100年カエル館企画「カエルアートマン20 日本のカエルがHENSHIN」の中止についてお知らせいたします。
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桜前線北上中ですが、いつもどおりには盛り上がれない今年のお花見シーズンです。皆さんのなかには、家の中に花を飾って明るい気分で過したいと思っていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。そこで今回ご紹介するのはカエルの花器。
写真は、平安時代の歌人、紀貫之の「水に住む蛙」にならうなら、金属製(主に銅や真鍮)の「花器に這う蛙」です。思い思いにお好きな花を飾った状態を想像していただければ、カエルが部屋の中に春の野山の清々しい空気も運んで来てくれそうです。
たとえば、桜。カエルは桜をどう楽しむのでしょうか。一茶48歳のときの一句に「花びらに舌打したる蛙哉」があります。ハラハラと舞い散る桜の花びらはカエルにとっては動く生きもの、おいしいもの⁈ 人もカエルも昔から「花より団子」に目がないのでしょう。
そして、カエル好きの方におすすめの花は、この季節に美しく開花するキンポウゲ科のラナンキュラス(※)。ラナ(rana)といえばラテン語でカエルのこと。花の姿は色の種類も豊富で牡丹のような派手やかさがありますが、名前の由来でもある葉っぱは「カエルの足」のようにキュートです。
※ラナンキュラスは元々は中近東からヨーロッパにかけて分布していた花が品種改良されて種類も豊富に広まった園芸品種。その名の由来は湿った場所に生えるからとも、葉っぱが「カエルの足」に似ているからとも言われています。
(写真)「喜多方100年カエル館コレクション展」(2011年福島県立博物館にて)展示より
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カエルグッズにはひとつのカテゴリーに「小野道風と柳に跳びつく蛙」があります。ご覧いただいている100年カエル館のコレクションは、後列の「小野道風」が中野土人形(長野県中野市の郷土玩具)で画像では見えていないのですが足元に緑色のカエルがいます。その前列にいる「小野道風」は京人形。その左手の絵皿は江戸後期の伊万里焼です。手前には花札の絵柄になった「小野道風と柳に跳びつく蛙」の土鈴とポストカードを展示しました。それ以外は、花器や蚊取り線香入れなど土物の「柳に跳びつく蛙」、そして平安中期の能書家、小野道風に因んで金属製の水滴や文鎮に「柳に跳びつく蛙」が浮き彫りされたものが多く見られ、筆を持つカエルも道風をイメージさせます。
平安時代の三蹟の一人、小野道風は愛知県春日井市に生まれたといわれ、書が上達しない焦りを感じていたある雨の日、柳に何度も跳びついてやっと跳び移ることができた蛙を見て自らの努力の足りなさを思い知ったという逸話はよく知られています。この逸話が史実かどうかはわからないようですが、広まったきっかけも時代は下って江戸中期、浄瑠璃「小野道風青柳硯」の舞台だと見られています。花札に「小野道風」が登場したのも明治以降、また、戦前の日本の国定教科書に掲載されたことなどで広く知れ渡るようになったと考えられています。
カエルグッズにおけるいわば「小野道風と柳に跳びつく蛙」ものも、江戸時代の郷土玩具や伝統工芸などから始まったと想像できます。そして今もカエルをテーマにものづくりをしようとするとき、ひとつのテーマになっていると捉えていいのではないでしょうか。今世紀に入ってからは小野道風の出身地とされる春日井市では「春日井カエルまつり」を開催するようになり、今年で8回目。今年は4月18日(土)を予定してるそうですが、3月現在、実施できるかどうかは4月に入ってからの決定になるようです。
平安時代の書家、小野道風は、カエルとともに時を経ても忘れ去られない偉人のひとりといえるでしょう。
(写真)「喜多方100年カエル館コレクション」展(2011年福島県立博物館にて)展示より
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カエルをモチーフにした茶器は、日本にも京都清水焼の鳥獣戯画のカエルが描かれた湯呑みや、100年カエル館のある会津には手びねりのカエルのついた田島万古焼の湯呑や急須などがありますが、今回はカエルの造形が施された中国茶器の急須をご紹介します。
中国茶器の茶壺(ちゃこ/急須のこと)には、写真のように蓮と蛙を組み合わせて造形したものが見られます。100年カエル館の収蔵品を見る限り、ほとんどが蓮の葉や実に蛙がのっている意匠ですが、その表現のしかたにバリエーションがありとても見応えがあります。
また、中国の茶道具には茶玩(ちゃがん)と呼ばれるマスコットのような置物があります。これは茶壺と同じように紫砂(しさ)という原料でつくられるものが多く、お茶をかけるとその成分で深みのある色合いになるそうです。この茶玩にもカエルがあり、特に縁起物として知られる金貨をくわえた三足のカエルを茶盤(お盆)の上に茶壺や茶杯と一緒に置いて楽しむ人も多いようです。
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NHKの連続テレビ小説「スカーレット」の舞台になっている滋賀県・信楽(しがらき)は信楽焼で知られます。写真は2011年に福島県立博物館で開催した「喜多方『100年カエル館』コレクション」展のときの信楽焼のカエルの展示です。
主に両親が買い集めたもので、実家は祖父の代から土木業を営んでいたので父も文字通り土と木で造られたカエル、しかも大きめのものにこだわりがあったようです。茶色の「親子ガエル」と緑色の擬人化したカエルは、今では「昔ながらのカエル」と呼ばれていて一時期とてもよく造られていたようです。
そして、2枚目の画像は昨年(2019年)の松本かえるまつりに出店されていた信楽焼の窯元「シクヤ製陶所」さんのブースです。「昔ながらのカエル」の面影を残しながら新しいタイプの信楽焼のカエルが生れています。ヤドクガエルやベルツノガエルなど外国産のカエルの信楽焼も造られています。
「スカーレット」がきっかけで信楽にも人気が集まっています。ショップや飲食店、宿泊施設などで見て使って楽しめるのは信楽焼の食器類で、町のいたるところに縁起物の、カエルファンには残念ながらカエルではなくタヌキが迎えてくれる焼物の里、しがらき。私たちもカエルのコレクションを通じて長いお付き合いをしている信楽焼ですが、展示のための移動の際にも絶対壊れることがないと思えるそのたくましさも魅力のひとつではないかと思っています。
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