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2009年9月

木のカエルが導く世界

                                         100_2035

  今年8月に学芸員研修を受けた、

会津若松にある福島県立博物館を

このシルバーウイークに再び訪れた。

 同館の専門学芸員の佐々木長生

氏に福島県の民俗とカエルについて

お話を伺うためだ。日頃、カエルの

ことを考えられることはほとんどない

にも関わらず、こちらの無理なお願い

にいろいろと文献資料を出してくださった。

 佐々木さんは平成19年に福島県立

博物館と鹿児島県歴史資料センター

黎明館との共同企画による展示「樹と

竹ー列島の文化、北から南からー」で

「北の日本」の樹の文化を担当し、高い

評価を受けている。

 残念ながら私は観ていないのだが、

月刊誌『博物館研究』に掲載されたその

企画展の報告文を読ませていただき、

改めてその企画テーマに心躍るものが

あった。

 南北に長い日本列島は、地域によって

植生も木で作られる生活道具も微妙に

ちがっている。さらにその木の文化は、

日本を越えて東北アジアや東南アジアに

つながっているというダイナミズムがある。

 そして、100年カエル館においても、

日本が育んでいる木の文化がカエルの物

づくりにも表れていることに気づいた。日本の

各地の伝統工芸のカエルに木の素材感が

生かされたもののなんと多いことか。

 北海道の樫やエンジュ、喜多方の桐、

日光の杉、筑波の欅(ケヤキ)、飛騨高山の

櫟(イチイ)、鹿児島の柘植(ツゲ)、その他、

竹製品や蔓(ツル)で編んだもの、また塗料を

使ったものではコケシや蒔絵、江戸独楽もある。

 さらに木のカエルは、バリ島(インドネシア)や

タイのウッドカービング、インドの工芸品、ベトナム

の楽器、ロシアのマトリョーシカなどにも見られる。

それに対して、欧米のカエルの物では、子どもの

ための木のおもちゃが少しあるくらいで、置物や

装飾品、生活雑貨などへの広がりは感じられない。

 ざっと見回しての大雑把な感想だが、日本やアジア

の人々と木の関わりの深さが、木のカエルを通して

も感じることができる。

  

 

 

 

 

 

 

 

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両生類誌とカエル博士

100_1013  蛙やサンショウウオなど両生類について調査

研究している人々が、共通のテーマで情報交換

をする研究会に「日本両生類研究会」がある。

そして同会が編集発行している会誌が

「両生類誌」であり、私もこれまで何度か寄稿

させていただいた。

 私でも寄稿できるということで、かなりオープン

な会誌と思われるかもしれないが、基本的には

両生類に関する自然史的な研究報告を中心と

した専門的な論文で構成されている。

 そんな会誌に、カエルグッズの蒐集という、

両生類についての研究というにはあまりに人間

に偏ったテーマを扱う私が、寄稿するきっかけは、

同会の初代会長、動物学者の故岩澤久彰先生

との出会いだった。

 先生は10年ほど前、それまで勤められていた

新潟大学を退官されたばかりの頃に、100年

カエル館を始める前のわが家を訪ねてくださっ

た。父の旧制中学の同窓で、弘前大学の学長を

務められた故手代木渉先生と岩澤先生がお知り

合いだった。科学者としてカエルを素材に研究し

ながら趣味でカエルグッズも集められていた先生

は、喜多方の骨董店を訪れたときにわが家の

カエルグッズコレクションのことを耳にされたらし

い。それがたまたま手代木先生の知り合いだった

というわけだ。

 私たち姉妹がカエルグッズを集めるようになっ

たのは祖父の影響だが、カエル文化のようなも

のを仕事にするようになったのは岩澤先生の

存在が大きいと思っている。

 先生は発生や内分泌の研究の材料として

カエルと出会い、カエルと共に生き、カエル

グッズさえもいとおしいと感じて集めるように

なり、晩年は環境ホルモンのカエルに与える

影響などを研究され、カエルが暮らしにくく

なった自然環境の変化に危機感を抱いて

おられた。

 先生が亡くなられた2年後の2008年が「国際

カエル年」という、カエルを絶滅や減少から救う

キャンペーンが行われたのも、カエルを心配

する先生の思いがいまだ強いからと思えて

ならない。

 私たちは”カエルに詳しい企画業者”として

さまざまな国際カエル年イベントに関わらせて

いただいた。最近発行されたばかりの両生類誌

最新号(No.19)では、その報告をしている。

 また、両生類誌には先生の遺志を継ぐ研究者

の方々の論文などが掲載されているので、カエル

や両生類についてより深く研究されたい方や

専門的に学びたい学生の方々などにぜひ読んで

いただきたい。

 そして私は難しい論文の合間にちょっと一

呼吸ついてもらえるようなカエルのエッセイを

これからも寄稿させていただきたいと思って

いる。

※「両生類誌」にご興味のある方は

100年カエル館までご連絡ください。

TEL03(3981)6985

 

 

 

 

 

 

 

 

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