2024年6月16日 (日)

カエルの色彩変異とカエルアートマンがカラフルな理由/かえるモノ語りー自然と文化をつなぐカエル90

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<カエルの色彩変異とカエルアートマンがカラフルな理由>

100年カエル館

高山ビッキ 

 

 カエルの体色といえば日本では、グリーン系やブラウン系の印象が強いと思います。ところが近年、よく話題になるのが、水色、ピンク、黄色(金色)と色彩変異が見られるアマガエルの発見。今年も福岡県篠栗町の田畑で水色のニホンアマガエルが見つかり、飼育することになった地元の高校生によって「そら」と名づけられたことが新聞報道されていました。

 色変わりしたカエルは、毎年この季節になると話題になり、もちろん、大多数派のグリーン系のアマガエルと比べれば珍しい個体に違いないのですが、意外に多いのかもしれないとさえ思えます。発見の報告が増えた背景には、今世紀になってスマホやSNSが浸透しサンプル数が格段に増えたことも言われています。

 カエルの色彩変異に関する論文も発表している広島大学両生類研究センターの三浦郁夫教授によれば、カエルの皮膚には基本的に3種類の色素細胞(表皮側から黄色細胞、虹色細胞、黒色細胞の順で3層に配置)が存在していて、通常のアマガエルのグリーン系の色は「虹色細胞が青色付近の波長の光を外に返し、途中、黄色細胞の黄色い色素を通過するため、両色が混ざって発現する」(「カエルにおける色彩発現の遺伝的メカニズム」より)そうです。これに対して青いカエルは黄色素が欠損するなど黄色のフィルターがなくなって起こる現象。色彩変異はアマガエルだけでなく、アカガエルでもアオガエルでも起こり、それぞれの色素細胞の配置のしかたによって発現する色味に違いがあるようです。

 そのようなカエルの色彩変異のしくみを知って気づいたことがありました。現在、100年カエル館で展示しているスケッチ画の「カエルアートマン」が、日本に棲息しているカエルをもとに描かれているのにカラフルである理由です。

 作者の柴田まさるさんは生前定年まで印刷会社に勤めていました。印刷の仕事をすることで、ひとつの色の出現をCMYK(シアン・マゼンタ・イエロー・ブラック)の4色の掛け合わせで知覚するようになり、一種一種のカエルの体色を分解して視ていたのではないか、と。その証拠にカエルアートマンの絵を見た後に、併せて展示した前田憲男さんが撮影した同種のカエルに目を移すと、分解された色味が統合されて1つの色に返っていくように見えました。

10月5日に開催予定の100年カエル館トークイベントでは三浦郁夫先生にご講演をいただきます(会場・喜多方プラザ文化センター)。

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2024年6月 3日 (月)

「たのしい川べ」に住むヒキガエル氏のお屋敷を夢見て/かえるモノ語りー自然と文化をつなぐカエル89

かえるモノ語りー自然と文化をつなぐカエル89

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<「たのしい川べ」に住むヒキガエル氏のお屋敷を夢見て>

100年カエル館

高山ビッキ

 

 今年もしだれ桜で賑わった喜多方の4月。「喜多方さくらまつり」では、「桜ウォーク」が開催された日、100年カエル館のわきを大勢の参加者の皆さんが通って行かれました。

 同じ頃、本館からゆっくり歩いて100秒ほどの所にある濁川河川公園(にごりがわかせんこうえん)の土手沿いの桜並木も見頃を迎えていました。

 生家が田付川を望む土手沿いにあったので、川べは子どもの頃から身近な遊び場でした。建設会社を経営していた祖父が施工したと聞いていた昭和4年に完成した樒橋(しきみばし)(現在は新しい橋に架け替えられている)を起点に、そこからもうひとつ先にある橋までの周囲1キロにも満たない川べがすべての世界。

