2023年3月 1日 (水)

カエルならどうする?逃げるが勝ち。/かえるモノ語りー自然と文化をつなぐカエル73「ほっと・ねっと」2023年2月

<カエルならどうする?逃げるが勝ち。>

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高山ビッキ(100年カエル館)

 今年のNHKの大河ドラマ「どうする家康」では、この原稿を書いている現在、松平元康(徳川家康)が今川氏と織田氏の間で「どうする?」の局面に立たされていますが、同時代の尾張国に戸部城主だったある武将がいました。

 最初織田氏に従っていましたが、逆心をいだいて今川氏についた武将でもあったようですが、信頼できる史実は残っていません。

 むしろその戸部城主の存在を後世に伝えることになったのは、写真の土製の郷土玩具「戸部の蛙」かもしれません。

 こんな話が残っています。

 「この城主は乱暴者で自分の行列の前を横切る人は容赦なく斬り捨てた。」

 戸部という地名は今も名古屋市南区に町名として残っています。山崎川という川が流れていて、当時戸部城近隣一帯にはカエルが多く棲息していたのでしょう。

 「ある日、一匹のトノサマガエルがその城主の目の前をピョーンと横切った。誰もが、斬られる、と思った瞬間、その跳ぶ速さに城主は心奪われ、カエルは斬られずに済んだ」と。

 このときから誰言うともなく「山崎越えたら戸部戸部」と斬り捨てられた首が跳ぶのと、蛙が跳ぶのを掛けて揶揄する言葉遊びが流行り、いずれこの云われから瓦職人によって「(命拾いして)無事にカエル」の願いが込められた粘土のカエルが作られ、笠寺観音の参道で売られるようになったと伝えられています。

 写真のような体長3~4センチの瓦土を手びねりして焼いた「戸部の蛙」が作られるようになったのがいつ頃からかはわかりませんが、みごとなのはその種類の多さ。

 殿様蛙、雨蛙、赤蛙、ガマ蛙、相撲を取る蛙、親子蛙……等々、30種類はあり、昭和30年頃まで作られていたと云われています。

 天敵を自ら攻撃する牙や爪などを持たないカエルは「逃げる」ことで生き延びてきた生きものです。そして家康も「逃げる」戦術を厭わなかった殿様と考えると、この「戸部の蛙」も存外家康のようであり、江戸時代らしい縁起物として流行ったのだろうと考えると楽しいものです。

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2023年2月 9日 (木)

白い泡に包まれたモリアオガエルのメガネケース誕生。/かえるモノ語りー自然と文化をつなぐカエル73「ほっと・ねっと」2023年1月

<白い泡に包まれたモリアオガエルのメガネケース誕生。>

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高山ビッキ(100年カエル館)

 産卵期になると山間部の水辺の木の枝などに見られる、白い泡に包まれたモリアオガエルの卵。白い泡は大きいものでは30センチ近くあり、その中に産み付けられた黄色い卵粒は、オタマジャクシに孵ると、白い泡とともに水中に落ちていきます。

 幼生(オタマジャクシ)から幼体になって陸に上がったモリアオガエルたちはしばらくして散り散りに山の中に入り、樹上生活をしているのか、私たちの生活圏で出合う機会はあまりないかもしれません。

 でも、自然写真家のレンズに捉えられた物怖じしないでたたずむ愛らしい姿や、水族館で生態展示されているどっしりとした存在感とつぶらな瞳の個体は、とても人気があります。

 知っているつもりの日本のカエルも、昨今の調査研究では新しい発見も多く、知れば知るほど興味が湧いてきます。

 近年の日本にはウシガエルやアフリカツメガエルといった外来種も生息していますが、日本に長く棲んでいるニホンアマガエルやトノサマガエル、ツチガエルなどの在来種も遠い昔に大陸から日本にやって来たと考えられます。

 一方で、日本で誕生して日本にしか生息していない種を固有種と呼びますが、モリアオガエルはその一種なのでしょう。さらにその分布を見ると、本州の特に東日本に多く、寒冷適応型のアオガエルと言えます。

 ところで、モリアオガエルには斑紋のあるものとないものがいます。有班は西日本に、無班は東北や北陸に多いなかで、福島県では両方が生息していて、繁殖地が国の天然記念物に指定されている川内村平伏沼のモリアオガエルは有班型で、会津にいるのは無班型です。

