2007年都会と地方の2地域居住、広がる居住ライフ
2007年<生活トレンド分析>
今年(2007年)から注目されるのが団塊世代の大量定年による〝団塊族の大移動〟。なかでも、大きな流れは「都市回帰」と「地方回帰」双方の〝国内大移動〟だ。そして理想をいえば、都市と地方のどちらにも生活拠点をもち、行き来して暮らす「2地域居住」を希望する人が増えている。
「都市回帰」は、子供が独立するまでは郊外一戸建てに住んでいた団塊夫婦が、都市部のマンションで生活の利便性や質、文化性を高めるライフスタイルへの転換。一方の「地方回帰」は、退職を契機に田舎で農業や釣りなど自然とふれあう生活を求めた地方への移住だ。その場合、移住先が自分の出身地や実家のある場所とは限らないところが最近の大きな傾向で、自分にとってより快適な土地を求めて移住しようとしている。
ちなみに日本経済新聞社の調査によれば、団塊世代の移住希望者に最も人気の高かった場所は沖縄。特に周辺に衣・食・住・遊・医など生活の安全と豊かさを約束する機能を
備えたリゾートタウンへの関心が高い。
「移住」は、決して定年退職者だけに関わるキーワードではない。30代を中心としたいわゆる団塊ジュニアに相当する層で、特にIT関連ビジネスで成功している人々にとっても「2地域居住」は魅力があるようだ。何といっても彼らはITに精通しているがゆえに、仕事場を限定しないでいい。なかにはオフィスごと定期的に「移住」させている会社もある。
総務省は、都会と田舎の両方に滞在、居住しながら、田舎では地元の人々と交流するライフスタイルを「交流居住」として推奨。また、国土交通省は「2地域居住」を積極的に支援する体制を打ち出している。国や自冶体は豊かな自然の残る日本が見直され、地方経済の活性化につながるものと期待している。
「移住」という発想が一般に浸透していくなか、旅のしかたも変化している。国内・海外を問わず、個人的に気にいったところに何度も足を運ぶリピーターが増加。それが、リタイア族の「移住」先、つまり〝第ニの故郷〟になる可能性は高い。
少子高齢社会となった現在、子が年老いた親の面倒をみながら代々受け継いだ土地を守るという、伝統的な共同体や家のシステムは従来どおりには立ち行かない。親世代も、貯蓄したお金は自分たちで使い尽くそうと考える人が増えたといわれる。こうして旧来的な「家」も「共同体」も揺らいでいるなかで、人々は「移住」へと誘われているのかもしれない。
そしてその先に見えてくるものは新しい「ホーム」であり、新しい「ホームタウン」なのではないだろうか。今、団塊世代の地域活動による新しい町づくりへの関心はかなり高い。日本人は「移住」しながらも、どこかに「回帰」を求めているのかもしれない。
(2007年夏掲載)
※この文章は高山ビッキが2007年に企業のPR誌で連載していたものに加筆修正しております。
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