河原の石に絵を描いたり、夏休みに川べりの木の根元にカブトムシを捕獲するためにスイカを仕掛けたり(実際には捕獲に失敗し可哀想に思った近くの“おじさん”が自分のカブトムシを分けてくださった)、川風に吹かれながらお弁当持ち(ピクニックのこと)、友達と幼稚園を抜け出して川べに行き草地だと思った場所がぬかるみで足がずぶぬれになって……と、楽しいことも悲しいことも川べが教えてくれた気がします。

 イギリスの童話作家ケネス・グレアム(1859―1932)が20世紀初頭に書いた『たのしい川べ』の世界では、テムズ川の支流の川べで、モグラくんや川ネズミくんやアナグマさん、そしてヒキガエル氏が、喜怒哀楽のさまざまな感情を抱いて暮らしています。ヒキガエル氏はトリックスター的な存在で、冒険好き。何かに夢中になって危険な目に遭うこともあるのですが、川べの友達に助けられながら切り抜けます。このヒキガエル氏をモデルにして影絵作家の藤城清治氏が生み出したキャラクターが、昭和40年代の子どもたちの人気者ケロヨンでした。

 100年カエル館には「ヒキガエル氏」の人形も、「ケロヨン」のお弁当箱も展示しています。最近、喜多方の「たのしい川べ」の近くにも、童話に登場するようなヒキガエル氏のお屋敷があればもっと楽しいのではないか。そんなヒキガエル氏の夢とも100年カエル館を運営する私たちの夢ともつかない夢を抱いています。

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2024年4月25日 (木)

喜多方の桜の季節にカエルアートマンが発進しました。/かえるモノ語りー自然と文化をつなぐカエル88

 かえるモノ語りー自然と文化をつなぐカエル88

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「カエルアートマン×20」展(100年カエル館洋室展示室にて)

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喜多方の日中線しだれ桜並木と濁川河川公園の桜並木(2024年4月15日撮影)

〈喜多方の桜の季節にカエルアートマンが発進しました。〉

100年カエル館

高山ビッキ

 

 「喜多方さくらまつり」が幕を開けた日の前日、100年カエル館の企画展が始まりました。

 カエルグッズを展示するミュージアムの同館が館内で開催する初の美術展。企画から広報、そして展示作業を経て完成しました。

 メインの展示作品は、本連載でも時々紹介させていただいたカエル好きのアーティスト、故柴田まさるさんが描いたスケッチ画によるカエルアートマン20体。一体一体をカエルの写真家前田憲男さんが撮影したカエルたちと併置すると、合体したかのように命が吹き込まれ、野山や水辺に飛び出していくイメージが湧きました。

 展示スペースは、普段テレビアニメなどで親しまれてきたカエルのキャラクターや、欧米の名作童話から生まれたカエルグッズなど「ファンタジックなカエルの世界」を紹介している洋室展示室。その壁や展示棚を使用してどんなしつらえができるかに腐心しましたが、カエルアートマンたちはいとも自然にカエルの「なかま」ごとの棲み分けを見せてくれました。

「なかま」ごとのテーマは6つ。

 科目に分けられたカエルのグループの中で、世界的にも大集団を形成しているアカガエル科でさらに名前にアカガエルが付くカエルから生まれた「正統派カエルアートマン」。

 かつて自然史上因縁の分布域のせめぎ合いが会津で見られた2種の「伝統系カエルアートマン」、好き嫌いが大きく分かれるヒキガエル科の「個性派カエルアートマン」、福島県出身の動物学者田子勝彌博士の名前が付けられた日本固有種の「田子四兄弟」、地球上を移動して分布域を広げる「開拓的カエルアートマン」、そして誰もが思わず「かわいい!」と感じる「かわいい系カエルアートマン」に分類して展示しています。

 百年前、欧米で博物画や自然観察からカエルのジェレミー・フィッシャ―をはじめ愛らしいカエルのキャラクターが生まれたように、日本のカエルが変身して生まれたカエルアートマンたちが発進しました。