 2023年。100年カエル館は、今年の再開をめざして準備しています。その前に昨年末、ミュージアムグッズのメガネケースを発売しました。ケースの片面は会津にもいる無班型のモリアオガエル(同メガネケースは両A面でもう片面はベルツノガエルです)。

 白いケースをモリアオガエルの卵を包む白い泡に見立て、メガネやアクセサリーなど扱いに気を遣う大切なモノの保管にご使用いただけます。

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2022年12月25日 (日)

来年は卯年、ウサギとカエルはこれまでも、いつまでも仲良し。/かえるモノ語り―自然と文化をつなぐカエル72「ほっと・ねっと」2022年12月

<来年は卯年、ウサギとカエルはこれまでも、いつまでも仲良し。>

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高山ビッキ(100年カエル館) 

 寅年の令和4年がまもなく終わり、来年は卯年、ウサギ年です。ウサギとカエルは洋の東西を問わずなぜか関わりが深いようです。

 自然界では基本的に草食のウサギと、意外にも肉食のカエルは、天敵の関係でもなければ、エサを奪い合う関係でもありません。

 では、どんな関係なのでしょうか。

 日本でよく知られた「兎と蛙」といえば、両者が相撲を取っている場面でもおなじみの絵巻『鳥獣戯画』。そのシーンは古く中国に伝わっている「月にはヒキガエルとウサギがいる」という考え方が反映されているとの見方もあり、東アジア圏でウサギとカエルの結びつきは昔から深かったと考えられます。

 一方、ヨーロッパでは、イギリスに今年出版120周年記念で注目されたウサギ、ピーターラビットのシリーズにはカエルのジェレミー・フィッシャーがいます。

 そしてオランダには、絵本作家ディック・ブルーナ(1927-2017)が生んだウサギのミッフィーがいて、日本でも人気があります。そのミッフィーのなかまには「つるんつるんあたまのかえるさん」として描かれたカエルがいます。

 西洋のカエルといえばグリム童話の「カエルの王様」が象徴的ですが、ブルーナは絵本『まほうつかいミッフィー』で、ミッフィーの魔法の杖でかえるさんの頭に王冠を載せてあげます。すると最初しょんぼりしていたかえるさんはうれしくてにっこりします。

 ところで、「鳥獣戯画」のウサギとカエルは「肥痩線(ひそうせん)」と呼ばれる、細くなったり太くなったりする墨絵の線で描かれていますが、ブルーナはミッフィーもかえるさんも微妙にふるえるような線で動物たちの感情を表現しています。

 かえるさんの色は作家独自の「ブルーナグリーン」。ブルーナは自然を表現するときに使うこの色で、見る人がゆったりのんびりすることを願っていました。

 古今東西、描き手の繊細な線で情感豊かに表現されてきたウサギとカエル。これからも共にピョンピョンと、ずっと仲良しでいたいと思っていることでしょう。

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2022年11月26日 (土)

「カエル」展の最終日は、ワールドカップサッカー、コスタリカとカエル合戦⁈/かえるモノ語り―自然と文化をつなぐカエル71「ほっと・ねっと」2022年11月

<「カエル」展の最終日は、ワールドカップサッカー、コスタリカとカエル合戦⁈>

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高山ビッキ(100年カエル館)

 アクアマリンいなわしろカワセミ水族館と100年カエル館によるコラボ企画展「カエル」は、今月27日をもちまして終了いたします。たくさんの方々にご来場いただき、ありがとうございました。

 今月から「ワールドカップカタール2022」が始まり、「カエル」展の最終日には日本対コスタリカ戦があります。

 サッカーのワールドカップがあると、「ケロ~、ケロ~」とカエルの声が聞こえるのか、日本の対戦相手国のカエル事情が知りたくなります。

 サッカーの強豪国であるコスタリカは、カエルと関わりの深い国でもあります。

 カリブ海に臨み、北米と南米をつなぐように位置する中米のコスタリカ共和国は、熱帯雨林の地域が広がる生物多様性の国で、カエルの種類も140種以上確認されています。

 その中で特に注目度の高いカエルといえば、自然界の色とは思えないほど鮮やかな体色をもつヤドクガエルやアカメアマガエル。今回の企画展「カエル」にも生態展示されていたので、ご覧いただけたのではないでしょうか。

