ヘビとカエルが今に伝える遥か昔の物語/かえるモノ語りー自然と文化をつなぐカエル97
かえるモノ語りー自然と文化をつなぐカエル97
ヘビとカエルが今に伝える遥か昔の物語
100年カエル館
高山ビッキ
巳年の今年にちなんで、蛇と蛙について考えてみました。
よく知られているのは、カエルにとってヘビは天敵、丸ごと吞み込まれることもあるプレデター(捕食者)です。
けれども、カエルには回避したいはずのその関係からたくさんの文化的事物が生まれています。たとえば今でも絵本や童話で語り継がれている日本昔話。
6万話にも及ぶ日本の昔話を収録した「日本昔話通観」(稲田浩二・小澤俊夫責任編集)には、「蛇と蛙」にまつわる話は51話収められています(藤沢浩憲著「日本蛙昔話30選」より)。なぜヘビがカエルを食べるようになったかの由来譚として神様から「蛇の餌(えさ)は蛙だ」と決められる話が多く、神様が決めない話では蛇と蛙は喧嘩をするようです。
また、たくさんの類型をもつ日本の昔話には「異類婚姻譚」に括られる、人間と動物が結婚する話があり、その中に「蛇壻(むこ)入り」があります。蛙が蛇に呑まれそうになったときに、人間が通りかかり「自分の娘をやるから助けてやれ」と言って蛙を救ったことから、その娘は泣く泣く蛇と結婚することに。蛙は人間が蛇と望まぬ結婚をするきっかけをつくってしまったことから、蛇退治はできないまでも人間に知恵や貴重なものを授けることで恩返しをします。蛙の側からみれば「動物報恩譚」に類型される話になります。
現代人からしてみれば、ありえない話ではありますが、記紀神話に遡れる説話であり、平安初期の仏教説話集『日本霊異記(りょういき)』にもそれに近い話が見られます。ただしそれは神話的世界観から仏教的世界観に語り直された内容だったとも考えられています。
さらに時計の針を巻き戻せば、縄文土器にも「蛙と蛇」は表現されています。それは物語紋様とも呼ばれ、女性の手になるものかもしれないと考えられるそれらの土器は、何らかの物語とともに土が捏ねられ、焼き締められた伝承説話ではないかという見方もあります。
ヘビとカエルをめぐる物語が紀元前の昔から伝えられていると思うと、昔話がより壮大な叙事詩のように響いてきます。
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