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2020年5月22日 (金)

[カエル白書Vol.3」■かえるモノ語り歳時記2019年12月

<降り積る雪の下からカエルのジングルベル>

高山ビッキ(100年カエル館副館長)

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 コロコロ、キュッキュッ、ピーピーピー……。そのカラダを揺らしたり、カラダの一部を押したりすると音の出るカエルがいろいろあります。特に20世紀後半以降に作られたぬいぐるみやビニール製のカエルグッズに多いのですが、古くから作られた日本の郷土玩具にも、土鈴をはじめ鳴物のカエルがあります。海外に目を向けても、ベトナム発祥といわれるギロのカエル(背中の部分を棒でこすると音が出る)やペルーの土笛のカエルなど、カエルが“鳴く動物”であることから発想されたと思われるカエルグッズは古今東西に。

 カエルは冬眠する生きもので、冬期に最低気温が5度を下回りホワイトクリスマスになるような地域では、落葉や倒木の下などでじっと動かず冬眠します。クリスマスとは縁がなさそうですね。ところが、なぜかカエルグッズには写真のような、クリスマスには欠かせない存在、サンタクロース姿のカエルが珍しくありません。しかもこの“カエルサンタ”、歌を歌います。おなかの辺りを押すと、「ジングルベール、ジングルベール」とビング・クロスビーばりの歌声を聞かせる“音の出るカエル”なのです。

 クリスマスに雪の積った地面の下に耳を傾ければカエルのクリスマスソングが聞こえてくるかもしれない。そんなロマンチックなイメージを抱かせてくれるのもカエルの魅力なのでしょう。

 カエルが登場する絵本にも、クリスマスシーンが描かれることがあります。100年カエル館で所蔵している絵本に『サンタさんだよ かえるくん』(塩田守男・絵、さくらともこ・文 PHP研究所)があり、子ガエルたちの冬眠とサンタクロースとの出会いが愛らしい絵とストーリーで表現されています。

 絵本を読む子どもたちに春夏秋冬の自然や暮らしの変化を伝えるのにカエルは最も適した生きものと言っていいかもしれません。だから、冬眠中も絵本の中ではなかなか眠っていられない⁈特に冬眠に入って間もないクリスマスの頃はサンタさんと同様に大忙しなのかも。

 今では宗教を超えて世界に広がった冬の風物詩と言えるクリスマスは、キリストの降誕祭を祝う宗教行事です。そしてカエルは、キリスト教的には好意的なシボルとは限らないのですが「冬に姿を消しふたたび春に出現する姿はキリストの復活になぞらえられる」(荒俣宏著『世界大博物図鑑』より)こともあります。

 雪の下でジングルベルを歌っているかもしれない冬眠中のカエルは、ただひたすらに春の訪れを夢見ているのでしょう。

※「カエル白書」(A5版 モノクロ 68ページ)Vol.1とVol.2は1冊1000円(税込・送料込)で販売しております。100年カエル館HP http://kaeru-kan.com でお申し込みいただけます。

Vol.1内容/◎黙阿弥のひ孫、演劇研究家氏のコレクション展(福島県立博物館にて)報告 ◎明治生まれのカエルグッズコレクター、小澤一蛙のコレクションから見えてきたこと ◎自然とカエルの話題 ◎カエル文化的話題 ◎高山ビッキ連載カエルコラム 他

Vol.2内容/◎「カエルアートミュージアム~進化するカエルアート」展(京王プラザホテルロビーギャラリーにて)報告 ◎カエル先生、岩澤久彰コレクション展」から見えたこと ◎第20回記念両生類自然史フォーラム報告 ◎カエルグッズでめぐる世界の“カエル旅” 他

※ブログ「高山ビッキBlog」http://kaeru-kan.cocolog-nifty.com/vikkiも配信中です。

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