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2012年7月13日 (金)

1994年 女性(ミューズ)は音楽元素でできている

<特集テーマ・音楽という出来事>

女性(ミューズ)は音楽元素でできている

高山ビッキ・文

あなたは誰ですか。そう問いかけられたら、自分を構成する「音楽」で存在証明してみよう。

音楽は時に体液の流れになる。特定地域の民族音楽のような土着性、宗教性の強いサウンドの音階に、黒人音楽の魂と血で刻むビートに、思わず自己本来の民族性が暴かれたような「体液の逆流」を覚えることはないだろうか。

ブルースになんて興味のなかったあなたが、ある日突然ブルースマンに恋をする可能性はある。「体液」の逆流はそんな時に起こる。その恋愛体験(ライブセッション)を通過したら、ブルースのもつ魂(ソウル)と身体感覚(ビート)はあなたの血(ヒストリー)になる。

そして特に音楽は、あなたを取り巻く気体中の微粒子を変質させる。雰囲気のある女性とは、ファッションや香りと同じように音楽も着こなせる人だ。

どんな場所でも自分だけのシーン・メイク・ミュージックを想像できる。周囲のノイズが強ければ強いほど、それに負けない爽やかな微弱電流を放射できる女性、それが都市空間のミューズだ。

さて、そんな素敵な女性になるためのレッスン・メソッドとは……。当然、いろんな音楽を聴いてみること。

音楽が、ある時ある場所に吹いていた「風」の再現だとしたら、その「風」を加工して詰めたCDを解き放てば、ユッスー・ンドゥールの声から「アフリカの高貴」を、ルー・リードの詩とビートから「ニューヨークの野性」を吸い込むことができるだろう。

また、鳥の鳴声や川のせせらぎ、そして実際に体に感じる風の音に耳を傾けること、それも大切なレッスン。さらに、こんな情報(ノイズ)の多い時代だから、あえて音から遠ざかり、無音の中に身を置いてみるのも格別な音楽体験だ。4分33秒の無音の後に、ピアノの蓋をパタンと閉じて「演奏」を終えたジョン・ケージの意図に倣って。

19941 ファッション専門店PR誌掲載)

※この文章は高山ビッキが1994年に企業のPR誌に執筆したものをほぼそのまま掲載しております。無断転載を固く禁じいたします。 ※本サイトへのお問い合わせはケーアンドケー03(3981)6985

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