 コスタリカでは、そんな地球の宝物のようなカエルたちのグッズもバリエーション豊富に作られています。写真は2011年に会津若松市にある福島県立博物館で開催した100年カエル館のコレクション展で展示したコスタリカのカエルグッズの数々です。

 この収集は現在もコスタリカの首都サンホセにお住まいの写真家石井信也さんのご協力で現地から送っていただいたカエルたちです。

 やはりヤドクガエルやアカメアマガエルを表現したフィギュアや文具などが多いのですが、異彩を放っているのがオレンジ色のカエルです。

 実際、20世紀末頃までオレンジヒキガエルともゴールデンヒキガエルとも呼ばれたヒキガエルがコスタリカの雲霧林に生息していたのですが、絶滅したと見られています。

 また、現地では国立博物館に展示されているような金細工や土器のカエルを思わせるカエルグッズもあります。大航海時代以前にここで暮らしていた先住民がアニミズム信仰からカエルを多産のシンボルとしていたことが伝わります。

 日本対コスタリカ戦。どちらの国にもカエルと共に育んだ文化があることにカエール、いえ、エールを送ります。

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2022年10月23日 (日)

木の文化と土の文化を知る日本のカエルたち。/かえるモノ語りー自然と文化をつなぐカエル70「ほっと・ねっと」2022年10月

<木の文化と土の文化を知る日本のカエルたち。>

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高山ビッキ(100年カエル館)

 夏に始まった企画展「カエル」(アクアマリンいなわしろカワセミ水族館にて)は、紅葉も見頃のこの季節、後期展示を開催中です。

 後期のカエルグッズの展示は、「カエルグッズを楽しむ生活とカエル文化」をテーマに5つのカテゴリーで展開しています。フライヤーではそのうちの一つを「おもしろポーズ」と告知いたしましたが、内容を変更しましてカエルグッズの「日本の産地」を切り口にご覧いただいています。

 1台の展示ケースの中に、日本各地の工芸品や郷土玩具、土産物のカエルグッズを紹介しています(写真)。

 同企画展全体の後期のテーマは「旅するかはずとカエルの未来」ですが、この1台では北は北海道から南は沖縄県まで、カエルグッズを見て日本列島縦断の旅の気分を楽しんでいただければと思っています。素材は木彫り(木製)、土物(土製)、張子(紙製)、石製、貝細工などのカエルグッズが全国的に見られます。

 日本のものづくり産地は今回紹介しているカエルグッズを通して見る限り、木の文化を感じさせるカエルグッズは北海道・東北に比較的多く、土物のカエルグッズの産地はどちらかといえば西日本に多い印象を受けました。そのほか、張子のカエルは東北で出合う機会が多く、貝殻の組み合わせでカエルをつくる貝細工は、全国の海辺の地域の土産物になっています。

 日本ならではの木の文化と土の文化の対比を考えると、飛騨のいちい彫りのカエル(岐阜県)や信楽焼のカエル(滋賀県)の辺りを境に、東西のカエルグッズの文化圏に明らかな違いが生じている気がしました。

 日本の山や川、田圃など自然の中に生息しているカエルも、身近にいるアマガエルは英名がTree frogで木とかかわって進化してきたことがわかり、名前からも土との関係の深さを感じさせるのはツチガエルです。どちらも最近では同じ種でもDNA解析の結果地域によって違いがあることも報告されています。

 カエルもカエルグッズも日本の成り立ちと深くかかわった歴史をもっているかもしれないと考えると、文理が融合する研究からさまざまな発見が期待できそうでワクワクします。

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2022年9月24日 (土)

ガーデニンググッズのカエルたちが誘うファンタジックな世界。/かえるモノ語り―自然と文化をつなぐカエル69「ほっと・ねっと」2022年9月

<ガーデニンググッズのカエルたちが誘うファンタジックな世界。> 

高山ビッキ(100年カエル館)