 引き続き5月は3日から12日まで「カエルアートマン×20 日本のカエルがHENSHIN」を開催しています。

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2024年4月 8日 (月)

今年は京の都にもカエルアートマンが翔んで上洛。/かえるモノ語りー自然と文化をつなぐカエル87「ほっと・ねっと」2024年3月

かえるモノ語りー自然と文化をつなぐカエル87

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<今年は京の都にもカエルアートマンが翔んで上洛。>

100年カエル館 

高山ビッキ

 

毎年弥生三月、京都で冬の空気感と春の光りを同時に感じる機会があります。

さらに今年は、100年カエル館では春に開催する「カエルアートマン展」を9月に京都でも開催することになり、その打ち合わせも兼ねて訪ねました。

思えば私たちの「カエル文化」をテーマにした展示イベントは、京都とのご縁で始まりました。

まだ100年カエル館を創設する前の2002年。当時、東京・赤坂アークヒルズにあった、京都市の観光物産のためのアンテナショップ「京都館」で「京都に・恋し(小石)・カエル」展と題した企画展を開催しました。

カエルの魅力をその頃考えられるだけ詰め込んだ企画でした。タイトルは学生時代を京都で過ごした父が晩年、蛙を詠んだ俳句に「恋し」と「小石」を掛詞にしていたことがヒントになりました。

京の都に上洛するカエルたちのイメージで、10人以上のアーティストによる「小石カエル」が疑似藻の上で楽しく遊んでいるようにエントランスに展示。京友禅作家に染めて頂いたタイトル・タペストリーを天上から吊り下げて(写真)。

また会場空間のポイントにはカエルの案内役として喜多方から銅製、陶製、木製などの大きめのカエルたちを送って展示しました。

併設で同時開催した「京都の美術史に登場したカエルたち」では、「鳥獣戯画のカエル」(平安・鎌倉)、「織田信長の三足の蛙の香炉」(安土桃山)、「伊藤若冲のカエルの絵」(江戸中期)についてパネルで紹介。そして京都・大山崎にあるアサヒグループ大山崎山荘美術館からお借りした、明治時代に日本で活躍して京都とも縁のある英国人陶芸家バーナード・リーチの「カエルの絵皿」は実物を展示。現代作家の日本画も展示しました。

さらに京都中を歩き回って陶器、縮緬、和紙、蒔絵など京都ならではの工芸のカエルグッズを集めて販売しました。

関連イベントとして、大ガマが登場する歌舞伎「児雷也」で知られる河竹黙阿弥のひ孫で演劇研究家の河竹登志夫さんに「伝統芸能とカエル」についてお話して頂いたのも懐かしい思い出。

かなりヤンチャな企画でしたが、今も「伝説のカエルイベント」と言っていただくことがあります。振り返るとその後100年カエル館で企画するイベントの基本にすべてトライしたような気がします。

2024年秋、カエルアートマンが喜多方から京都に翔びます。

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喜多方とオーストリア、2地点をつなぐ魅力とカエル。/かえるモノ語りー自然と文化をつなぐカエル86「ほっと・ねっと」2024年2月

かえるモノ語りー自然と文化をつなぐカエル86

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<喜多方とオーストリア、2地点をつなぐ魅力とカエル。 >

100年カエル館 高山ビッキ

 

 今年1月、ある例会で喜多方の暮らしや観光などを座標軸にポジショニングして喜多方の魅力についてお話する機会を頂きました。

 私自身振り返れば、高校卒業後故郷喜多方を離れ、20年ほど前に100年カエル館を創設してからは、2地点居住の生活をするなかで、喜多方をいくらか外側から捉える視点をもつようになったのではないかと思いました。

