映画に住みたい

2012年7月15日 (日)

2001年 グッドナイト・ムーン(映画に住みたい)

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「グッナイト・ムーン」

実母の伝統と継母の先端、子どもが求めたふたつの愛

高山ビッキ・文

“離婚先進国”ともいえるアメリカの人々と家族の話をすると、とてもさりげなくステップファザーやステップマザー(継父や継母)の事が出てくる。

日本もあとを追っている傾向はあるので、その家族関係の話題に戸惑いつつも、新しい家族のあり方として定着している様子に希望が感じられる。

この映画は、その原題が『STEP MON』。ジュリア・ロバーツ演じる継母とスーザン・サランドン演じる実母が子どもをめぐって葛藤を繰り返した果てに、広い意味で“ひとつの家族”になる話だ。年齢も趣味もちがう2人の女性の住まい方のちがいも興味深い。

ファッション・フォトグラファーでもある継母が子どもたちの父親と暮らす家は、NYのど真ん中にある石造りの高級マンション。パイプの階段が上下階をつなぐ機能的で開放的なメゾネットタイプで、リビングスペースには重厚感のある家具を置き落ち着きを演出している。

一方NY郊外の自然に囲まれた実母の家は、ドアや円柱の白と下見板のグレーの組み合わせの外観に気品と伝統を感じさせる大きな家。子どもたちとの思い出もキルトに綴ったり、知的なアメリカ女性の暮らし方はさまざまな面で参考になる。

■「グッドナイト・ムーン」(日本公開1999年) 監督:クリス・コロンバス 脚本:ジジ・レヴァンジー 出演:ジュリア・ロバーツ スーザン・サランドン エド・ハリス 製作国:アメリカ

(20014月住宅メーカーPR誌掲載)

※この文章は高山ビッキが2001年に企業のPR誌に執筆したものをほぼそのまま掲載しております。無断転載を固く禁じいたします。 ※本サイトへのお問い合わせはケーアンドケーまで03(3981)6985

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2012年7月13日 (金)

2000年 ジョー・ブラックをよろしく(映画に住みたい)

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「ジョー・ブラックをよろしく」

人生を語るに足る邸宅

高山ビッキ・文

その人の建てた家はその人の人生そのものを物語る。アンソニー・ホプキンス演じる人生の成功者パリッシュは、アメリカのメディア王である。

この映画の主な舞台となっているのは、NYのフィフス・アベニューにある彼のペントハウスと近郊にある別荘だが、特にこの別荘に見応えがある。それはもちろん豪華極まりないのだが、その人の人生を語るに足る豪華さにしつらえてある。

良質な報道番組をつくり続けてきた自負を持つパリッシュの建てた別荘(元上院議員の92000坪もある邸宅で撮影)は、実際、ヨーロッパの職人たちが16年もの歳月を費やして造ったというだけあって、玄関ホールの手のこんだ装飾がほどこされた階段、大理石の暖炉はもちろん、壁やドア、床などの何気ない部分のつくりがすばらしい。

建物や家具・調度品は重厚さを感じさせるが、映画で美術鑑賞も楽しめるほど色々と、室内や廊下に掛けられた絵画はモダン・アート系が多い。メディア王ならではの見識がそこに現れている。

しかし、そんな人生の成功者にも容赦なく“死”は忍び寄る。彼を迎えに来た“死に神”こそブラッド・ピット扮するジョー・ブラック。彼はパリッシュと過ごし、その娘スーザンに恋することで“生きること”の去りがたい美しさを知る。

■「ジョー・ブラックをよろしく」(日本公開1998年) 監督:マーティン・ブレスト アラン・スミソー 脚本:ロン・オズボーン ジェフ・レノ ボン・ゴールドマン ケヴィン・ウェイド 出演:アンソニー・ホプキンス ブラッド・ピット クレア・フォラー二 製作国:アメリカ

(20007月住宅メーカーPR誌掲載)

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1999年 ピーターズ・フレンズ(映画に住みたい)

