[カエル白書Vol.3」■かえるモノ語り歳時記2019年4月
<新元号「令和」と縁起のいいカエル>
高山ビッキ(100年カエル館副館長)
新元号が「令和」と決まってから、その典拠となった万葉集への関心が高まりました。昨年(2018年)のこの連載では、万葉集でヒキガエルはタニグクと呼ばれ、「谷蟆(たにぐく)のさ渡る極み」と国土を知り尽くした存在として登場することを紹介しました。
また、やはり昨年、磐梯山噴火記念館に常設されている、世界最初の地震計の模型に8匹のカエルの造形が施されていることも書きました。同館によりますと、今、この地震計に熱い視線が集まっているそうです。
考案した中国後漢時代の張衡(ちょうこう)は、万葉集以前に『後漢書』の中で、「令」と「和」の文字も確認できる詩文『帰田賦(きでんのふ)』を遺しているからです。張衡は役人であり科学者、詩人とさまざまな才能を発揮し、後の世に菅原道真にも影響を与えたと考えられます。「田に帰る」という題の『帰田賦』もカエルの帰巣本能と結びつけたくなり、この詩文をつくった張衡のカエルの地震計は、「かんがえる」ことの大切さを伝える学業成就のシンボルにもなりそうです。
カエルはよく「縁起がいい」と言われます。「無事かえる」「福かえる」など語呂合わせがしやすいからだと思いますが、その理由をもっと深めてみたいと思い、カエ~ル大学では「カエルの縁起」座標軸をつくったことがあります。「カエルの縁起」という言葉をx軸とy軸で斬ってその意味を構成する要素を分解してみると、中国神話で「すべからく蛙から生じた」とされる「この世をつくる源である木火土鉄水」のうちのいくつかとの関係が見えてきました。
そこに日本における、カエルと縁があると思われる神社仏閣、神様や伝説の人物を配置してみると、「カエルは縁起がいい」ことの背景につながった気がしました。
さらに、昨年は同講座で喜多方、そして会津にあるカエル縁(ゆかり)のスポットを紹介する回があったのですが、その「カエルの縁起」座標軸に照らし合わせても、会津、喜多方には“カエルの神様”がいろいろ集まっている、縁起がいい土地なのではないかと確信さえ思えました。
100年カエル館では、そのような視点に基づき、会津、喜多方のカエルと関わるスポットを紹介しながら、本館について案内するリーフレット(写真)を作成しました。
※「かえるモノ語り歳時記」は、福島県喜多方市のおもはん社発行のフリーペーパー「ほっと・ねっと」に100年カエル館の高山ビッキが連載しているエッセイ「かえるモノ語り―自然と文化をつなぐカエル」を歳時記として加筆修正して再掲載しています。
※「カエル白書」(A5版 モノクロ 68ページ)Vol.1とVol.2は1冊1000円(税込・送料込)で販売しております。100年カエル館HP http://kaeru-kan.com でお申し込みいただけます。
Vol.1内容/◎黙阿弥のひ孫、演劇研究家氏のコレクション展(福島県立博物館にて)報告 ◎明治生まれのカエルグッズコレクター、小澤一蛙のコレクションから見えてきたこと ◎自然とカエルの話題 ◎カエル文化的話題 ◎高山ビッキ連載カエルコラム 他
Vol.2内容/◎「カエルアートミュージアム~進化するカエルアート」展(京王プラザホテルロビーギャラリーにて)報告 ◎カエル先生、岩澤久彰コレクション展」から見えたこと ◎第20回記念両生類自然史フォーラム報告 ◎カエルグッズでめぐる世界の“カエル旅” 他
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