1996年 大人の女のベクトル(映画 特集テーマ)
<特集・映画/大人の女の原則>
映画で探るあなたの大人の女へのベクトル
高山ビッキ・文
“大人の女”のイメージを追求するとしたら?こんな「大人の女座標軸」を傍らにおいて、映画作品を見ながらあなただけの大人への道を模索してはいかがでしょう。X軸で<母性>対<父性>、Y軸で<プリティ>対<セクシー>を捉え、その2軸が交差するところに、まさに現代の「スーパー・アダルト」が見えてきます。
●プリティ・ママ
今も昔もいるかわいいお母さん、
プリティ・ママは大人の定番
比較的古典的なイメージで、なじみやすいのがこの「プリティ・ママ」。映画「潮風のいたずら」で記憶喪失のまま<母性>にめざめていく女性を演じたゴールディ・ホーンの<プリティ>ぶりはいち押し。
どこかヌケてて、ドジで、時々明るくヒステリックしちゃう。それでいて愛情豊かで、なかなか表面には出さないけれど本当はすごく賢かったりする。きっと子供と接することで育っていく、大人の知性の表現が、この「プリティ・ママ」なのだと思う。
また、映画「フォレスト・ガンプ」や「マグノリアの花たち」などで母親の良心ともいえる女優はサリー・フィールド。そのあたたかで日向の香りのする母親の感じも「プリティ・ママ」が見せる大人のイメージである。プリティ・ママの生きざまを追求してみては。
●ボーイッシュ・アダルト
ボーイッシュ・アダルトのキュートな知性
どこか大人になりきれない部分を残しながら、それでもやはり大人になろうと努力することで、その揺らぎがストイックな雰囲気の気品を生じさせてしまったようなタイプ。アネット・ベニング、ダイアン・キートンなどがこのタイプ。
ウォーレン・ビティと共演した作品「めぐり逢い」のアネット・ベニングのはかなげな美しさは、大人ならではの可憐さ。身をひきつつ、しかし本当に大切なものは心の中で守り続ける。それがこのタイプの身上である。
またダイアン・キートンと言えば、マニッシュなスタイルを自分らしく着こなしてしまうのが印象的。映画のワンシーンで、企画書を書いたり、イラストを描いたりするときの手の動きがすてき。少女っぽさに欠けるなと思う人は、この<父性>×<プリティ>の魅力を追求することで、あなたらしい大人の道が切り開けるかも。
●アンドロジナス・セクシー
クールビューティな大人の魅力
<父性>的で<セクシー>という、何やら妖しい雰囲気をもつこのタイプは、いわば先端の大人の女である。
筆頭にあげたいのは何といっても「氷の微笑」でバイセクシャルを演じたシャロン・ストーン。「スペシャリスト」の冒頭シーンでは、電話の声の存在感だけでシルベスタ・スタローンを誘導していく。その声が低くてセクシー。また、「クイック&デッド」では、戦う女を演じるが、同じタフネスでもスーザン・サランドンやジェシカ・ラングとちがい、ナイフのようなクールさが「アンドロジナス・セクシー」ならでは。
このタイプで他にあげられるのは、「エイリアン」のシガニー・ウィーバー、「ターミネーター」のリンダ・ハミルトン、「ブレード・ランナー」のダリル・ハンナ、そしてシャロン・ストーンを有名にした作品が「トータル・リコール」となるとこのタイプはSFが似合う大人の女である。
●タフ&セクシー
大地のようにすべてを包み込む
女性原理のタフ&セクシー
<母性>のおよぼす影響力の範囲が広すぎる、というのが、つまり、女性原理そのものの大地のような存在である。「プリティ・ママ」とちがい、<セクシー>の要素をもつためか、時に、母親として逸脱することもしばしば。その部分も含めてやはり<母性>の人である。
典型は何度といってもジェシカ・ラング。「ロブ・ロイ」では、愛する夫と娘たちを守るために体を張って生き抜く、あっぱれなほど強い母親役を熱演。「ブルー・スカイ」ではあんまりにも男好きで、夫と子供をハラハラさせるのだが、最後はやはり<母性>のままに戦う。相手役も相当度量のある人じゃないと務まらない。ちなみに実際のパートナーはサム・シェパードである。
他に、「激流」で体力をつけみごとに川下りをしたメリル・ストリープも、この「タフ&セクシー」に加えたい。
●スーパー・アダルト
スーパー・アダルトの
どうやっても割り切れない魅力
代表格にプッシュしたいのが、スーザン・サランドン。映画「依頼人」では、アル中のため離婚して子供も失う<母性>失格者であったものの、弁護士という論理で勝負する<父性>を身につけ、事件に巻き込まれた一人の少年を救う。でも少年に対する眼差しはあくまでも<母性>的だった。
また、映画「ぼくの愛しい人だから」は、大人の女の<プリティ>と<セクシー>で、年下の男と結ばれるストーリーだが、実際のパートナーも年下。役者としてその才能が高く評価されているティム・ロビンスである。二人の間に<父性>の対等感があるのが大人の風格。
イメージ的には、ミシェル・ファイファーやキム・ベイジンガーもこのタイプ。またキャサリン・へプバーンなどいくつになっても現役で、若者にさりげなく示唆できる大女優は、<スーパー・アダルト>として敬意を表したい。
(1996年4月ファッション専門店PR誌掲載)
※この文章は高山ビッキが1996年に企業のPR誌に執筆したものをほぼそのまま掲載しております。無断転載を固く禁じいたします。 ※本サイトへのお問い合わせはケーアンドケーまで03(3981)6985
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