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「ピーターズ・フレンズ」

英国貴族の友人の家に招かれるとしたら…。

高山ビッキ・文

1本の映画を二度楽しく見る方法は、一度目はふつうにストーリーを追い、二度目は時々早送りしながら舞台になっている家の様子だけを楽しむ。

その家が単なるセットではない本物感があると、この二度目の楽しみはかなり見応えのあるものになる。ということで、今回“おじゃま”したのは、たぶんロンドン郊外あたりだろうか、イギリスの貴族のお屋敷。

ホテル並みの部屋数をもつその家には、両親亡き後、その家を売るつもりのピーターが一人で暮らしている。ある年のニューイヤーシーズン、彼は学生時代の友人たちを招待するが…という、いわゆる「再会もの」に括られる作品。

屋敷の中は、外観の威風のわりには質実な趣があり、調度品などは木製のシンプルなものが多い。各部屋のカーテンはそれぞれパターンがちがう花柄だがイギリス人の家らしい、いずれもウイリアム・モリス調の素朴なイメージである。

二度目の鑑賞は、この家で自分もピーターのもてなしを受けた気分になれるかも。

■「ピーターズ・フレンズ」(日本公開1994年)  監督:ケネス・ブラナー 脚本:マーティン・バーグマン リタ・ラドナー 出演:エマ・トンプソン スティーヴン・フライ ケネス・ブラナー ヒュー・ローリー 製作国:イギリス

(199910月住宅メーカーPR誌掲載)

※この文章は高山ビッキが1999年に企業のPR誌に執筆したものをほぼそのまま掲載しております。無断転載を固く禁じいたします。 ※本サイトへのお問い合わせはケーアンドケーまで03(3981)6985

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2012年7月12日 (木)

2000年 大いなる遺産(映画に住みたい)

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「大いなる遺産」

廃墟が語る家の物語

高山ビッキ・文

廃屋というのは、いわば個人住宅の遺跡である。

日本のように土地が狭く、スクラップ&ビルドを繰り返すところではあまりお目にかかれないが、たまに発見すると、人けのない家にも周囲と同じような季節がめぐってきていて、止まってしまった時間と移り変わる季節とのギャップに、いっそう家の物語へのイマジネーションがかき立てられる。

この映画にも、フロリダにあるほとんど廃墟と化した邸宅が象徴的に出てくる。魅力のある廃墟にはそこに住んでいた一族が絶頂期を境にある悲劇に見舞われるなどして姿を消した…、といった物語が見え隠れする。

そして建物自体に限りない魅力があり、往々にしてそこは子どもたちの想像力を刺激する場所となる。アルハンブラ宮殿を模したそのエントランスには噴水があり、テラスはそのまま海に面している。

廃屋ゆえに野趣に溢れているところがまた魅惑的だ。この家で、運命を翻弄し合う男女は幼い頃に出会った。19世紀を代表するディケンズの名作をアメリカを舞台に映画化した作品である。

■「大いなる遺産」(初公開1998年) 監督:アルフォンス・キュアロン 脚本:ミッチ・グレイザー 出演:イーサン・ホーク グウィネス・パルトロー 製作国:アメリカ

(20004月住宅メーカーPR誌掲載)

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2002年 めぐり逢えたら(映画に住みたい)

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「めぐり逢えたら」

カントリーとモダンはめぐり逢えるだろうか。

高山ビッキ・文

一口にアメリカ、アメリカ人と言っても、広大で多種多様である。昨今、日本人大リーガーが増え、アメリカ各地を拠点に活躍する彼らを通してNYやハリウッドだけじゃないアメリカの情報も身近に感じられて、おもしろい。

さて、この映画には、アメリカの2つの都市が出てくる。昨年、同時多発テロという悲劇に遭いながらもそこに住む人たちの人情が伝わったNY、新庄選手の活躍も話題のひとつとなった。そしてイチロー選手の大活躍で一気に日本ツウを増やしたシアトル。

