「蛙文字(かえるもじ)」が教えてくれた幸福の意味/かえるモノ語り―自然と文化をつなぐカエル58 「ほっと・ねっと」2021年10月号
<「蛙文字」が教えてくれた幸福の意味 >
高山ビッキ(100年カエル館)
渡辺弥七 画
福島県とカエルといえば、いわき市が「かえるの詩人」草野心平の出身地で知られ、当地に記念文学館があります。
そして三春町には、有名な滝桜の近くに「蛙さんの家」と名づけたアトリエで、自ら生み出した「蛙文字」を書き続けた渡辺弥七さんがいましたが、今年8月に88歳で逝去されました。
100年カエル館を開設する前のわが家にはすでに両親が「蛙さんの家」を訪ねて買い求めた「蛙文字」の色紙が壁に掛かっていました。
「蛙文字」は、漢字やかな文字の一点一画がさまざまなポーズの蛙の絵で描かれていて、言葉として読むことができます。でも描かれたーつひとつのカエルのポーズにフォーカスすると絵なのか文字なのか、不思議なアートでした。
100年カエル館では、渡辺さんに草野心平が独自の「蛙語」で書いた「ごびらっふの独白」を蛙文字で大きな布の上に書いていただいたことがありました。世界的な両生類保全キャンペーン「国際カエル年」が行われた2008年のこと。
日本動物園水族館協会との共催により、京王プラザホテル(東京・新宿)のロビーギャラリーで「カエルプラネットへようこそ」と題した展示イベントを行ったときでした。
蛙文字になった「るてえる びる もれとりり がいく」(日本語訳=幸福というものはたわいなくっていいものだ。)で始まる「ごびらっふの独白」は、蛙たちの歌に合わせて、文字の蛙たちが楽しく踊っているようでした
蛙が表現された日本の詩歌には、日本人の自然観がよく表れていて「カエル年」にふさわしいと考え、渡辺さんには他に松尾芭蕉の「ふる池や蛙飛びこむ水の音」と、小泉八雲によるその俳句の英訳、そして小林一茶の「痩せ蛙」の句を「蛙文字」にしていただき、ホテルロビーの大きな壁面に展示しました。
イベントは、終われば跡形もなく消える夢のような時間で、渡辺さんと「蛙文字」でご一緒した時間も、ご本人亡き後、楽しい思い出として煌めいています。
生前のご本人は、何万という蛙を一匹一匹描き続ける日々を送りながら、「幸福」の意味を伝えようとしていたのかもしれません。
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<関連サイト>
「100年カエル館」 http://kaeru-kan.com
「カエ~ル大学」http://kaeru-kan.com/kayale-u
カエル大学通信 www.mag2.com/m/0001378531.html
※ブログ「高山ビッキBlog」http://kaeru-kan.cocolog-nifty.com/vikkiも配信中です。
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