夏休みのカエル講座6 カエルが食べられる
古今東西のカエルグッズには「カエルさん、あぶない!」と心配したくなるような、カエルにとっては天敵、カエルを食べる生きものと一緒の造形物もあります。特に画像のようにヘビやトリとの組み合わせがよく見られます。
自然界は生態ピラミッドにおける食べる・食べられる「食物連鎖」の関係が成り立つことで、生態系のバランスを保っています。とは言え、カエル一匹一匹の個体にとって天敵はやっぱり出合いたくない存在に違いないでしょう。
でも、人の手によって作られたカエルとその天敵が表現された造形物の場合、画像左の根付はヘビがカエルを縛り付けてから食べようとしているように見えますが、江戸期以来盛んに作られた根付は、洒落を効かせたものも多かったので、これなどは差し詰め「長いものには巻かれろ」といった意味も込められていたのかもしれません。画像右はスコットランドの工芸品のカエルと小鳥ですが、カエルが小鳥に積極的に求愛しているようにも見えます。
そんなふうにカエルと天敵についてあれこれ考えていたところ、今年2020年3月にカナダの国際学術誌にオンライン掲載された興味深い論文を読むことができました。なんと、カエルがヘビと遭遇した時に身動きできなくなる状態、つまり「ヘビににらまれたカエル」のような状態についてそのメカニズムを説明した内容です。
著者は基礎生物学研究所の西海望(にしうみのぞみ)・日本学術振興会特別研究員(研究当時は京大理学研究科博士課程)と森哲(もりあきら)京都大学准教授。タイトルは「捕食者と被食者の我慢比べ:相手の動き出しを待つことが捕食の成否を決定する(A game of patience between predator and prey: waiting for opponent's action determines successful capture or escape)」
カエルとヘビが対峙したときに両者とも動きを止め時には1時間近く静止続ける、膠着状態になるそうです。実験はトノサマガエルとシマヘビで行われたそうですが、カエルとヘビがにらみ合いながらも両者の距離がある段階になるまでは動き出さない理由が、先手を取るとカエルは動きが読まれて捕えられやすくなり、ヘビはかみつきがよけられやすくなり不利になる、逆にいえば「双方にとって後手に回って行動することが有利となる」メカニズムの説明がなされていました。
そして、共に一歩も譲らない状態から最後の最後で後手から先手に切り替えるというカエルとヘビ。自然界における生きものたちの高度な戦術について知ることができました。
詳しくは下記をご覧ください。
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/2019/documents/200310_1/01.pdf
西海望氏はトノサマガエルのさらなる戦術についてacademistJournalに執筆されています。
https://academist-cf.com/journal/?p=13384
先手を打つのはどっち?
<関連サイト>
「100年カエル館」 http://kaeru-kan.com
「カエ~ル大学」http://kaeru-kan.com/kayale-u
「コトバデフリカエル」http://kaeru-kan.cocolog-nifty.com/kotobadefurikaeru
※現在、「コトバデフリカエル」では「カエル白書」Vol.3を配信中です。
カエル大学通信 www.mag2.com/m/0001378531.htm
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