シアトルに住むサム(トム・ハンクス)とボルチモアに住むアニー(メグ・ライアン)が往年の映画『めぐり逢い』よろしくNYのエンパイアステートビルディングで、運命のマジックに操られるようにめぐり逢う。

映画自体はそこまでのハッピーエンドで終わるが、インテリアイメージによる、その後を想像してみた。建築家であるサムの家はいわばイタリアンモダン。そして編集者のアニーの家はブリティッシュカントリー調。二人が結婚した場合、2つのイメージはどう折り合いをつけるのだろうか。

ハッピーエンドの次に問題になるのは、そんなライフスタイルも含めた相性ということになるのだろう、きっと。

■「めぐり逢えたら」(日本公開1993年)  監督+脚本:ノーラ・エフロン 出演:トム・ハンクス メグ・ライアン リタ・ウィルソン ロージー・オドネル 製作国:アメリカ

(20021月住宅メーカーPR誌掲載)

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2001年 マグノリアの花たち(映画に住みたい)

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「マグノリアの花たち」

人と人の絆に井戸端スペースは欠かせない

高山ビッキ・文

アメリカ南部には伝統的な建築様式の住宅が根づいている。ニューオリンズなどの南部の住宅街がどっしりと落ちついた印象を与えるのはそのためだろう。

この映画の冒頭では、まさにそうした南部の伝統スタイルの家の外観が何カットも映し出される。

そしてジュリア・ロバーツ演じる、ある一家の娘が嫁ぐ日から物語は始まるが、自宅の開放的な広い庭でウエディングパーティが開けてしまうのは、日本人には羨ましいかぎり。

この映画からはコミニュケーションの場としての空間のあり方を学ぶことができる。リビングはその広々とした庭と境界があいまいなほどオープンで、やんちゃなボーイズが駆け回っている。

里帰りした娘が母親に打ち明け話が出きるのはキッチンだ。明るい茶色の木と煉瓦でコーディネートされたアイランド式のキッチンで、母親は家事をしながらカウンター越しに話す娘の切ない決心を聞く。

演技派の女優たちに支えられてジュリア・ロバーツが大女優になるきっかけとなったこの作品は、人生の喜怒哀楽を超えて時が過ぎ行く摂理を淡々と温かく描く。この映画で、美容院が井戸端スペースとなっているように、ただ話を聞いてくれる人のいる“かけこめる場”が身近にあればそれだけで幸せなのかもしれない。

■「マグノリアの花たち」(日本公開1990年) 監督:ハーバード・ロス  脚本:ロバート・ハーリング 出演:サリー・フィールド ジュリア・ロバーツ シャーリー・マクレーン ダリル・ハンナ 製作国:アメリカ

(200110月住宅メーカーPR誌掲載)

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2000年 鳩の翼(映画に住みたい)

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「鳩の翼」

恋物語に涙するか、アンティーク物語にときめくか。

高山ビッキ・文

アンティークの家具やインテリアにはイギリスのものが多いが、この映画は1910(エドワード朝時代)“動くアンティーク・カタログ”と言っていいほどアンティークの家具や雑貨、ファッション好きにはたまらない作品だ。

原作は小説界のシェークスピアと言われるヘンリー・ジェイムズ(18431916)。

話自体は時代の変わり目に没落していくイギリスの貴族が、サバイバルを懸けて仕掛ける恋物語といった感じで、現代の日本人には理解しかねる部分もあるが、当時のヨーロッパは日本贔屓だったようで、二人のヒロインのファッションにはジャポニスムの影響が窺える。屏風も寝室のインテリアとして取り入れられている。

また男女3人が恋を散らせる旅先のヴェニスの屋敷は、ジェイムズがこの作品を書いたまさにその場所だそうだ。

■「鳩の翼」(日本公開1998年) 監督:イアン・ソフトリー 脚本:ホセイン・アミ二 出演:ヘレナ・ボナム=カーター 製作国:アメリカ、イギリス

(20001月住宅メーカーPR誌掲載)

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2012年7月11日 (水)

1999年 隣の女(映画に住みたい)

