「蛙化現象」と守護神のカエル/かえるモノ語りー自然と文化をつなぐカエル84「ほっと・ねっと」2023年12月
かえるモノ語り~自然と文化をつなぐカエル84
<これからの季節、「蛙化現象」に気をつけて。>
高山ビッキ(100年カエル館)
12月のはじめに発表された2023年ユーキャン新語・流行語大賞のベストテンに選ばれた「蛙化現象」。数年前から言われ始めた言葉ですが、今年は女子高生の間で話題になったことで、「カエル関係者」としては一昨年の「かえる愛」に続く栄えある「カエル」のベストテン入りとなりました。
男性にとっては微妙な言葉で、女子は振り向かせたいと思っていた相手が振り向いたとたんに嫌いになったり、つき合い始めた男性のちょっとした行動で急に冷めたりする現象と捉えられています。
そうした女性の心の移ろいやすさや感情の振れ幅の大きさは古く「女心と秋の空」(元々は「男心と秋の空」とも)と言われ、今に始まった現象ではなく、英語圏では女性心理を表現する同様の言葉は「蛙化現象」とは無関係の「ICK(イック)」と呼ばれているそうです。
それが今なぜ日本では女子高生など若い女性に「蛙化現象」と呼ばれているのでしょうか。
思い至るのは「グリム童話」で知られる「カエルの王さま」です。この物語の中に登場するお姫様は、魔法でいわば「蛙化」した状態の王子様を嫌い冷たくしますが、嫌悪感が頂点に達してそのカエルを壁にたたきつけたところで魔法が解けてカエルは「王子化」、元の王子の姿に戻って物語は二人が結婚するハッピーエンドを迎えます。
一方、日本には「うばっ皮」という民話があり、カエルが蛇から救ってくれた娘に恩返しするために、かぶるとカエルのようにしか見えないうばっ皮を贈り娘の旅の途中の安全を守ります。いわば「蛙化」していた娘が、最後はそのうばっ皮を脱いで美しい姿に。幸せな結婚をするシンデレラストーリーとして語られる場合もあります。
洋の東西を問わず民話や童話には子どもに読み聞かせするお話の中に、少女が大人の女性へと成長する過程で起り得る心理的な変化や、遭遇するかもしれない危険なことが紛れ込んでいることがあります。
それを「蛙化現象」と名付けたことで、現代の若い女性たちも自らの深層心理を知り、またはそれを乗り越えることで大人になるためのきっかけにしているのかもしれません。
カエルは巡り巡って女性たちの守護神の役割を担っていると言えそうです。
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