かえるモノ語り―自然と文化をつなぐカエル㊺「ほっと・ねっと」2020年9月掲載エッセイ
<満月の夜にカエルを探して>
高山ビッキ(100年カエル館)
今年の中秋の名月は10月1日でした。
さて、月に住んでいる生きものと言えば……。「ウサギ」を思い浮かべるのではないでしょうか。ところが、カエルが表現された古代の遺跡や神話などについて調べてみると「月にはカエルも住んでいる」と信じたくなります。
100年カエル館が2009年に休館して2016年に再開するまでの6年の間、私たちは他館やホールで展示イベントやシンポジウムを行ってきました。
2010年に東京・足立区にある善立寺ホールで開催したのは「秋のカエル文化シンポジウム」。そのプログラムに掲載したカエルの絵があります(図)。作家の故藤本義一氏の次女で、コラージュアーテイストのフジモト芽子さんに描いていただきました。
三日月の舟に乗ったカエルが月に向かっています。遠くに見える赤い円は太陽なのでしょう。
この時のシンポジウムのテーマ「月とカエルと女性」のイメージを現代作家が描いているわけですが、これに類するイメージはすでに古代人によって描かれています。
太陽のシンボル(日像(にちぞう))がカラスで、月のシンボル(月像(がつぞう))がヒキガエルとする神仙世界は、中国漢代のとある太后の棺の上に置かれた帛(はく)(=布)画にも、朝鮮・高句麗古墳の壁画にも、そして、日本の5~6世紀頃の福岡県珍敷塚(めずらしづか)古墳の壁画にも見られます。それはある時代まで、東アジアを通じて共有されていた世界観なのでしょう。
その神仙世界の基になっている中国神話に「射日神話(しゃじつしんわ)」があります。一度に10個の太陽が昇って日照りに苦しむ人々を、羿(げい)という名の弓の名人が9個を射落とし平常に戻して救います。
そのご褒美(ほうび)に羿が手にしたのは不老長寿の桃の実。しかし、これをその妻、嫦娥(じょうが)が持って月に逃げ、蟾蜍(せんじょ)(=ヒキガエル)になったという神話。日本でもカエルは不老長寿のシンボルと考えられています。
カエルが天地を行き来する存在であることは、東アジア圏の神話に見られます。日本で古くから知られる「かぐや姫」にもカエルの導きがあったとしたら……。そんな想像をしながら月を見上げてはいかがでしょう。
<関連サイト>
「100年カエル館」 http://kaeru-kan.com
「カエ~ル大学」http://kaeru-kan.com/kayale-u
カエル大学通信 www.mag2.com/m/0001378531.html
※ブログ「高山ビッキBlog」http://kaeru-kan.cocolog-nifty.com/vikkiも配信中です。
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