カエルならどうする?逃げるが勝ち。/かえるモノ語りー自然と文化をつなぐカエル74「ほっと・ねっと」2023年2月
<カエルならどうする?逃げるが勝ち。>
高山ビッキ(100年カエル館)
今年のNHKの大河ドラマ「どうする家康」では、この原稿を書いている現在、松平元康(徳川家康)が今川氏と織田氏の間で「どうする?」の局面に立たされていますが、同時代の尾張国に戸部城主だったある武将がいました。
最初織田氏に従っていましたが、逆心をいだいて今川氏についた武将でもあったようですが、信頼できる史実は残っていません。
むしろその戸部城主の存在を後世に伝えることになったのは、写真の土製の郷土玩具「戸部の蛙」かもしれません。
こんな話が残っています。
「この城主は乱暴者で自分の行列の前を横切る人は容赦なく斬り捨てた。」
戸部という地名は今も名古屋市南区に町名として残っています。山崎川という川が流れていて、当時戸部城近隣一帯にはカエルが多く棲息していたのでしょう。
「ある日、一匹のトノサマガエルがその城主の目の前をピョーンと横切った。誰もが、斬られる、と思った瞬間、その跳ぶ速さに城主は心奪われ、カエルは斬られずに済んだ」と。
このときから誰言うともなく「山崎越えたら戸部戸部」と斬り捨てられた首が跳ぶのと、蛙が跳ぶのを掛けて揶揄する言葉遊びが流行り、いずれこの云われから瓦職人によって「(命拾いして)無事にカエル」の願いが込められた粘土のカエルが作られ、笠寺観音の参道で売られるようになったと伝えられています。
写真のような体長3~4センチの瓦土を手びねりして焼いた「戸部の蛙」が作られるようになったのがいつ頃からかはわかりませんが、みごとなのはその種類の多さ。
殿様蛙、雨蛙、赤蛙、ガマ蛙、相撲を取る蛙、親子蛙……等々、30種類はあり、昭和30年頃まで作られていたと云われています。
天敵を自ら攻撃する牙や爪などを持たないカエルは「逃げる」ことで生き延びてきた生きものです。そして家康も「逃げる」戦術を厭わなかった殿様と考えると、この「戸部の蛙」も存外家康のようであり、江戸時代らしい縁起物として流行ったのだろうと考えると楽しいものです。
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<関連サイト>
「100年カエル館」 http://kaeru-kan.com
「カエ~ル大学」http://kaeru-kan.com/kayale-u
カエル大学通信 www.mag2.com/m/0001378531.html
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