発見された一茶のカエルと文字のカエル
「羽根生へて な虫はとぶぞ 引がへる」
昨年2009年に発見された小林一茶の句、2句のうちの一句である。一茶は、エサ捕獲の絶好のチャンスに身構えるヒキガエルを見ているのだろうか。
一茶の句のなかでも特に知られた「痩蛙まけるな一茶是に有り」以外にも、一茶は「蛙」や「引がへる」、「蟾(ひきがえる)」「蟇(ひきがえる)」「引蟇(ひきがえる)」など、カエルについて詠んだ句を多数遺している。
「引がへる」については、他に「云ぶんのある面つきや引がへる」「つくねんと愚を守るなり引がへる」があり、“もう一匹”仲間が増えたことになる。どの「引がへる」も、実物や写真などでヒキガエルを見たことがある者にとっては、「わかる、わかる」と共感できるイメージである。
ところで、皆さんは「書」を鑑賞する趣味はおもちだろうか。筆者はあまり親しんでいなかったのだが、昨年の4月からスタートし、今年4月まで全国を巡回している「第37回日本の書展」(主催 財団法人全国書美術振興会)の図録をいただき、改めて漢字やひらがなの美しさ、おもしろさに気づかされた。そして習性で“発見”してしまったのが、やはり一茶の「蛙」(写真)。
「青梅に手をかけて寝る蛙かな」 村上俄山(むらかみがざん)氏の作品である。
日頃、「カエルは言葉の生き物」と喧伝しているが、文字そのものに蛙の姿や蛙のいるシーンがそのまま表現されている作品に、蛙へのいとおしさが込み上げた。
村上氏は、広島を拠点に活動されている書道家で、現在、書道笹波会会長を務める。かなの制作やかなに関する活動に力を入れられている。素人目で恐縮だが、その力みのない筆の運動から生まれてくるような文字は、小林一茶の遊び心のあるものの見方に通じるように感じられた。
書のなかにもいろんなカエルがいると思うと、またまたカエルの世界が広がったようでうれしい。
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