その姿にはちょっと哀愁もある、カエル好きのヒーロー。/かえるモノ語り-自然と文化をつなぐカエル65 「ほっと・ねっと」2022年5月号
<その姿にはちょっと哀愁もある、カエル好きのヒーロー。>
高山ビッキ(100年カエル館)
イギリスの絵本作家、ビアトリクス・ポター(1866_1943)。彼女の「ピーターラビット」シリーズは日本でもとても親しまれています。特に今年はその出版から120周年ということで、新訳の出版も始まりました。
同じシリーズには、「ミスター・ジェレミー・フィッシャーのお話」もあります。もしかするとよほどカエルに興味がある人でなければご存じないかもしれません。
ジェレミー・フィッシャーはカエルです。
モデルは、その姿形からすると、ヨーロッパに比較的多く棲息しているアカガエル系のカエルでしょう。
ずいぶん前のことになりますが、私はこのジェレミー・フィッシャーに会いたくて、ひとりイギリス北部の湖水地方にある、作者が後半生を過ごしたヒルトップ農場を訪ねたことがあります。
まだインターネットのない時代。そこで「ピーターラビット」に会えるのは確かでも、そこにジェレミーに関する資料展示やミュージアムグッズがあるかどうか、事前情報なしに向かったのですが……、会えました。
ジェレミーのグッズだけでも、オルゴール、陶磁器の置物、石けん、パズルなどいろいろあり、特に英国のフィギュアブランド「ボーダーファインアーツ」のジェレミー(写真)には、その精巧さに魅了され、今も100年カエル館のジェレミー・フィッシャーのコーナーで“センター”を取っています。
1906年に出版されたジェレミーの「お話」の中で、彼は夕食にカメやイモリの両生爬虫類界の名士を招待すべく、小魚を釣りに行きます。でも全然釣れず、大きなマスに飲まれそうになるなど散々な目に遭って、最後は友人たちにテントウムシ・ソースをかけたバッタのローストをごちそうします。
ジェレミーという名前には「悲嘆」という意味も込められていて、このお話を書いたときの彼女は私生活上とても辛いときにあったようです。
また、当時の欧米で、カエルの絵本が好意的に受け入れられるかどうかわからない状況を押し切っての出版でした。
結果は他の作品に負けない人気を博しました。
21世紀の現在も、世界のカエル好きにとって間違いなくヒーローです。
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<関連サイト>
「100年カエル館」 http://kaeru-kan.com
「カエ~ル大学」http://kaeru-kan.com/kayale-u
カエル大学通信 www.mag2.com/m/0001378531.html
※ブログ「高山ビッキBlog」http://kaeru-kan.cocolog-nifty.com/vikkiも配信中です。
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