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2012年7月 8日 (日)

1995年 本のなかに咲く花

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「本のなかに咲く花」

片岡義男 文・写真

本というものは、たいへんに不思議なものだ。ページという呼び名の、おなじ大きさの紙が何枚も綴じてあり、一冊という容積の基本単位を作っている。

何枚ものページには、非常に多くの場合、ひとつにつながった文章が文字で印刷してある。一冊の本の容積の大部分は、ページの総面積だ。ページの総面積は文字の総量であり、その文字を読んで理解しないことには、本というものの少なくとも本来の機能は、引き出すことが出来ない。

ページに文字の印刷してある本は、本というものの不思議さの、おそらく頂点に立つ形態だろう、と僕は思う。絵や写真の印刷してある本が、それに次ぐ不思議さを充満させた本として、位置している。文字の本はその文字を読まないことには、それぞれの不思議さの内容には入っていけない。絵や写真の本は、ページを開いてそこに印刷されているものを見さえすれば、それぞれの不思議さのただなかへ、直ちに入っていくことが可能だ。

花の絵が印刷してある本のページを開くと、ページという紙の二次元に、花が咲く。ページを開いたとたんに目に入って来るその花は、まるでそのときの瞬間、そのページに咲いたもののように見える。そしておなじくその瞬間、その本のぜんたいがその花になる。咲いた瞬間を、三とおり、僕は撮影してみた。

19957月住宅メーカーPR誌掲載)

※この文章と写真は片岡義男さんの許可をいただいて掲載しております。無断転載を固く禁じいたします。

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