[カエル白書Vol.3」■かえるモノ語り歳時記2019年5月
<桜の季節に考えた木とキジとカエルの三すくみ>
高山ビッキ(100年カエル館副館長)
100年カエル館では、カエルの生体展示はしていませんが、ゴールデンウィーク期間中、庭では二ホンアマガエルの鳴き声が聞こえ、たぶん、ちょうど写真の陶製のカエルのように鳴のう(鳴き袋)を膨らませて発声していたと考えられます。
このカエルの置物は御浜焼(みはまやき)と思われる全長20㎝ほどの陶器で、姿形はトノサマガエルに似ていますが、同種の場合、鳴のうはあごの両脇にあり、鳴くときは左右の頬(ほほ)が風船みたいに膨らんで見えるのでちょっと違います。大きさからすると、ウシガエル並み。自然を正しく反映しているわけではありません。
今年(2019年)の「GW開館」は喜多方の枝垂れ桜に間に合い、平成から令和にかけて本館の庭でも、ソメイヨシノに八重桜、そして道路を隔てて少し遠くに枝垂れ桜が見え、「喜多方さくらまつり」を満喫することができました。花も蛙の声も楽しむことができる、この身近な自然を眺めているだけでも、生態系の成り立ちに気づかされました。
私たちの目の前で血相を変えて(⁈)横切って行ったのは、ツガイのキジ。鳥としては飛ぶのが苦手な分、捕獲されないようにスピーディに走る様子は、ホレボレするほど。アマガエルたちがこのキジファミリーに食べられている可能性を思うと複雑ですが、それも生態系を維持する自然の掟であるなら、キジに由来する諺(ことわざ)を借りて、キジの前を通るカエルに「鳴かずば食われまい」とアドバイスしてあげるのが精一杯。
アマガエルは、英語でtree frog(ツリーフロッグ)。吸盤のある指を使って木に登るのが得意です。
大昔、地球に小惑星がぶつかって、ほとんどの生命が絶滅したかに見えたとき、最初に息を吹き返したかのように鳴き始めた動物がアマガエル。木に登ったことで繁栄したカエルだといわれています。今も主な棲息場所は樹上です。
ところが、そんなアマガエルも棲む100年カエル館の庭の樹々に、鳥たちに運ばれた種が育ったのか、野生の藤(ふじ)蔓(づる)が絡みついていました。その生命力には圧倒されるのですが、他の樹々を枯らす原因でもあり、今回はその藤蔓を樹々からはずしてやる作業を行いました。
カエルは、ヘビとナメクジ(もしくはムカデ)と、三すくみの関係をつくりますが。アマガエルとキジと木にも、豊かな生態系を維持するための「三すくみ」があることを感じました。
※「カエル白書」(A5版 モノクロ 68ページ)Vol.1とVol.2は1冊1000円(税込・送料込)で販売しております。100年カエル館HP http://kaeru-kan.com でお申し込みいただけます。
Vol.1内容/◎黙阿弥のひ孫、演劇研究家氏のコレクション展(福島県立博物館にて)報告 ◎明治生まれのカエルグッズコレクター、小澤一蛙のコレクションから見えてきたこと ◎自然とカエルの話題 ◎カエル文化的話題 ◎高山ビッキ連載カエルコラム 他
Vol.2内容/◎「カエルアートミュージアム~進化するカエルアート」展(京王プラザホテルロビーギャラリーにて)報告 ◎カエル先生、岩澤久彰コレクション展」から見えたこと ◎第20回記念両生類自然史フォーラム報告 ◎カエルグッズでめぐる世界の“カエル旅” 他
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