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ハンス・イヌメとカエルが誘う芸術の根源

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  たまたま立ち寄った百貨店で、ギャラリーがあるのに気づく。「何かありそう」な気がして近づくと、まだ発見していないのに「絶対ある!」に変わる瞬間、“カエル好き”のカエル・センサーの数値はマックスになる。

 昨年2009年の夏に、伊勢丹新宿店のギャラリーで、画家ハンス・イヌメさんの作品のなかにカエルが描かれている絵を見つけたときもそうだった。トリの絵、ブタの絵、ネズミの絵、・・・・・・と、目で追っていく先に、やっぱり、カエルもいた。会場にはご本人も来日されていたが、がっちりとして男らしい風貌の方で、描いている小動物のイメージとは異なっていた。

 1951年、オランダ生まれのハンス・イヌメ氏は、アート活動を始めた当初、抽象画を描いていたが、メッセージの伝わりにくさに思い悩むことがあったそうだ。ところが、1987年に、初めて鶏をモチーフにした絵を出品したところ、思いがけない場面を目にする。その絵の前を通りかかった人が、描かれた鶏を見て立ち止まり、首を傾けながらにっこり笑ってその場を離れて行った。そのとき、自分の表現したものが観る人にダイレクトに伝わる実感を得たという。

 そうして彼の作品には、カエルも含めてどこにでもいて、それゆえ誰も関心をもたないが、とても愛らしい動物たちが増えていった。しかし、動物たちを抽象化して描いて、その可愛らしさをわかりやすく伝えることならイヌメ氏でなくともできるだろう。

 その作品が人を惹き付ける力は、イヌメ氏が動物を描くようになる前から積み重ねていたドイツ表現主義的抽象絵画や、アフリカの原始美術に共感して着想したイメージ表現がもととなっている。この作品(写真)のように、大地と月の間にいるカエルは、20世紀のはじめに日本でも活躍したイギリス人の陶芸家バーナード・リーチの作品にも通じ、シンプルな構成ながらもカエルをめぐるシンボリックな意味を伝えている。

 対象をデフォルメして平面化する手法で描かれた、誰にとってもわかりやすい動物のモチーフは、紙を重ねてオイルパステルで色づけすることによって得られる有機的な質感と、形のシンプルさとは逆に色のもつ深さを表現するその巧みな色彩感覚で、観る者を芸術の根源へと誘ってくれる。

写真協力:翠波画廊 http://www.suiha.co.jp

100年カエル館/カエ~ル大学はこちらから http://kaeru-kan.com/kayale-u/

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