[カエル白書Vol.3」■かえるモノ語り歳時記2019年9月
<柴田作品の中で愉しく進化して、カエルは仏様に>
高山ビッキ(100年カエル館副館長)
前回に引き続き、今月(2019年)18日から10月27日まで福島県立博物館で開催される「100年カエル館のときめくカエルアート図鑑」展から柴田まさる作品の「仏画」をご覧いただいています。
カエルがなんとお釈迦様のように坐禅して印(仏像に詳しくないのですが、智(ち)拳印(けんいん)というのでしょうか)を結んでいます。カエルが仏陀へと擬人化しているようで、100年カエル館制作の座標軸上では「戯画」のジャンルで捉えています。
戯画といえば、漫画大国日本で最も親しまれている絵が、漫画のルーツともいわれる「鳥獣戯画」。
この絵巻は京都栂尾山高山寺に伝わる宝物です。因みに私の名字は高山で、その名でうれしかったのは高山寺を訪ねたときでした。
100年カエル館ができる前のことですが、2002年に当時東京アークヒルズにオープンした、京都の観光と物産のアンテナショップ「京都館」でカエルのイベントを企画し、「京都の美術史に登場したカエルたち」展を開催しました。
カエルもたくさん登場する「鳥獣戯画」は、“カエル美術史”を語る上でも欠かせない名品なので、その中のいくつかのシーンをパネル展示。その展示許可をいただきに高山寺に伺ったのですが、「高山」と「カエル」で勝手にご縁を感じている高山寺に「高山と申します」と名乗れただけでただただ誇り高い気持ちになりました。
この「鳥獣戯画」で、カエルは御本尊の姿にも描かれます。そして、柴田作品にもここに掲載した作品以外にカエルで仏画を描いたのではないかと思われる作品が数点あります。カエルが菩薩像や如来像として描かれる飛躍も、「鳥獣戯画」にさかのぼれば不思議はないのかもしれません。
柴田さんのカエルの仏画には、森の中で坐禅する仏様のカエルの絵もあり、その作品を見ると、高山寺を開いた明恵上人が松林の中で小鳥やリスなど小動物とともに描かれた肖像画「明恵上人樹上坐禅像」に通じるものを感じます。
柴田まさるが仏画に込めた思いを推し測ると、自然の中に仏の姿を見出すその仏教観が伝わるようです。
間もなく始まる県立博物館でのイベントでは、リアルなカエルから仏画のカエルまで、柴田まさるの創作人生の中で、愉しく進化を遂げたカエルたちをご覧いただけます。
※「カエル白書」(A5版 モノクロ 68ページ)Vol.1とVol.2は1冊1000円(税込・送料込)で販売しております。100年カエル館HP http://kaeru-kan.com でお申し込みいただけます。
Vol.1内容/◎黙阿弥のひ孫、演劇研究家氏のコレクション展(福島県立博物館にて)報告 ◎明治生まれのカエルグッズコレクター、小澤一蛙のコレクションから見えてきたこと ◎自然とカエルの話題 ◎カエル文化的話題 ◎高山ビッキ連載カエルコラム 他
Vol.2内容/◎「カエルアートミュージアム~進化するカエルアート」展(京王プラザホテルロビーギャラリーにて)報告 ◎カエル先生、岩澤久彰コレクション展」から見えたこと ◎第20回記念両生類自然史フォーラム報告 ◎カエルグッズでめぐる世界の“カエル旅” 他
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