地を這うヒキガエルが海に向かう理由/かえるモノ語りー自然と文化をつなぐカエル75「ほっと・ねっと」2023年3月
<地を這(は)うヒキガエルが海に向かう理由>
高山ビッキ(100年カエル館)
最近、海とカエルについて考える機会がありました。
カエルグッズを集めていると、貝細工のカエルと出合うことがあります。貝は川にも棲息していますが、カエルの貝細工の多くはハマグリやアサリなど海の貝を使ったものが多く、観光地の土産物になっています。海辺で採集した貝を素材に何か作ろうと思ったときに、擬人化しやすいカエルが適していたのかもしれません。
生物学的には、塩水が苦手で、海岸域には不向きとされているカエル。ところが最近、そんなカエルを含む両生類が、沿岸域や汽水域(海水と淡水の中間にあたる水域)で観察される報告が増えています。
この現象に関しては2018年に喜多方で開催した日本両生類研究会の自然史フォーラムでも、秋田両棲類研究会の木村青史氏が報告しましたが、木村氏はその後も調査を続け、今年1月に発行された『両生類誌No.35』でも、詳しい調査結果を報告しています。
その報告の中で特に興味深かったのは、「海岸や汽水域で確認された両生類の確認地点数」で最も多いのがニホンアマガエルで、次が外来種のウシガエル、そしてその次はアズマヒキガエルだったことです。
20世紀に日本にやってきたウシガエルは別にして、ニホンアマガエルもアズマヒキガエルもアマガエルやヒキガエルとして日本で馴染み深いカエルですが、日本列島が大陸と切り離されて成り立った頃までさかのぼれば、時に海水を泳いで大陸から移動してきた可能性(それを記憶した遺伝子)もないのではないかと思ったからです。
アズマヒキガエルに至っては、両生類研究会の野村卓之氏によると、2000年に、新潟市の四ツ郷屋海岸の砂浜を移動して海に入っていく成体が確認され、何度か陸に戻しても再び海に入っていったことが観察されています。
万葉集ではタニグクという言葉で、その「さ渡る極み」(=地の果て)まで知り尽くしている知恵者とも考えられたヒキガエル。そのヒキガエルがここへ来て、何ゆえ海をめざしているのかと思うと、その理由をあれこれ想像せずにはいられません。
最近、海から川に紛れ込んだクジラも話題になりました。人よりも先に地球の変化を感知する生きものたち。海とカエルの関係は、地球全体にかかわる大きなテーマにつながっているのかもしれません。
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<関連サイト>
「100年カエル館」 http://kaeru-kan.com
「カエ~ル大学」http://kaeru-kan.com/kayale-u
カエル大学通信 www.mag2.com/m/0001378531.html
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