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2012年7月11日 (水)

2007年パパライフをエンジョイする世代の父と子のマーケット

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<生活トレンド分析>

「パパライフをエンジョイする世代の父と子のマーケット」

高山ビッキ・文

「パパ」を楽しむニュータイプの消費者

最近の消費行動を語る上で注目されているのが、子育てに関わっている「パパ」の存在である。

世代的には、30代から40代の男性とされる。「新人類」としてトレンドをリードした層を中心とする40代男性と、団塊ジュニアをメインとしてティーンのときからその消費スタイルに多くの関心が集まっていた30代男性。ただし、独身時代の両者の消費生活には明らかな違いがあった。

分岐点はバブル経済の崩壊。社会に出ても数年はバブルの恩恵を受けた40代は、同世代の女性たち(いわゆるhanakoさんと呼ばれた世代)ほどではないにせよ、ファッション、レストラン、クルマ、旅行と、浪費する快楽も味わった。ところが、30代の場合、社会に出てみれば、そこは「祭り」の後。就職も超氷河期に入り、浮かれた消費生活はできなくなっていた。

そんな10年ほどの世代差はあるが、彼らは子供の頃に高度経済成長とともに育ち、その行き着く果てにバブル経済も目の当たりにした。けれども、大人になり結婚をし、自らが子供の成長を見守る立場になった現在、日本経済や社会状況は子供の将来を託すには不安要素が多すぎる。そんななかで彼らは積極的に「パパ」を楽しむニュータイプの消費者として浮上してきている。

「ウルトラマン世代」のノスタルジー

彼らは「ウルトラマン世代」(30代は「ガンダム世代」ともいえるのだろうか)と語られることもある。40代後半であれば、高度経済成長真っ只中の小学校低学年のときに初めてTV番組の「ウルトラマン」と出会っている。

この秋、『怪獣と美術』という企画展が開催された(三鷹市美術ギャラリー)。これは『ウルトラマン』や『ウルトラセブン』の怪獣デザインを担当した故・成田 亨氏の作品で、会場にはまさに「ウルトラマン世代」のパパも子供を連れて見に来ていた。

その展示作品のなかにジャミラという怪獣のデザイン画があった。ジャミラは、元宇宙飛行士の人間だったという悲しい設定の怪獣。その回ばかりは、ウルトラマンを素直に応援できなかった記憶をもつパパも多いはずである。3040代は、喜怒哀楽といった情緒的な部分をテレビのヒーローものやアニメで培った最初の世代である。バーチャル(仮想的)な世界の中にこそなつかしいと思えるものが多いと感じている。

最近、子供たちに人気の高いゲームやアニメは、「ケロロ軍曹」(原作・吉崎観音)、「甲虫王者ムシキング」(セガ)など、パパを巻き込んで盛り上がっているものが多い。つまり、現代のパパたちは充分にネオテニー化(幼児化)したまま「父親業」を楽しむことができるのだ。

子供たちをクリエイティブに育てたい

しかし、そんなパパたちも21世紀に入り、ITはインフラ(社会基盤)化し、終身雇用は崩壊、家庭における男女間の役割意識にも変化が見られるようになった今、自分の子供たちの未来を考えたとき、これまでの父親にはない動きを見せるようになった。

料理や手芸といった、家庭においてこれまで女性の領域に属していた分野に興味を示し子供たちとともに楽しみ、自然観察や化学実験、体験型旅行などで子供たちに実体験する喜びを教え、ファッション、インテリア、アート、クルマなど、自分がこだわってきた生活スタイルを伝える。

彼らは子供たちに、現実を生き抜いていけるクリエイティブな人間に育ってほしいと思っている。それに対して子供への教育というより、自らも楽しんで関わろうとするところに、豊かな時代に育ったネオパパならではの消費スタイルが窺える。

2007年冬)

※この文章は高山ビッキが2007年に企業のPR誌に執筆したものをほぼそのまま掲載しております。無断転載を固く禁じいたします。本サイトへのお問い合わせはケーアンドケーまで03(3981)6985

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