[カエル白書Vol.3」■かえるモノ語り歳時記2019年10月
<縄文土器から現代アートまで、創作意欲を刺激するカエル>
高山ビッキ(100年カエル館副館長)
柴田まさる作品「マルメタピオカガエル」
福島県立博物館のエントランスで同館と共催で行った「100年カエル館のときめくカエルアート図鑑」展は、2019年10月27日をもって終了しました。ご来場くださった方をはじめ、多くの皆様にご関心をいただいたことに心から感謝申し上げます。
同展は福島県立博物館で同年11月17日まで開催された「あにまるず どうぶつの考古学」と動物つながりのテーマで同時開催しました。
「どうぶつの考古学」では、イノシシやシカをはじめいろいろな動物の考古資料が展示されるなか、「カエル」もいました。
縄文中期の抽象文の深鉢(東京都三鷹市遺跡)には、口縁部に「カエルもしくは昆虫のようにも見える」と解説された装飾がありました。今回の展示にはありませんでしたが、長野県の曽利遺跡出土の深鉢にカエルの文様が施されているものがあるので、カエルが見られる縄文土器がどれくらいの広がりをもって作られていたのか知りたくなりました。
また、縄文後期に岩手県一関市で作られていたと考えられるのは、「カエル形角製品」。カエルの造形の首のあたりを貫通する孔(あな)があることからアクセサリーとして使われた可能性があるそうです。当時どんな人がどんな意図をもって身につけていたのかを想像すると、今もペンダントトップや指輪などにカエルをデザインしたものは人気があることから、縄文時代と現代が一気につながる感じがしました。
私たちが展示した柴田まさるさんのカエルの絵は、20世紀から21世紀を生きた画家による現代アートですが、20世紀に活躍した“美の巨人”たち、たとえばピカソがアフリカのプリミティブアートの、岡本太郎が縄文文化の影響を受けていたように、柴田作品のカエルアートの背景にもさまざまな時代の文化が見え隠れする気がしました。
カエルアートの場合、自然に棲息するカエル本来の姿に芸術性を見出すアーティストもいます。ポップアートの巨匠、アンディ・ウォーホルが描いたのは「絶滅危惧種アマガエル」。中南米に分布するアカメアマガエルの輪郭や顔の造作を線画で浮かび上がらせることで、カエルそのものがポップアートであることを示しているかのようです。
柴田さんもアカメアマガエルを描いていますが、柴田さんの場合、最も創作意欲をかき立てられたカエルは、南米のマルメタピオカガエルのようです。両目がくっついていて、口がやたらと大きい特徴的な形態そのものが、ポップアートだったのかもしれません。
※「カエル白書」(A5版 モノクロ 68ページ)Vol.1とVol.2は1冊1000円(税込・送料込)で販売しております。100年カエル館HP http://kaeru-kan.com でお申し込みいただけます。
Vol.1内容/◎黙阿弥のひ孫、演劇研究家氏のコレクション展(福島県立博物館にて)報告 ◎明治生まれのカエルグッズコレクター、小澤一蛙のコレクションから見えてきたこと ◎自然とカエルの話題 ◎カエル文化的話題 ◎高山ビッキ連載カエルコラム 他
Vol.2内容/◎「カエルアートミュージアム~進化するカエルアート」展(京王プラザホテルロビーギャラリーにて)報告 ◎カエル先生、岩澤久彰コレクション展」から見えたこと ◎第20回記念両生類自然史フォーラム報告 ◎カエルグッズでめぐる世界の“カエル旅” 他
※ブログ「高山ビッキBlog」http://kaeru-kan.cocolog-nifty.com/vikkiも配信中です。
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