2008年 大人の遊び心を刺激するホビー消費
大人の遊び心を刺激するホビー消費
高山ビッキ・文
●大人向けにシフトした子供の遊び
少子化の影響で、ここ数年、市場経済の縮小が懸念されている玩具業界の大人向け市場である。
例えば、来年でテレビアニメが放映されて30年になるガンダムの人形をはじめとするフィギュアやプラモデル市場は、子供の頃に手にとって遊んだ記憶のある大人たちを満足させるためにディティールの精密度を高める商品を開発することで、年々市場を拡大している。
また東京ビッグサイトで毎年開催されている「日本ホビーショー」の今年のイベントでも、ビーズや塗り絵、粘土細工、模型づくりなど、本来のジャンルは子供の遊びだったものが、大人の遊びとしてカテゴライズされていた。
ホビーを趣味と直訳すれば、読書や音楽鑑賞なども入るのだが、いまのホビー市場は、どちらかといえば子供の遊び道具を大人向けに成熟化・精密化させたものが多い。
●子供の頃の思い出を忘れない世界
そこで、今回の「葡萄分析図」では、子供が中心になっている遊び道具で大人にも注目されているホビー商品を中心に構成した。葡萄分析図を構成するホビー市場のキーワードは、ホビー行動における「集める」行動と、それに対する「つくる」行動で、それぞれを「キッツ&プロダクツ」と「マシン&サイエンス」という2つの視点から集約した。
ロックアーティストに憧れたり、自身がロッカーだった少年が、成人したあとに何十万もするギブソンのエレキギターを買い求めバンド活動を始める。またバービー人形やリカちゃん人形で遊んだ少女が、大人になって自分のために再び買い集める……何かを集めたり、つくったりするホビー市場は、キャラクターグッズなど特定のプロダクツを集めたり、ビーズなどキット化した部材でアクセサリーをつくったりするなど、いわば「キッツ&プロダクツ」の方向性が活気づいている。
一方アニメに登場したマシンやフィギュア、また世界の珍しいクワガタやカブトムシを集めたり、また鉄道模型やラジコンなどを組み立てたりする大人たちは、いわば「マシン&サイエンス」の世界への関心が高い。
●ホビー市場の背景にあるもの
いま、ホビー市場を形成している「キッツ&プロダクツ」も「マシン&サイエンス」も、夢中になって没頭できた子供の頃をあらためて実感したいとの願望によって下支えされているのかもしれない。そんなホビー市場の背景として次の3点が挙げられる。
1、 余暇の必要性と余暇時間の増加
今年の日本ホビーショーでは、定年退職により余暇時間が増えた団塊世代を主ターゲットとした鉄道模型が初めて登場するなど、ホビー市場に新しい男性層を開発する試みがいくつか見られた。また富裕層と呼ばれる人々のなかには、IT関係を中心としたビジネス成功者も多いが、彼らのストレス解消法としても最近はホビー市場が注目されている。ネットオークションのヤフー・オークションやE-BAYの人気も、そうした人々に支えられている。
2、 日本のオタク文化への世界評価
ホビー市場には、少し前まで「オタク文化」として批判的に見られていたジャンルもあるが、しかし、そのオタク文化自体がマンガやアニメをはじめ、世界的に評価されるようになったいま、それを趣味にすることに抵抗がなくなってきた。
3、20世紀文化を継承するもの
最後にもうひとつ挙げるとしたら、時代の大きな転換期における何かを遺したいという人間の本能のようなものではないだろうか。いまのホビー商品は、20世紀後半に生まれたものが多く、21世紀の現在、前世紀の良いものを伝えたいという、現代の大人の欲求が働いていると考えることもできるだろう。
(2008年夏)
※この文章は高山ビッキが2008年に企業のPR誌に執筆したものをほぼそのまま掲載しております。無断転載を固く禁じいたします。※本サイトへのお問い合わせはケーアンドケーまで03(3981)6985
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