« かえるモノ語り―自然と文化をつなぐカエル㊻「ほっと・ねっと」2020年10月号“おうちギャラリー”で楽しむ「壁の国」のアリスとカエル | トップページ | かえるモノ語り―自然と文化をつなぐカエル㊽「ほっと・ねっと」2020年12月号 来年は丑年、「ウシとカエル」の寓話に願いを込めて。 »

2020年11月27日 (金)

かえるモノ語り―自然と文化をつなぐカエル㊼「ほっと・ねっと」2020年11月号 人々もカエルも宝満山に向かう理由

 人々もカエルも宝満山に向かう理由>

高山ビッキ(100年カエル館)

Photo_20201127154201

 コロナ禍にあって、空前の大ヒットとなっているアニメ映画『鬼滅の刃』。社会現象ともいわれるなか、主人公の名字と同じということで参拝者が増えている竈門(かまど)神社は、福岡県太宰府市の宝満山(ほうまんざん)(山頂に上宮、麓(ふもと)に下宮)にあります。

 そしてこの秋、もうひとつ話題になった、宝満山に見られる現象があります。829mのこの山の山頂をめざして登る1万~10万匹ともいわれるヒキガエルが太宰府市の市民遺産になったのです。

 麓の池で産卵したカエルの子どもたちが、オタマジャクシからカエルになって上陸して向かう先が宝満山の山頂。新聞報道等によれば、ここ10年ほどで確認されるようになった現象だそうです。

 諺(ことわざ)では向こう見ずな人たちの集まりのことを「カエルの行列」といいますが、行列をつくらないまでも、最近では毎年5月頃からこのカエルの集団移動が見られ、最終的には100から1000匹が約2ヶ月後に山頂に到達するのだとか。その山頂で大人に成長したヒキガエルは、数年後、麓の池に再び「無事かえる」ことができれば繁殖行動が可能になります。

 このようなヒキガエルの山登りは、専門家の方に伺ってもあまり報告のない事例のようです。修験道の修業の場としても知られる宝満山のこと、ヒキガエルたちも大人になるための修業を試みているのではないかと思えるほど。

 そして、太宰府といえば天神様、菅原道真。道真が大宰府で他界した後、その亡骸(なきがら)を引いている牛が急に動かなくなった場所がその墓所に定められた逸話があります。

 牛が天神様の使いとされる由来譚(ゆらいだん)ですが、カエル好きとしてはついついカエルと道真公を結びつけたくなり、磐梯山噴火記念館にもレプリカがある、紀元前の中国の科学者、張衡の地震計には蛙の造形が見られ、道真も興味をもっていたこと、道真を祀る全国の天満宮の建築の意匠に見られる蝦蟇(がま)仙人の彫刻など、道真と縁のあるカエルの遺物について紹介することがあります。

この秋、太宰府市の市民遺産になったヒキガエルが宝満山を登る理由は、きっと天神様を慕ってのことではないかと想像したくなります。

※画像では牛がシンボルの天神様に因んでウシガエルの置物をご覧いただいています。

<関連サイト>

「100年カエル館」 http://kaeru-kan.com

「カエ~ル大学」http://kaeru-kan.com/kayale-u

カエル大学通信 www.mag2.com/m/0001378531.html

※ブログ「高山ビッキBlog」http://kaeru-kan.cocolog-nifty.com/vikkiも配信中です。

|

« かえるモノ語り―自然と文化をつなぐカエル㊻「ほっと・ねっと」2020年10月号“おうちギャラリー”で楽しむ「壁の国」のアリスとカエル | トップページ | かえるモノ語り―自然と文化をつなぐカエル㊽「ほっと・ねっと」2020年12月号 来年は丑年、「ウシとカエル」の寓話に願いを込めて。 »

かえるモノ語り歳時記」カテゴリの記事