 長く広告やPR誌等の制作に携り、首都圏を中心に各地を取材した経験に照らし合わせても、喜多方には他の地域にはない独特の魅力があると実感できたからです。

 そんな時、耳に飛び込んで来たのが「福島県郡山は東北のウィーン」。そう紹介するのはテレビ番組「ケンミンショ―(「秘密のケンミンSHOW極」)でした。郡山は08年に「音楽都市」を宣言し、若い世代を中心に合唱や管弦楽の活動をしている人が多く、ウィーンのような「楽都(がくと)」をめざしているようです。

 私は喜多方も、あえて言えばウィーンを含むオーストリアに似た魅力をもっているのではないかと考えていたところでした。

 今世紀の初めですが、オーストリア政府観光局の記者研修旅行に招待されて、首都ウィーン、音楽祭で知られるザルツブルク、山間にある温泉地のバート・ガスタインを訪ねました。

 その時感じたオーストリアの魅力と、今は旅するように暮らしている喜多方そして会津の魅力の共通点とは……。

 オーストリアワインと会津の銘酒、ウィーンのコーヒー文化と喜多方の蔵カフェ、アルプス山脈と会津の山々で楽しめる山歩きやウインタースポーツ、市民活動としての音楽や美術も盛んで、「塩の砦(とりで)」を意味するザルツブルグと塩川町は「塩」の歴史で繋がっているかのよう。

 ウィーンと同じく会津若松や喜多方も盆地の中に発展した街で、ウィーンにはミュージカルでも人気のエリザベート皇妃が住んだシェーンブルグ宮殿がありますが、会津若松には鶴ヶ城があり、幕末には武家の女性たちがまさに身を挺して守った歴史があります。

 そんな共通要素の重ね合わせが「まちづくり」に役立つこともあれば、グローバル都市としてさらなる魅力の発信につながることもあるのではないか、と。

 オーストリアでは陶磁器や銀器など工芸品ブランドのカエルと出合うことも多く、いくつか連れて帰りました。

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2024年1月30日 (火)

カエルアートマンに変身することもある日本のカエルたち/かえるモノ語りー自然と文化をつなぐカエル85「ほっと・ねっと」2024年1月

かえるモノ語りー自然と文化をつなぐカエル85

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<カエルアートマンに変身することもある日本のカエルたち>

100年カエル館

高山ビッキ

 

 カエルアートマンは4年前にデビューする予定でした。

100年カエル館が所蔵する故柴田まさる氏のスケッチ画を紹介する「カエルアートマン展」を東京・新宿の京王プラザホテルで開催する予定だったのですが、折しも発生した新型コロナウィルスの感染拡大で中止になりました。

 この4年間を振り返れば、世の中が停滞したように感じる時期もあり、一方でかつてないような現象も起こり、歴史の大きな転換期に遭遇した思いでした。

 昨年再開した本館は、今年、4月から11月までの月の前半の10日間ほどを開館いたします。そして、4月と5月には、4年前に中止となったその「カエルアートマン展」を同館内で開催します。

 本展の見どころは、私たちがアートマンと名付けた柴田さんのスケッチ画20点のカエルたちですが、キャラクター性を強調して描かれた1点1点に作者は何のカエルを基に描いたか、種名を手書きで付していました。

 トノサマガエル、ニホンアマガエル、アズマヒキガエルなど、一般によく知られていて福島県にも生息しているカエルもいますが、アイフィンガーガエルやハロウエルアマガエルといった、外国の研究者の名前などが付けられ日本のカエルとは思えない種名で、沖縄県や南西諸島に分布しているカエルもいます。

 身近な生きものとはいえ、名前と顔が合致しない可能性もあると思い、ここでもう一つの見どころとなりますが、カエルの写真家として広く知られ、日本のカエル全種を生息地に赴いて撮影されている前田憲男氏にご協力いただき、一体一体のカエルアートマンに同種のカエルの写真を併置させて展示いたします。

