[カエル白書Vol.3」■かえるモノ語り歳時記2019年11月
<「アート・ぶらり~」ファッションで、装う楽しさがヨミガエル>
高山ビッキ(100年カエル館副館長)
台風の影響を心配しながらの開催となった今年(2019年)の「蔵のまちアート・ぶらり~」(福島県喜多方市)。100年カエル館は参加して3年目になりました。
19世紀末から20世紀初めにイギリスを中心に起こったムーブメントにアーツ&クラフツ運動がありますが、21世紀のここ喜多方で行われるこのイベントは、その再燃のようにも思えて毎回心ときめきます。
「アート・ぶらり~」では、第19回となった2019年の今年も初日に各出店者が顔を合わせるオープニングレセプションがあり、会長挨拶に立つ前後喜平氏によれば「このイベントでのアートの捉え方は自由。自分自身の生き方がアートと考える人も」。
出店者の方々の作品には、生活の中に活かされるアートも多く、喜多方に古くから伝わる伝統技術から新しいファッションも生れています。作る人がいて、その作品を着る人がいる。その流れ自体がアートなのではないかと思えました。
喜多方からは今「アート・ぶらり~ファッション」とも呼べる地産地消のファッションが生れているのではないか、と。
イベント会期中「織りと染め」による洋服やファッション小物を展示販売していた齋藤潤子さんを訪ねました。店内にはこの日を待ちわびていたかのように押し寄せた喜多方のご婦人たちが、自らの今年のモードに取り入れたいアイテムは何か、熱心にご覧になっていました。
私自身は、喜多方に「会津型」という江戸時代から昭和初期にかけて使われていた染型紙(県重要有形民俗文化財)があることを知ったのも「アート・ぶらり~」に参加してからのこと。齋藤さんはこの「会津型」に魅了され染色・織物作家になってこの道30年で、会津喜多方に生まれた染め織りの技術を現代のファッションの中で息づかせる伝道師のような方です。
昨今、一般のファッション市場において洋服の売れゆきが芳しくなく、これまでの「ファッション」という概念そのものが転換期に至っているなか、「アート・ぶらり~ファッション」は、地域に伝わる伝統の技が本来の装う楽しさに気づかせてくれます。
写真は、100年カエル館に展示しているアメリカ製のカエルのブローチを齋藤さんの「裂き織りジャケット」の胸元に合わせてみました。「裂き織り」とは、昔から貴重品とされた会津木綿を裂いて作り直す、江戸中期に東北で生まれたリサイクル発想。常に新しくヨミガエルファッションといえそうです。
※「カエル白書」(A5版 モノクロ 68ページ)Vol.1とVol.2は1冊1000円(税込・送料込)で販売しております。100年カエル館HP http://kaeru-kan.com でお申し込みいただけます。
Vol.1内容/◎黙阿弥のひ孫、演劇研究家氏のコレクション展(福島県立博物館にて)報告 ◎明治生まれのカエルグッズコレクター、小澤一蛙のコレクションから見えてきたこと ◎自然とカエルの話題 ◎カエル文化的話題 ◎高山ビッキ連載カエルコラム 他
Vol.2内容/◎「カエルアートミュージアム~進化するカエルアート」展(京王プラザホテルロビーギャラリーにて)報告 ◎カエル先生、岩澤久彰コレクション展」から見えたこと ◎第20回記念両生類自然史フォーラム報告 ◎カエルグッズでめぐる世界の“カエル旅” 他
※ブログ「高山ビッキBlog」http://kaeru-kan.cocolog-nifty.com/vikkiも配信中です。
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