■日本のプチファーブル熊田千佳慕とヒキガエル
熊田千佳慕「天敵」1978-88年(C)Kumada Chikabo
クリッとした目がかわいいヒキガエル。視線の先にはオサムシがいる。ミツバチも飛んできた。描かれたこの瞬間の後の想像はむずかしくないでしょう。ヒキガエルは一瞬のうちに舌を伸ばしてどちらかを捕食するでしょう。
この絵は熊田千佳慕(くまだちかぼ/1911~2009)が描いた、絵本『ファーブル昆虫記の虫たち』のなかの「天敵」。もともと商業デザイナーとして活躍していた熊田が絵本作家として独立したのが38歳のとき。幼少期から昆虫が好きで、いつか『ファーブル昆虫記』の挿絵を描きたいと思っていた熊田は、55歳でそれを実現します。この絵は、『昆虫記』のなかの、ヒキガエルがオサムシを食べることを紹介したエピソードをもとに描いた、両者が出くわしたシーンです。
原作のそのエピソードにミツバチは出て来ないのですが、画家はオサムシを可哀想だと思ったのか、カエルの気をそらすためにミツバチを描き足したのだそうです。熊田自身はオサムシに感情移入した作品なのですが、カエルに感情移入してしまう立場から見ても魅了される、惚れ惚れするようなヒキガエルの横顔です。きっと自然界に生きる命には善も悪もない、ありのままを描こうという姿勢だったのかもしれません。
それにしてもこの作品、生きものたちのスリリングな一瞬を描いたその遠い向こうには山々が見え、地面に腹ばいになって自然観察をしていたという熊田の、視線そのものが伝わってくるようです。
この「日本のプチファーブル」といわれた熊田千佳慕の展覧会が2013年9月16日まで茨城県近代美術館で開催されています。虫好きな人はもちろん、虫を好きなカエルが好きな人もぜひお出かけください。
【日本のプチファーブル 熊田千佳慕展】
場所 : 茨城県近代美術館 茨城県水戸市千波町東久保666-1
会期 : 2013年7月13日(土)~9月16日(月・祝)
お問い合わせ : TEL.029(243)5111 http://www.modernart.museum.ibk.ed.jp/
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<関連サイト>
「100年カエル館」 http://kaeru-kan.com
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