 自然の中で生活しているカエルをどんなふうに捉えてキャラクター化し、アート作品にしたのか、イメージを膨らませてご覧いただける展示になればと思っています。

 そして日本列島は、各地に時にカエルアートマンに変身するかもしれない(?!)、楽しいカエルたちが生息する生物多様性の土地であることをお伝えしたい。

 多くのカエルが繁殖シーズンを迎える頃。カエルの魅力を引き出す企画展を目指しています。

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2023年12月28日 (木)

「蛙化現象」と守護神のカエル/かえるモノ語りー自然と文化をつなぐカエル84「ほっと・ねっと」2023年12月

かえるモノ語り~自然と文化をつなぐカエル84

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<これからの季節、「蛙化現象」に気をつけて。>

高山ビッキ(100年カエル館)

 

 12月のはじめに発表された2023年ユーキャン新語・流行語大賞のベストテンに選ばれた「蛙化現象」。数年前から言われ始めた言葉ですが、今年は女子高生の間で話題になったことで、「カエル関係者」としては一昨年の「かえる愛」に続く栄えある「カエル」のベストテン入りとなりました。

 男性にとっては微妙な言葉で、女子は振り向かせたいと思っていた相手が振り向いたとたんに嫌いになったり、つき合い始めた男性のちょっとした行動で急に冷めたりする現象と捉えられています。

 そうした女性の心の移ろいやすさや感情の振れ幅の大きさは古く「女心と秋の空」(元々は「男心と秋の空」とも)と言われ、今に始まった現象ではなく、英語圏では女性心理を表現する同様の言葉は「蛙化現象」とは無関係の「ICK(イック)」と呼ばれているそうです。

 それが今なぜ日本では女子高生など若い女性に「蛙化現象」と呼ばれているのでしょうか。

 思い至るのは「グリム童話」で知られる「カエルの王さま」です。この物語の中に登場するお姫様は、魔法でいわば「蛙化」した状態の王子様を嫌い冷たくしますが、嫌悪感が頂点に達してそのカエルを壁にたたきつけたところで魔法が解けてカエルは「王子化」、元の王子の姿に戻って物語は二人が結婚するハッピーエンドを迎えます。

 一方、日本には「うばっ皮」という民話があり、カエルが蛇から救ってくれた娘に恩返しするために、かぶるとカエルのようにしか見えないうばっ皮を贈り娘の旅の途中の安全を守ります。いわば「蛙化」していた娘が、最後はそのうばっ皮を脱いで美しい姿に。幸せな結婚をするシンデレラストーリーとして語られる場合もあります。

 洋の東西を問わず民話や童話には子どもに読み聞かせするお話の中に、少女が大人の女性へと成長する過程で起り得る心理的な変化や、遭遇するかもしれない危険なことが紛れ込んでいることがあります。

 それを「蛙化現象」と名付けたことで、現代の若い女性たちも自らの深層心理を知り、またはそれを乗り越えることで大人になるためのきっかけにしているのかもしれません。

カエルは巡り巡って女性たちの守護神の役割を担っていると言えそうです。

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2023年11月20日 (月)

冬眠に向かう蛙に時の流れの不思議を感じて。/かえるモノ語りー自然と文化をつなぐカエル83「ほっと・ねっと」2023年11月

かえるモノ語り~自然と文化をつなぐカエル83

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<冬眠に向かう蛙に時の流れの不思議を思って。>

高山ビッキ(100年カエル館)

 

今年2023年は11月までの3ヶ月間、各月の前半の十日間ほどでしたがおかげさまで100年カエル館を開館することができました。

 連続猛暑日の記録を更新していた9月と紅葉シーズンの11月では、たった三月とは思えない時の流れの早さを気温や自然の変化の中に感じました。

 ご来館者のなかに、お父さんとの散策中にたまたま立ち寄ったという近所にお住まいの小学生のお嬢さんがいました。

 彼女が館内で目を止めしばらく見ていたのは、その時洋室展示室に設置していた、100年カエル館を創設する前の写真。「高山建設」の事務所だったこの部屋は蒐集したカエルグッズが分類されることなくあふれ返っていました。

