだったでしょう。

それにしても本来小さな接着剤を高さ1mほどの奇妙なカエルの胴体部にしてしまった理由が気になりました。そして想像したのは、このカエルの顔の下あたりに書かれているパッケージの注意喚起の文言「危険!目に入ると炎症を引き起こす」と読み取れる警告に意味をもたせたかったのではないか、と。

実際、この警告はカエルが行うととても説得力があります。天敵に対して自ら攻撃する手段をもたないカエルは、多かれ少なかれ分泌物に毒性がある場合があり、カエルを手に乗せたりした後では目をこすらないようにというのが野外観察の際の注意事項にもなっています。

さらに、中南米にはその名もヤドクガエルという強力な毒をもつ極彩色の美しいカエルたちがいます。そのカラフルさは天敵に対して「毒をもっているから触るとキケンだよ」という警告色になっています。後藤克芳がヤドクガエルを知っていたことは、《Duco CEMENT》を制作する2年前、1978年に制作した作品に迷彩柄の帽子を真上から描き、よく見るとその上に熱帯雨林に棲むヤドクガエルと思われる立体を視覚的には紛れ込ませるように組み合わせていることから推察できました。(※画像)

Untitled

《untitled》1978年 米沢市上杉博物館 通期展示

今回、故後藤克芳氏が同世代で現在もニューヨークを中心に活躍している篠原有司男氏と親交があったことを知り、筆者にとってはヤドクガエルでお二人がつながりました。100年カエル館で2006年に発行した「カエルタイムズ」に篠原氏にご寄稿いただいたことがありました。当時、篠原氏は回顧展で「セザンヌについて語る2匹の蛙」という大作を展示し、「毒ガエルの逆襲」というドローイングを描かれていました。

70~80年代に若者だった世代には、遠く憧れたニューヨークのアートシーンにリアルタイムに挑んでいた二人の日本人アーティスト。その心に生息していたヤドクガエルとは何だったのか、考えたくなる展覧会でもあります。実はまだ会場に足を運んでいないのですが、その答えを求めに行きたいと思います。

 

<後藤芳 ニューヨークだより

“一瞬一瞬をアートする”>

会場 渋谷区立松濤美術館 

会期 2020年10月3日(土)~11月23日(月・祝)前期:10月3日~25日 後期:10月27日~11月23日 ※休館日は月曜日(ただし、11月23日は開館)、11月4日(水)

開館時間 午前10時~午後6時(入館は午後5時30分まで)

入館料 一般500円、大学生400円、高校生・60歳以上250円、小中学生100円 ※その他、団体、渋谷区民割引等あり。

主催 渋谷区立松濤美術館

特別協力 米沢市上杉博物館

お問い合わせ 渋谷区立松濤美術館 〒150-0046 東京都渋谷区松濤2-14-14 TEL.03-3465-9421 https://shoto-museum.jp

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<関連サイト>

「100年カエル館」 http://kaeru-kan.com

「カエ~ル大学」http://kaeru-kan.com/kayale-u

「コトバデフリカエル」http://kaeru-kan.cocolog-nifty.com/kotobadefurikaeru

※現在、「コトバデフリカエル」では「カエル白書」Vol.3を配信中です。

カエル大学通信 www.mag2.com/m/0001378531.htm  

 

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夏休みのカエル講座最終回「カエルの色彩表現とフェルメール」 

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カエルは色彩表現の天才だと思うことがあります。

日本で「蛙色」といえば基本はグリーン系というイメージがありますが、実際にいろいろな種類のカエルを見ると黒っぽかったり、茶系だったり、かと思えば、黄緑色のアマガエルの中にきれいな水色や白色の個体が見つかったりすることもあります。

日本ではアカガエル科のカエルとアオガエル科のカエルは多いのですが、アカガエルといってもアフリカのトマトガエルほど赤くなく、渓流の石の上で鳴くカジカガエルはアオガエル科なのにグレー系だったり、その色彩表現はまさに天性の芸術家といえそうです。

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そんなカエルがまさに体現している色彩表現について、広島大学の三浦郁夫氏はその論文「カエルにおける色彩発現の遺伝的メカニズム」で詳しく述べられています。

カエルの皮ふには基本となる3種類の色素細胞、「黄色細胞」「虹色細胞」「黒色細胞」があり、オタマジャクシからカエルに変態すると、それら3つが表皮から順に三層に配置し「真皮性色素胞単位」というユニットを形成して色彩を発現するのだそうです。さらに「第4の色素細胞にアカガエルでは赤色細胞が黒色細胞の下に配置し、アオガエルでは紫色細胞が黒色細胞に代わって出現する」と解説。

 アカガエルとアオガエルの違いはそこに由来するのかと納得がいきました。さらにカエルの〝表現力”にかかわるともいえるのが「虹色細胞」に含まれている「反射小板」という、色をもたない色素。これは黒色細胞の黒色を背景として、外から入射した光を表に返す機能をもっているのだそうです。この仕組みについて三浦氏は、時々田んぼなどで発見される青い色のアマガエルを例にとって説明されています。

「(普通に見られるアマガエルの)グリーン色は、虹色細胞が青色付近の波長の光を外に返し、途中、黄色細胞の黄色い色素を通過するため、両色が混ざって発現する。しかし、この黄色素が欠損するか、あるいは極度に凝縮すると黄色のフィルターがなくなり、皮膚色は反射光のブルーを呈する」そうです。イエローの絵の具を切らしたカエルの画家は本来の蛙色(=グリーン)を生み出せないのでしょう。

詳しくは下記URLから「カエルにおける色彩発現の遺伝的メカニズム」をご覧ください。

https://ir.lib.hiroshima-u.ac.jp/files/public/4/47719/20190704092219945395/BHSJ_2009-2_151.pdf

最近、BS放送で映画『真珠の耳飾りの少女』を観ました。17世紀オランダの画家フェルメールとその作品のモデルとなった若い女性のことが描かれていますが、画家が少女に雲を見ながらその色を問うシーンがあります。彼女は最初「白」と答えますが、すぐにそれを否定し「黄、グレー、そして青」と実際に目に映る色を挙げます。

今回、カエルのもつ色彩表現のメカニズム、特に「反射小板」の機能を知ることで、この画家を気取ったカエル(画像)は“光の天才画家”と呼ばれるフェルメールをまねているのではないかと、秋の日の雲を見ながら空想してみました。

<関連サイト>

「100年カエル館」 http://kaeru-kan.com

「カエ~ル大学」http://kaeru-kan.com/kayale-u

「コトバデフリカエル」http://kaeru-kan.cocolog-nifty.com/kotobadefurikaeru

※現在、「コトバデフリカエル」では「カエル白書」Vol.3を配信中です。

カエル大学通信 www.mag2.com/m/0001378531.htm  

 

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