南極の近くの島で発見されたカエルの化石が教えてくれること
新聞報道などで「カエルの新種」や「カエルの化石」が発見されたという記事を目にすると、地球のロマンのようなものを感じます。遥か昔から地球上にいたカエル類が、長い時間をかけた進化を経て、人の踏み入らない熱帯雨林の中などにいまも人知れず生息している種もいることを思うと不思議な感動が湧いてきます。
最近驚いたのは「南極付近の島でカエル化石発見 4000万年前生息か」(日本経済新聞2020年5月8日)という記事。適応力があり砂漠も含め世界に広く分布しているカエル類ですが、さすがにそこには生息していないと考えられていた南極大陸。その近くに位置するシーモア島で推定約4000万年前のカエルの頭蓋骨と腸骨(腰骨)の化石が発見されたことが、英科学誌サイエンティフィック・リポートに掲載されました。
発見したのはスウェーデン自然史博物館などの国際研究チーム。チームを率いる同博物館の古生物学者(脊椎動物)のトーマス・モース博士は、2011年から2013年にかけてシーモア島で化石の発掘調査を行い、2015年にその収集した標本の中からカエルの化石を発見しました。
その化石の腸骨の形状からこのカエルは現在チリやアルゼンチンに生息するヘルメットガエルの仲間と考えられています。ヘルメットガエルは『ときめくカエル図鑑』でも紹介していますが、頭部の皮膚が骨と密着していてまさに石頭になっているところからその名が付けられました。
ニューヨークタイムズ(2020年4月23日のルーカス・ジョエル氏の記事)では、このカエルの化石の発見に専門家が語っています。「腸骨はカエルの骨格を分析する上で最も重要な部分で、その腸骨はヘルメットガエルのそれとよく似ている」(カリフォルニア大学バークリー校の両生爬虫類学者デヴィッド・ウエイク博士)、「カエルたちが南極を経て今に至っていることが真実味を帯びて来たが、カエルの進化過程に古代の超大陸パンゲアの分離がどんな役割を果たしたかまではさらなる遺物の発掘が必要になるだろう」(フロリダ自然史博物館の両生類の生物学者デヴィッド・ブラックバーン博士)。
カエルの化石への興味は尽きません。このブログでは、2009年に報道された兵庫県丹波市の地層「篠山層群」から1憶4千万年~1憶2千万年前のカエルの化石が発見された記事 http://kaeru-kan.cocolog-nifty.com/vikki/2010/02/1-4887.html や、2017年には松本かえるまつりで開催した「青空カエル文化講座」で、7000万年前マダガスカル島(アフリカ大陸の近くに位置する島)に南米産のツノガエルに似た全長40㎝ほどのカエルがいたことが化石の発見からわかった話を紹介したりしました。http://kaeru-kan.cocolog-nifty.com/vikki/2017/06/index.html
ツノガエルの貯金箱
カエルの化石を通して思いを馳せる、南極、南米、アフリカ、そして日本。その気の遠くなるほど長い地球の歴史のなかで、カエルがどんな経緯をたどって今私たちと出会っているのかこれからの研究調査を楽しみに待ちたいものです。
<関連サイト>
「100年カエル館」 http://kaeru-kan.com
「カエ~ル大学」http://kaeru-kan.com/kayale-u
「コトバデフリカエル」http://kaeru-kan.cocolog-nifty.com/kotobadefurikaeru
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