« カエルツボカビのその後と日本のカエルへの影響 | トップページ | 「スキスキ大スキ!カエル展」をふりかえる »

エカテリーナ2世が注文したウェッジウッドのカエルの食器

101_1716 写真の、3匹の蛙の形をした脚に

支えられたガラス板の上に乗って

いるカエルは、ドイツのニンフェン

ブルク磁器である。ニンフェンベルク

磁器製作所は1747年に、バイエルン

の選帝侯マクシミリアン3世ヨーゼフ

によってミュンヘンに創設された。

 100年カエル館で所蔵する、このニンフェン

ベルク磁器のカエルは日本のアンティーク

ショップで見つけたものだが、実際、ヨーロッパ

にカエルグッズを探す旅に出ると、陶磁器の

カエルが私の目にはピョンピョンと言えるほど

飛び込んで来る。値段という、ジャンプの高さに

すべてを捕まえて帰れないのが残念だが・・・。

 西洋と東洋のカエルに対する感じ方の違いは

カエルを表現した絵や造形物を見ることで

何かしら伝わってくるものがある。中世の絵画

などでは魔女といっしょに蛙が描かれている

ものも多く、忌み嫌われるものだったのかなと

も思うがどうかわからない。

 そんなことを考えていると、カエルはまた別

の方向から飛び込んできてくれる。今年、

東京都庭園美術館を皮切りに4つの美術館

で開催された「エカテリーナ2世の四大ディナ

ーセットーヨーロッパ磁器に見る宮廷晩餐会」

でも”カエル”と出会うことができた。

 ロシアの女帝エカテリーナ2世(1729-1796)

が1773年にイギリスのウェッジウッド社に注文

した《グリーン・フロッグ・セルヴィス》がそれだ。

 セルヴィス(Service:セルヴィス(仏語)=

サーヴィス(英語))とは食器セットのこと。緑の

蛙のセルヴィスと名付けられた陶器製のその

食器セットには、どのアイテムにも蛙の絵の

入った楯形の紋章が描かれている。そして、

どのアイテムにもひとつとして同じ絵柄の  05small

ないイギリスの風景画が絵付けされている。

 この食器セットは、女帝が夏の郊外別邸に

向かう途上に滞在していた「ケケレケクシネン

宮殿」で使用するために注文したものらしい。                                                      

「ケケレケクシネン」とはその宮殿があった   

場所の通称で、フィンランド語で「蛙の沼」を

意味するという。

 だからといって、女帝がカエルが好きで

夏のヴァカンスを過ごす宮殿ではカエルの

マークが入った食器セットを使っていたと

単純に考えるわけにはいかないようだ。

 エカテリーナ2世が生きた時代のヨーロッ

パでは、各地の王侯同士が同じ文化や

価値観の土俵上で危うい外交バランスを

保ちながら、自らの力を顕示するために

競い合っていた。財政的な力、科学技術の

力、そしてすぐれた芸術を生み出す文化の

力が必要だった。磁器窯を切望する王侯

も多かった。

 また、この時代は「信仰から理性へ」「神

から人間中心へ」という意識が高まり、

教養人の間でイギリス的な自由主義が広ま

った。イギリスの風景式庭園が描かれた

《グリーン・フロッグ・セルヴィス》は、女帝に

とって庭園芸術に関する一種の挿絵付きの

百科事典でもあったという。

 ドイツ人として生まれロシアに嫁いだも

のの、短命に終わった夫の治世の後、

女帝に君臨したエカテリーナ2世は、磁器

セルヴィスを集め使いこなし、それまでの

ロシアにはない洗練された宮廷のおもてなし

マナーを確立した。そしてそれを他国の

君主に見せることは、自らの知的に開かれ

たセンスを力として披露する外交メッセージ

でもあったのだ。

 ドイツのマイセンをはじめヨーロッパの

有名な陶磁器の製作所の多くは18世紀

につくられている。冒頭に紹介したニン

フェンベルクもそのひとつ。

 カエルグッズが思いがけない歴史へと

導いてくれることもある。

(参考文献:国立エルミタージュ美術館所蔵

エカテリーナ2世の四大ディナーセット

ーヨーロッパ磁器に見る宮廷晩餐会の図録)

 04small

 

  

 

 

 

 

 

 

 

《グリーン・フロッグ・セルヴィス》より

ウェッジウッド、スタッフォードシャー(イギリス)

1773~1774年

Text,photos,The State Hermitage Museum,

St.Petersburg,2009

100年カエル館・カエ~ル大学はこちらからhttp://kaeru-kan.com/kayale-u/

 

 

 

|

« カエルツボカビのその後と日本のカエルへの影響 | トップページ | 「スキスキ大スキ!カエル展」をふりかえる »

文化・芸術」カテゴリの記事