「カエル白書Vol.3」■かえるモノ語り歳時記2019年1月
<カエルの絵馬に新しい年の願いを込めて>
高山ビッキ(100年カエル館副館長)
明治生まれのカエル・コレクター小澤一蛙制作のカエルの絵馬(100年カエル館所蔵)
新しい年を迎える(ムカエル)と心機一転、気持ちをすっかり切り換える(キリカエル)ことができ、希望が溢れかえる(アフレカエル)ことがあります。蛙が、縁起がいいと言われる理由のひとつが、このような語呂合わせを楽しめるところ。
特に「無事かえる」「お金がかえる」「福かえる」は、三大「かえる願い事」と言えそうです。寺社で授与されるお守りや土鈴に、蛙の絵柄が施されているものや、蛙の形をしているものがあれば、そのような願いが込められています。
絵馬も古くから何かを祈願するときの縁起物で、元々はその名に残るように、生きた馬を神様に献上したことに始まります。板に描いた馬を奉納するようになったのは平安時代で、室町時代には現世利益を求め個人が小型の絵馬を奉納するようになったと言われています。
絵馬に馬だけでなく、いろいろな絵が描かれるようになったのは江戸期以降、家内安全や商売繁盛を祈願して奉納する風習が庶民に広がってからでしょう。
カエル好きにとっては、もちろん、馬ではなく神社などでカエルが描かれた絵馬と出合うと、奉納した絵馬とは別にもう一つは持ち帰りコレクションする人も多いと思います。
100年カエル館にも「富士信仰」と「無事かえる」で交通安全祈願ができる品川神社(東京)、「身代わり片目蛙」に健康な暮らしを守ってもらえる木之本地蔵院(滋賀県)、春日局が嫦娥(じょうが)(中国の伝説の女性)と兎と蛙が描かれた鏡を奉納した一之宮(いちのみや)貫前(ぬきさき)神社(群馬県)などのカエルの絵馬が集まっています。
全国に毎年“かえるまつり”を行うところが何か所かありますが、愛知県春日井市は、あの「柳に跳びつく蛙」の言い伝えで知られる平安時代の書家、小野道風の生誕地ということで、毎年「春日井カエルまつり」を開催しています。その道風が書道上達を祈願して山号「医王山」の扁額を奉納した高田寺(こうでんじ)では、柳に跳びつく絵馬を買い求め奉納することができます。
そして、100年カエル館のある喜多方。『小史わがまち松山』(松山町「ふるさと再発見!」事業推進協議会編)によれば、御稷(ごしょく)神社には明治七年に寺町に住んでいた画家の五十嵐豊岳氏が描いた「小野道風蛙を見る図」の絵馬(扁額のような大きな絵馬でしょうか)を奉納しています。大きな桜の木の下にある小さな神社。絵馬の絵は判別できないほど風化しているそうですが、今年は桜が満開の頃に行ってみようと思います。
※「かえるモノ語り歳時記」は、福島県喜多方市のおもはん社発行のフリーペーパー「ほっと・ねっと」に100年カエル館の高山ビッキが連載しているエッセイ「かえるモノ語り―自然と文化をつなぐカエル」を歳時記として加筆修正して再掲載しています。
※「カエル白書」(A5版 モノクロ 68ページ)Vol.1とVol.2は1冊1000円(税込・送料込)で販売しております。100年カエル館HP http://kaeru-kan.com でお申し込みいただけます。
Vol.1内容/◎黙阿弥のひ孫、演劇研究家氏のコレクション展(福島県立博物館にて)報告 ◎明治生まれのカエルグッズコレクター、小澤一蛙のコレクションから見えてきたこと ◎自然とカエルの話題 ◎カエル文化的話題 ◎高山ビッキ連載カエルコラム 他
Vol.2内容/◎「カエルアートミュージアム~進化するカエルアート」展(京王プラザホテルロビーギャラリーにて)報告 ◎カエル先生、岩澤久彰コレクション展」から見えたこと ◎第20回記念両生類自然史フォーラム報告 ◎カエルグッズでめぐる世界の“カエル旅” 他
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