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「隣の女」

高山ビッキ・文

隣に引っ越してきた女が昔の恋人だったことから恋心が再燃し…、とストーリーはソープオペラ的だが、トリフォー監督らしい知的な味つけと、パリ郊外のフランス人の暮らしぶりの演出がいい。

ジェラール・ドパルデュー演じる男の家も、ファニー・アルダン演じる隣の女の家も外観は石造りだが、内装は木の風合いそのままの家具やインテリアでコーディネートされている。

絵画の飾り方やごくシンプルなライトの用い方など、改めて見直したくなる洋風生活スタイルの基本がある。

■「隣の女」(日本公開1982年)監督:フランソワ・トリフォー   脚本:フランソワ・トリフォー  シュザンヌ・シフマン ジャン・オーレル出演:ファニー・アルダン ジェラール・ドパルデュー製作国:フランス

(19994月住宅メーカーPR誌掲載)

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1999年 インテリア(映画に住みたい)

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「インテリア」

完璧なインテリアコーディネートにご用心

高山ビッキ・文

タイトルどおり、この作品は導入から映し出される室内のインテリアがドラマの展開を物語る。

その室内装飾はインテリアデザイナーである、この家の母親の手によるもの。NY州ロングアイランドの海の見える家はみごとに抑制の効いた色調で整然としつらえられている。

登場する家族もまたシックな着こなしで、すべて完璧にコーディネートされている。が、破綻は精神や人間関係のなかに起きている。

後に、父親が再婚すると言って連れてきた相手は、この家族にもこの家の雰囲気にもそぐわない原色のドレスを着て明るく振る舞う、おおらかな女性だった。しかし、その異質さこそがこの家族を救う。

一寸のすきまもなく統一された空間、そして人間関係は息苦しいものかもしれない。

■「インテリア」(初公開1979年)監督・脚本:ウッディ・アレン出演:ダイアン・キートン ジェラルディン・ペイジ EG・マーシャル 製作国:アメリカ

(19997月住宅メーカーPR誌掲載)

※この文章は高山ビッキが1999年に企業のPR誌に掲載したものをほぼそのまま掲載しております。無断転載を固く禁じいたします。※本サイトへのお問い合わせはケーアンドケーまで03(3981)6985

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2000年 愛がこわれるとき(映画に住みたい)

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「愛がこわれるとき」

雑然を楽しむ幸福

高山ビッキ・文

アメリカ映画では、今どんな家に住んでいるかが、その人の地位的なものは言うまでもなく、精神状況までも映し出す重要な表現になっている。

ジュリア・ロバーツ演じるヒロイン、ローラは投資コンサルタントとして成功しているビジネスエリートの妻である。そして、その家はたぶんロングアイランドあたりの海辺に建てられたスーパー・モダンな白い家。

開口部がこれでもかというほど大きく、家全体をぐるりと取り囲んでいるのにちっとも明るくないのは、その夫婦関係のためである。

独占欲が強く、潔癖症の夫からの虐待に怯える日々。ついに、ある日、溺死したと見せかけて夫のもとを脱出することに成功したローラ。

アイオワの田舎町で一軒家を借り新しい生活を始めるが、夫との生活では、バスルームのタオルの掛け方、キッチンの戸棚の中の缶詰の並べ方まで整然とさせることを強要されてきただけに、新しい生活ではあえてそれを崩すことをまず楽しむ。

家事や掃除が決して嫌いなわけではなく、「雑然」の状態を幸せと感じ楽しめるというのもセンスのひとつかもしれない。

■「愛がこわれるとき」(日本公開1991年)監督:ジョセフ・ルーベン脚本:ロナルド・バス出演:ジュリア・ロバーツ パトリック・パーギン ケヴィン・アンダーソン 製作国:アメリカ

(200010月住宅メーカーPR誌掲載)

※この文章は高山ビッキが2000年に企業のPR誌に執筆したものをほぼそのまま掲載しております。無断転載を固く禁じいたします。※本サイトへのお問い合わせはケーアンドケーまで03(3981)7985

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