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タイ製(左)とメキシコ製(右)のプランター

 ある時、カエルグッズとガーデニングはとても相性がいいのだと気づきました。

 カエルグッズを集めていると、まさに自然に集まってくるとも言えるガーデニンググッズ。海外のものも多く、土物の大きめのプランターは、タイ製、メキシコ製、イタリア製などがあり、その他、ドイツ製の王冠をかぶったカエルの形のジョーロ、アメリカ製の庭用キャンドルホルダー、イギリス製のガーデンストーンのヒキガエルなどいろいろあり、ガーデニングの世界的な高まりも感じられます。

 ただ、100年カエル館の場合、カエルをモチーフにしたガーデニンググッズはすべてカエルグッズとして館内に展示・保管しています。

 そこで改めて想像の中でそれらガーデニング用品のカエルグッズを庭に解放してみると、いつもの庭が朝昼晩、春夏秋冬、時の移ろいとともに、いきいきとした表情を見せてくれるようでした。

 そしてもうひとつ気づいたことがありました。

ガーデニングへの関心の広がりは、野外に生息しているカエルたちも歓迎しているのではないかということ。

 自然破壊によって生息地が奪われ、世界的に数が減っていると言われるカエルにとって、ガーデニングはカエルたちに快適な環境を提供していると思えるからです。

 100年カエル館の庭にも二ホンアマガエルが何匹か生息しています。

 そこで今度はカエルのガーデニンググッズを置いた庭を、小さなカエルたちの目で見る想像をしてみました。

 ホースをつないだカエルの噴水口から勢いよく出た水をカエルは恵みの雨と思うかもしれず、夜になりキャンドルホルダーに火を灯せば、火を恐れるかもしれないけれど、その灯りのまわりに集まる虫たちはカエルのごちそうになるかもしれません。

 大きな開口部のある陶器のカエルのプランターは、「蛙の王宮」のように見え、近くに王冠をかぶったブリキのカエルがあれば、それは「イソップ童話」でカエルが待ち望んだ王様に思えるかもしれません。

 カエルのガーデニンググッズは、庭を見る私たちを人間にしたり、カエルにしたりして、伸び縮みする不思議な時空、ファンタジーの世界へと誘ってくれます。

アクアマリンいなわしろカワセミ水族館で開催中の企画展「カエル」は10月5日から後期展示が始まります。写真のカエルのガーデニンググッズも展示の予定です。

http://kaeru-kan.cocolog-nifty.com/froggy_museum/

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2022年8月28日 (日)

昨今注目される昆虫食とカエルの食生活。/かえるモノ語りー自然と文化をつなぐカエル68「ほっと・ねっと」2022年8月

<昨今注目される昆虫食とカエルの食生活。>

 高山ビッキ(100年カエル館)

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The Icky Sticky Frog Dawn Bentley/Salima Yoon

 今世紀に入り、環境問題解決のひとつの手段として注目されるようになった昆虫食。人類の食糧問題もそこまで来ているのかと驚き、でも、実際、食べられるかな、などと思ったけれど、コオロギラーメンもコオロギせんべいもその粉末を使うそうですが、まだ食べる機会がありません。

 また、昆虫食の話題になると、日本でも昔からイナゴを食べる地域があると言われ、100年カエル館のある会津もそのひとつに挙げられます。私も子どもの頃、食べたことがありました。

 そして、昆虫食と言えばカエルです。アマガエルやアオガエルなどは緑色の体色のせいか、草食と思われることもあるのですが、自分の口に入る大きさの昆虫などを食べる肉食動物です。しかも、目の前で動く生きものなら何にでも跳びついたり、粘着性のある舌を伸ばしたりして捕食します。

 そんなカエルの食いしん坊ぶりは、カエルグッズのデザインに活かされることがあり、実用品や置物のカエルに、意味ありげにハチやテントウムシやトンボなどの虫の絵柄や造形があしらわれていることがあります。不二家の「ペコちゃん」のように舌を出しているものもあり、カエルにとってそれらはおいしいものに違いありません。

 現在、アクアマリンいなわしろカワセミ水族館で開催中のカエル展でも、カエルが食べるときのからだの動きから発想したようなカエルグッズをいくつか紹介しています。

 この絵本(写真)も展示中ですが、目はプラスチック製で黒目の部分が動き、口から伸びている赤いゴム状の舌の先には「ハエ」がくっついています。「ネバネバガエル」とでも訳せそうなこの絵本のカエルは、ハエやカブトムシやバッタをそのネバッとした舌で次々と食べていきます。そして次にチョウチョウを狙ったところで、最後のページで「ガブリ」、大きな魚にひと飲みされたのはカエル自身でした。

