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2022年6月

2022年6月28日 (火)

日本の湖水地方、猪苗代にすむというファンタジーのカエル。/かえるモノ語り-自然と文化をつなぐカエル66 「ほっと・ねっと」2022年6月号

<日本の湖水地方、猪苗代にすむというファンタジーのカエル。>

高山ビッキ(100年カエル館)

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 前回、本連載では『ピーターラビット』シリーズの絵本の一冊に登場する、カエルのジェレミー・フィッシャーを紹介しましたが、その舞台はイギリス北部の湖水地方でした。

 イギリスには“もう一人”ミスター・トード(ヒキガエル氏)というカエルが、ジェレミー・フィッシャーとだいたい同じ時代に描かれた、ケネス・グレアムの童話『たのしい川べ』の中で冒険を繰り広げます。こちらはイギリスのテムズ川付近の川べにすんでいます。

 ジェレミー・フィッシャーもヒキガエル氏も湖や川などの淡水にすんでいます。

 そして、猪苗代町にあるアクアマリンいなわしろカワセミ水族館は、福島県に棲息する淡水生物を展示紹介しています。ここでは水槽の生態展示で福島県の在来種のカエルを見ることができます。

 カエルは身近にいる生きものとは言え、日頃民家の庭などで出合うのは二ホンアマガエルぐらいだと思うのですが、同じ在来種でも、田んぼ、山中、渓流、樹上と、生息地の異なるカエルたちが、一堂に会したように集まる様子は壮観でさえあります。

 先日、同館を訪れたとき、居並ぶ在来種の中で特にその“キャラ”に惹かれたのはアズマヒキガエルで、ヨコを向いたまま、どうも隣のカエルの水槽のエサを狙っているようでした。

 その貪欲な食いしん坊ぶりは、『たのしい川べ』のヒキガエル氏に通じるものを感じました。

 また、カワセミ水族館の水槽をひとつひとつ見ていくと、絵本の中で釣りをするジェレミー・フィッシャーのゴムぐつを引っぱったゲンゴロウや、植物のアシの中にひそんでいる川ネズミがいて、まさにビアトリクス・ポターが観察して描いた、湖水地方の自然がそこに出現したようでした。

 やはりここは日本の湖水地方なのだ、と確信できた気がしました。

100年カエル館は、今年はこのカワセミ水族館で、コラボ企画の「カエル展」を716日から1127まで開催することになりました。

 ところで、日本では童話作家の石井桃子の翻訳で親しんだ人も多い『ジェレミー・フィッシャーどんのおはなし』ですが、一緒にイベントの準備を進めているカワセミ水族館のスタッフのお一人が、同姓同名の石井桃子さんだったことに、偶然とは思えないファンタジーを感じました。

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<関連サイト>

「100年カエル館」 http://kaeru-kan.com

「カエ~ル大学」http://kaeru-kan.com/kayale-u

カエル大学通信 www.mag2.com/m/0001378531.html

※ブログ「高山ビッキBlog」http://kaeru-kan.cocolog-nifty.com/vikkiも配信中です。

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その姿にはちょっと哀愁もある、カエル好きのヒーロー。/かえるモノ語り-自然と文化をつなぐカエル65 「ほっと・ねっと」2022年5月号

<その姿にはちょっと哀愁もある、カエル好きのヒーロー。>

高山ビッキ(100年カエル館)

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 イギリスの絵本作家、ビアトリクス・ポター(1866_1943)。彼女の「ピーターラビット」シリーズは日本でもとても親しまれています。特に今年はその出版から120周年ということで、新訳の出版も始まりました。

 同じシリーズには、「ミスター・ジェレミー・フィッシャーのお話」もあります。もしかするとよほどカエルに興味がある人でなければご存じないかもしれません。

 ジェレミー・フィッシャーはカエルです。

 モデルは、その姿形からすると、ヨーロッパに比較的多く棲息しているアカガエル系のカエルでしょう。

 ずいぶん前のことになりますが、私はこのジェレミー・フィッシャーに会いたくて、ひとりイギリス北部の湖水地方にある、作者が後半生を過ごしたヒルトップ農場を訪ねたことがあります。

 まだインターネットのない時代。そこで「ピーターラビット」に会えるのは確かでも、そこにジェレミーに関する資料展示やミュージアムグッズがあるかどうか、事前情報なしに向かったのですが……、会えました。

 ジェレミーのグッズだけでも、オルゴール、陶磁器の置物、石けん、パズルなどいろいろあり、特に英国のフィギュアブランド「ボーダーファインアーツ」のジェレミー(写真)には、その精巧さに魅了され、今も100年カエル館のジェレミー・フィッシャーのコーナーで“センター”を取っています。

 1906年に出版されたジェレミーの「お話」の中で、彼は夕食にカメやイモリの両生爬虫類界の名士を招待すべく、小魚を釣りに行きます。でも全然釣れず、大きなマスに飲まれそうになるなど散々な目に遭って、最後は友人たちにテントウムシ・ソースをかけたバッタのローストをごちそうします。

 ジェレミーという名前には「悲嘆」という意味も込められていて、このお話を書いたときの彼女は私生活上とても辛いときにあったようです。

 また、当時の欧米で、カエルの絵本が好意的に受け入れられるかどうかわからない状況を押し切っての出版でした。

 結果は他の作品に負けない人気を博しました。

 21世紀の現在も、世界のカエル好きにとって間違いなくヒーローです。

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<関連サイト>

「100年カエル館」 http://kaeru-kan.com

「カエ~ル大学」http://kaeru-kan.com/kayale-u

カエル大学通信 www.mag2.com/m/0001378531.html

※ブログ「高山ビッキBlog」http://kaeru-kan.cocolog-nifty.com/vikkiも配信中です。

 

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