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2020年5月 9日 (土)

[カエル白書Vol.3」■かえるモノ語り歳時記2019年2月

<春に考える両生類のなかま蛙と山椒魚のこと>

 高山ビッキ100年カエル館副館長)

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 啓蟄(2019年は3月6日でした)を過ぎれば春は本格始動、近くの田んぼなどでもカエルの産卵が見られ、オタマジャクシに出会えるのではないでしょうか。

「(カエルグッズコレクションとして)オタマジャクシはどうですか」と訊かれて、「はい、集めています」と答え、実際、カエルグッズ収集の分類項目の一つに入れています。アーティストの造形によるオタマジャクシ、金属製や木製、陶製のオタマジャクシ、また、ぬいぐるみのカエルでオタマジャクシが付いているものもあります。

では、サンショウウオはどうかと問われると答えは「いいえ」で、2018年から日本両生類研究会の編集幹事の役目もいただいていますが、同じ両生類でもサンショウウオについては長く考えないようにして来ました。

 オタマジャクシはご存じのようにカエルの子です。親と子でかなり形が違い、形態だけ見ればサンショウウオに似ているとも言えますが、正真正銘カエルの子。そのことは古代エジプトの神聖文字ヒエログリフで「10万」を示す文字が後ろ足の生えたオタマジャクシで表現されていることに、古くから知られていたことがわかります。

 同じ種の幼体のオタマジャクシ(水中生活)から成体のカエル(陸上生活)へ、まさに両生類の特性を示していて、オタマジャクシグッズはカエルグッズと切り離せないと思うわけです。

ところが、同じ両生類にサンショウウオとイモリがいると言われても、カエル好きの視点からその仲間たちとどう接すればいいのか悩むことがありました。

 そんななか2018年に主催した両生類自然史フォーラムで、サンショウウオとカエルでは産卵期に見られるような群れの行動における「社会」の捉え方に大きな違いがあることを感じ、より一層の両生類的ジレンマを抱きました。

そこで解決を求めて手に取ったのが、井伏鱒二の短編小説『山椒魚』。同じ両生類ながら生きざま(生活行動)の違う存在として拘束し合う山椒魚と蛙。岩屋の穴に頭がつかえて外に出られなくなってしまった山椒魚の苦悩を描いた作家のこの処女小説は、最初『幽閉』というタイトルで書かれています。しかし、その十年後に改作・改題して発表した作品が『山椒魚』で、ここで初めて蛙が登場しました。最後、漏れ聞こえた二匹の両生類の言葉に違いは乗り越えられると、距離が縮まったような気がしました。

※「かえるモノ語り歳時記」は、福島県喜多方市のおもはん社発行のフリーペーパー「ほっと・ねっと」に100年カエル館の高山ビッキが連載しているエッセイ「かえるモノ語り―自然と文化をつなぐカエル」を歳時記として加筆修正して再掲載しています。

※「カエル白書」(A5版 モノクロ 68ページ)Vol.1とVol.2は1冊1000円(税込・送料込)で販売しております。100年カエル館HP http://kaeru-kan.com でお申し込みいただけます。

Vol.1内容/◎黙阿弥のひ孫、演劇研究家氏のコレクション展(福島県立博物館にて)報告 ◎明治生まれのカエルグッズコレクター、小澤一蛙のコレクションから見えてきたこと ◎自然とカエルの話題 ◎カエル文化的話題 ◎高山ビッキ連載カエルコラム 他

Vol.2内容/◎「カエルアートミュージアム~進化するカエルアート」展(京王プラザホテルロビーギャラリーにて)報告 ◎カエル先生、岩澤久彰コレクション展」から見えたこと ◎第20回記念両生類自然史フォーラム報告 ◎カエルグッズでめぐる世界の“カエル旅” 他

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