 カエルは食物連鎖を示す生態系ピラミッドの中間に位置している生きもので、その大きな口に入るサイズの昆虫などはエサになり、自分より大きな生きものからは食べられる危険性があるのです。そんな自然界に見られる生きものの生存のしくみをイギリスの絵本らしくブラックユーモアを効かせて表現しています。

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2022年8月 5日 (金)

アジサイの季節に"伊豆のカエル旅"に行ってきました。/かえるモノ語り-自然と文化をつなぐカエル67「ほっと・ねっと」2022年7月

<“伊豆のカエル旅”に行ってきました。>

高山ビッキ(100年カエル館)

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静岡県の河津(かわづ)町は、早咲きの桜「河津桜」で知られ、春には毎年各地から観光客が集まります。

そこに4年ほど前、日本最大の体感型カエル館、その名もKawaZoo(カワズ―)ができてからは、カエル好きの間では「カワズ―行った?」が挨拶代わりになりました。

にもかかわらず、なかなか足を運べないでいたのですが、この6月、ついに行って参りました。

沼津市に仕事で30年以上もお世話になったMさんご夫妻がお住まいで、今回、「カワズ―」と、沼津にある「あわしまマリンパーク」のカエル館めぐりをメインにした、伊豆のカエル旅へとご案内いただいたのでした。

三島駅で出迎えてくださったMさんのクルマで、伊豆といえば現在大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で注目の北条一族ゆかりの地を通り、一路カワズ―へ。

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ここカワズ―では常時120種の国内外のカエルを展示しています。昨年文庫になった拙著『ときめくカエル図鑑』に紹介したカエルたちと同種のカエルも多くいて、久しぶりに対面できました。

美しくもはかなげにカサッコソッと動くヤドクガエルたち。

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カエルは水槽の生態の中でも、葉っぱや枯れ枝、土の中に隠れたり、潜ったりしている場合があり、木の葉に間違えそうなコノハガエルとは目が合ったのですが、コケに似た姿のコケガエルにはこの日はお目にかかれませんでした。

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無人島にある水族館あわしまマリンパークには、対岸から約3分、船に乗って向かいます。

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大きな水槽の水の中にプカリプカリとビニールの玩具のように浮いているアフリカツメガエルは、生きているように見えず大丈夫かなと思うと、意表を突いたように動き出します。

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 人見知り(?)とも思えるカエルも多いなかで、つぶらな瞳でアイコンタクトをとってくれたのは宮古島などに棲むミヤコヒキガエル。

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こうして半日カエルたちとの時間を楽しんで、三島駅に戻る途中、Mさんに「こんなところもあるよ」と言われて立ち寄ったのが、三嶋大社の摂社、楊原神社(やなぎはらじんじゃ)。

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ここに「三島の七石」の一つとされる蛙石がありました(写真)。

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 まだ6月だというのに猛暑日だったこの日。雨乞いの祈りも込められていたかもしれないこの蛙石に、ハッピーフロッグ、今日はなんてラッキーなのだろうと思えた1日でした。

◎体感型カエル館KawaZoo 静岡県賀茂郡河津町梨本377-1 TEL.0558-36-3990

◎あわしまマリンパーク「カエル館」 静岡県沼津市内浦重寺186 TEL.055-941-3126

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2022年6月28日 (火)

日本の湖水地方、猪苗代にすむというファンタジーのカエル。/かえるモノ語り-自然と文化をつなぐカエル66 「ほっと・ねっと」2022年6月号

<日本の湖水地方、猪苗代にすむというファンタジーのカエル。>

高山ビッキ(100年カエル館)

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 前回、本連載では『ピーターラビット』シリーズの絵本の一冊に登場する、カエルのジェレミー・フィッシャーを紹介しましたが、その舞台はイギリス北部の湖水地方でした。

 イギリスには“もう一人”ミスター・トード(ヒキガエル氏)というカエルが、ジェレミー・フィッシャーとだいたい同じ時代に描かれた、ケネス・グレアムの童話『たのしい川べ』の中で冒険を繰り広げます。こちらはイギリスのテムズ川付近の川べにすんでいます。

