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2020年8月

2020年8月 2日 (日)

かえるモノ語り―自然と文化をつなぐカエル㊸「ほっと・ねっと」2020年7月掲載エッセイ

 <着ぐるみのカエルで舞い踊る、日本の伝統芸能>

 高山ビッキ(100年カエル館副館長)

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 カエルの着ぐるみで街を闊歩してみたいと思うことがあります。そんなことを無邪気にできる年齢ではないにもかかわらず……。

 これはカエル好きであれば「カエルになってみたい」とか、「あっカエルだ!」と言われたい衝動でしょうか。

 蛙のかぶりもので舞い踊ったり、演じたりする芸能は日本でも昔から見られたようです。

 私が知る限り古いものでは、平安時代の夏に行われた相撲節会(すまいのせちえ)において猿楽(さるがく)という芸能が披露されるなか、「大勢の猿楽者が蛙のかぶりものを着装して、各自めいめいが、思い思いの仕草を演ずる」舞台が繰り広げられたと、雅楽師の藤原孝道(1166~1237)の『雑秘別録(ざつびべつろく)』に記録されています(『日本の絵巻6 鳥獣人物戯画』より)。

 このようなカエルの登場する芸能にいたく衝撃を受けたのではないかと推察されるのが後白河天皇(1127~1192)です。同じ頃に描かれ始めた「鳥獣戯画」で、蛙がビンザサラというリズム楽器を持って舞い踊るシーンは、かぶりものの蛙たちによる芸能と結びつけられ、絵巻と後白河天皇の関係が語られることもあります。

 蛙のかぶりもの2つめ。昨年、江戸後期に京都で活躍した絵師の横山崋山(よこやまかざん)の展覧会が開催されました。その出品作品の中で思いがけない話題をさらったのが、崋山の弟子の小澤華嶽(おざわかがく)という絵師の作品「ちょうちょう踊り図屏風」。江戸後期に流行した風俗を描いた作品で、動物などのかぶりもので踊りに熱狂している庶民の様子が現代のハロウィンパーティのようだ、と。そこにはヒキガエルに扮している人の姿も描かれていました。

 そして、毎年7月7日の七夕の日に蛙のかぶりものが見られる祭りが、奈良県吉野町の「蛙飛び行事」(写真)です。

 この蛙の正体は、昔、神仏に暴言を吐いたことで罰が当たり大鷲に連れ去られて断崖絶壁に置き去りにされた男という設定。参道を山車に乗せられ進み、蔵王権現(ざおうごんげん)おわします金峯山寺(きんぷさんじ)蔵王堂(ざおうどう)で、僧侶の読経を神妙に受け止め、最後はその蛙の着ぐるみを脱いで人間の姿に戻るまでが演じられます。カエル好きならずとも一度ご覧いただきたい、伝統の奇祭です。

 吉野山といえば西行法師も愛した桜の名所。

 桜と蛙。今年の喜多方さくらまつりには、カエルの着ぐるみ姿を披露したかったのですが叶わず。もう少し待つことにします。

<関連サイト>

「100年カエル館」 http://kaeru-kan.com

「カエ~ル大学」http://kaeru-kan.com/kayale-u

カエル大学通信 www.mag2.com/m/0001378531.html

※ブログ「高山ビッキBlog」http://kaeru-kan.cocolog-nifty.com/vikkiも配信中です。

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