100年カエル館コレクション14 葉乗りガエルと明治生まれの芸術家たち
思いがけず手にした1冊の文庫本『牛のあゆみ』があります。明治生まれで101歳まで生きた画家、奥村土牛(おくむらとぎゅ/1889-1990)が86歳のときに書いた自伝です。昨年の2019年にはその多くの作品が所蔵されている山種美術館で生誕130周年展が開催されました。
自伝では、自らそう称するように牛のごとくゆっくりゆっくり画業を積み、老境に入って尚、初心を忘れず果敢に描き続ける姿が綴られています。その最初の章「生いたち」の扉絵は葉っぱの上に止まっている蛙のスケッチでした。
ご覧いただいている写真は100年カエル館コレクションのひとつの葉乗りガエル。土牛画伯がスケッチに描いた葉の上の蛙は1匹ですが、絵描きになりたかったという父親の導きもあって立派な画人となった画伯を偲ぶカエルとして紹介させていただいています。
奥村土牛は東京・京橋生まれなので、1876年に日本橋で生まれたカエルのコレクター、小澤一蛙(1876-1960)とは育った時代と地域に共通するものがあるように思えて、関東大震災で家が焼失してしまったことを含めオーバーラップして読める箇所もありました。
100年カエル館が小澤一蛙のコレクション展を初めて企画したのは、2008年の「国際カエル年」のとき。井の頭自然文化園の国際カエル年イベントの一環で「時を超えてよみがえる一蛙コレクション展~発見!100年前のカエル好き~」と題して7月8日から半年間開催されました。
開催場所は井の頭自然文化園内の彫刻館。同館は長崎の平和祈念像を制作した彫刻家、北村西望(1884-1987)の生前のアトリエに隣接して建てられた記念館です。08年にはそのイベント準備のために何度も通いましたが、館内に平和祈念像の原型となる巨大な像があることを知り驚きました。
奥村土牛と北村西望は共に19世紀末から20世紀末の約100年を芸術に打ち込んで生きたと言えます。そして北村西望のアトリエの展示には石膏の蛙の作品「カエルと木の葉」もありました。そのカエルをイベントでは一蛙コレクションのカエルとともに展示させていただきました。小澤一蛙も趣味で彫刻を楽しんでいましたが、晩年は北村西望と同じく吉祥寺に住んでいました。2008年にはカエルを通じて地球の平和について語っていたのではないかと想像しています。
<関連サイト>
「100年カエル館」 http://kaeru-kan.com
「カエ~ル大学」http://kaeru-kan.com/kayale-u
「コトバデフリカエル」http://kaeru-kan.cocolog-nifty.com/kotobadefurikaeru
※現在、「コトバデフリカエル」では「カエル白書」Vol.3を配信中です。
カエル大学通信 www.mag2.com/m/0001378531.htm
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