 ジェレミー・フィッシャーもヒキガエル氏も湖や川などの淡水にすんでいます。

 そして、猪苗代町にあるアクアマリンいなわしろカワセミ水族館は、福島県に棲息する淡水生物を展示紹介しています。ここでは水槽の生態展示で福島県の在来種のカエルを見ることができます。

 カエルは身近にいる生きものとは言え、日頃民家の庭などで出合うのは二ホンアマガエルぐらいだと思うのですが、同じ在来種でも、田んぼ、山中、渓流、樹上と、生息地の異なるカエルたちが、一堂に会したように集まる様子は壮観でさえあります。

 先日、同館を訪れたとき、居並ぶ在来種の中で特にその“キャラ”に惹かれたのはアズマヒキガエルで、ヨコを向いたまま、どうも隣のカエルの水槽のエサを狙っているようでした。

 その貪欲な食いしん坊ぶりは、『たのしい川べ』のヒキガエル氏に通じるものを感じました。

 また、カワセミ水族館の水槽をひとつひとつ見ていくと、絵本の中で釣りをするジェレミー・フィッシャーのゴムぐつを引っぱったゲンゴロウや、植物のアシの中にひそんでいる川ネズミがいて、まさにビアトリクス・ポターが観察して描いた、湖水地方の自然がそこに出現したようでした。

 やはりここは日本の湖水地方なのだ、と確信できた気がしました。

100年カエル館は、今年はこのカワセミ水族館で、コラボ企画の「カエル展」を716日から1127まで開催することになりました。

 ところで、日本では童話作家の石井桃子の翻訳で親しんだ人も多い『ジェレミー・フィッシャーどんのおはなし』ですが、一緒にイベントの準備を進めているカワセミ水族館のスタッフのお一人が、同姓同名の石井桃子さんだったことに、偶然とは思えないファンタジーを感じました。

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その姿にはちょっと哀愁もある、カエル好きのヒーロー。/かえるモノ語り-自然と文化をつなぐカエル65 「ほっと・ねっと」2022年5月号

<その姿にはちょっと哀愁もある、カエル好きのヒーロー。>

高山ビッキ(100年カエル館)

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 イギリスの絵本作家、ビアトリクス・ポター(1866_1943)。彼女の「ピーターラビット」シリーズは日本でもとても親しまれています。特に今年はその出版から120周年ということで、新訳の出版も始まりました。

 同じシリーズには、「ミスター・ジェレミー・フィッシャーのお話」もあります。もしかするとよほどカエルに興味がある人でなければご存じないかもしれません。

 ジェレミー・フィッシャーはカエルです。

 モデルは、その姿形からすると、ヨーロッパに比較的多く棲息しているアカガエル系のカエルでしょう。

 ずいぶん前のことになりますが、私はこのジェレミー・フィッシャーに会いたくて、ひとりイギリス北部の湖水地方にある、作者が後半生を過ごしたヒルトップ農場を訪ねたことがあります。

 まだインターネットのない時代。そこで「ピーターラビット」に会えるのは確かでも、そこにジェレミーに関する資料展示やミュージアムグッズがあるかどうか、事前情報なしに向かったのですが……、会えました。

 ジェレミーのグッズだけでも、オルゴール、陶磁器の置物、石けん、パズルなどいろいろあり、特に英国のフィギュアブランド「ボーダーファインアーツ」のジェレミー(写真)には、その精巧さに魅了され、今も100年カエル館のジェレミー・フィッシャーのコーナーで“センター”を取っています。

 1906年に出版されたジェレミーの「お話」の中で、彼は夕食にカメやイモリの両生爬虫類界の名士を招待すべく、小魚を釣りに行きます。でも全然釣れず、大きなマスに飲まれそうになるなど散々な目に遭って、最後は友人たちにテントウムシ・ソースをかけたバッタのローストをごちそうします。

 ジェレミーという名前には「悲嘆」という意味も込められていて、このお話を書いたときの彼女は私生活上とても辛いときにあったようです。

 また、当時の欧米で、カエルの絵本が好意的に受け入れられるかどうかわからない状況を押し切っての出版でした。

 結果は他の作品に負けない人気を博しました。

 21世紀の現在も、世界のカエル好きにとって間違いなくヒーローです。

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