土製の鉢の中に見つけた春と縄文のカエルの物語。/かえるモノ語り-自然と文化をつなぐカエル63 「ほっと・ねっと」2022年3月号
<土製の鉢の中に見つけた春と縄文のカエルの物語。>
高山ビッキ(100年カエル館)
今年の冬は全国的に例年以上に寒い日が多かったせいか、3月になり啓蟄からお彼岸に向かって少しずつ温かくなっていくことがひときわうれしく感じられました。今頃近くの田んぼや池では、この土製の鉢の中(写真)のように、卵から孵った(かえった)オタマジャクシたちが泳いでいるかもしれません。
そんな冬から春への季節の巡りは、縄文時代の人々も繰り返し感じていたことでしょう。近年、縄文文化に関する発掘調査やその研究報告、出版、博物館のイベントが増えています。新聞等メディアの報道でもさまざまな見解を読むことがありますが、文字で書き記されたもののない時代だけに、想像がかき立てられます。
縄文時代に対するこれまでの一般的なイメージとして、稲作が始まる弥生時代の前の、狩猟採集を中心とした時代。文化度が低く原始的な暮らしをしていたという認識があったとしたら、再考すべきことが多いのではないかという見解が主流にあるようです。
また、縄文文化といえば、日本の国土内だけで培われたイメージも少なからずあると思いますが、土器や石製の装飾品などの遺物の解釈などにより、大陸の諸文化との交流がまったくないとは考えにくいとも言われています。
たとえばこの、カエルの造形とオタマジャクシの絵の装飾が内側に施された土製の鉢は、私の父が中国で購入してきたもので特に古いものではありません。でも、中国で日本の縄文時代のはじまりと同じ頃に起こった仰韶(ぎょうしょう)文化には、やはり、器の内側に蛙が描かれた彩陶(さいとう)器があると知って、この鉢に古くから伝えられた文化の一端を感じました。
そして、以前、この連載でもカエルが描出された縄文土器、長野県曽利遺跡出土の通称「曽利の蛙」(蛙文・みづち文大深鉢)について書いたことがあります。まるでその装飾として浮彫されたカエルは現代のマグカップのカエルのデザインにも通じるキャラクター性がありました。
文字のない時代、土器に施された装飾は物語の表現である可能性もあると言われます。今後の縄文文化の研究の進展によって、大陸の文化と共通性があったかもしれない縄文土器、そこに記された「カエルの物語」が読み解かれる日を楽しみにしています。
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<関連サイト>
「100年カエル館」 http://kaeru-kan.com
「カエ~ル大学」http://kaeru-kan.com/kayale-u
カエル大学通信 www.mag2.com/m/0001378531.html
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