 大きな展示ケースが今も昔も同じ場所にあるので察するに彼女は、同じ空間の「今」と「昔」の時の流れの不思議に興味をもったのではなかと思いました。

 近くに本館があることは知らなかった父娘(おやこ)さんでしたが、昨年アクアマリンいなわしろカワセミ水族館とコラボした「カエル展」はご覧になっていて、その時展示していた陶製のベルツノガエルの「ベルさん」との再会も喜んでくれました。

 100年カエル館は、来春3月まで冬季休館いたします。4月から始まる来年の開館では楽しい企画展も考えております。

 また、カエルが野外で静かに冬眠するこれからの季節、双葉郡富岡町にある「とみおかアーカイブ・ミュージアム」では、福島に生息しているカエルたちを数多く撮影して個展や出版などの活動を行っている矢内靖史さんの写真展「かえるあい」が開催されています(2024年2月12日まで)。

 広い会場に展示された大型パネルの約50点の写真の中で愛らしい姿を見せるカエルたち。小さな生きもの夢の中で、見られているのは私たちの方かもしれないと思える不思議な空間。

 12月9日(土)にはギャラリートークが行われますが、私もトークに参加させていただき、いま地球上で静かに育まれている「かえる愛」をテーマにお話させていただく予定です。写真を通して愛でるカエルと、グッズで楽しむカエル。二つの視点が交差するトークになればと思っています。

矢内靖史写真展「かえるあい」

会期:2023年10月21日(土)~2024年2月12日(月)9:00~17:00(最終入館16:30)

会場:とみおかアーカイブ・ミュージアム

〒979‐1192福島県双葉郡富岡町大字本岡字王塚760‐1 [休館日]月曜日(月曜祝日の場合、翌平日)

TEL.0240-25-8644

入館無料

<ギャラリートーク>

12月9日(土) 13:00~14:30

※詳細は https://www.manamori.jp/museum/030/20231012192728.html をご覧ください。

 

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2023年10月17日 (火)

朝ドラのモデルになった牧野富太郎博士のフローラとフロッグ/かえるモノ語りー自然と文化をつなぐカエル82「ほっと・ねっと」2023年10月

かえるモノ語り~自然と文化をつなぐカエル82

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<朝ドラのモデルになった牧野富太郎博士のフローラとフロッグ>

高山ビッキ(100年カエル館)

 

 9月までの半年間放送されていたNHK朝の連続テレビ小説『らんまん』。「日本の植物学の父」と呼ばれた牧野富太郎博士をモデルにしたドラマでしたが、史実に縛られないのびやかなストーリー展開で、テレビ画面を通じても草花にふれられたせいかとても幸せな気持ちになりました。

 そして普段、植物ではなくカエルについて考えている筆者にとっても、懐かしくよみがえることの多いドラマでした。

 何と言っても妻となる寿恵子が、結婚する前、地べたを這いつくばって植物を観察する万太郎を「カエル先生」と呼んだこと。万太郎は土佐から東京に出て来て何度か引っ越しをしますが、石製の2匹のカエルがなぜかいつも一緒でした。植物画を描く机の上にはヒキガエルを模した文鎮を置いていることも。私にとっては祖父と父を思い出すのに充分でした。

 100年カエル館では、牧野博士とほぼ同時代を生きた、明治生まれのカエルのモノのコレクター、小澤一蛙氏が蒐集したカエルも展示しているのですが、ドラマに描かれた明治から昭和へと変わりゆく東京の様子は、どこかに小澤さんの姿を見かけそうで、画面の中に誘われました。

 また、若い頃同じ長屋の住人だった文学青年がドラマの最後の方で、実は明治の文豪坪内逍遥だったというサプライズもありました。私たちのミュージアム館内にやはり展示コーナーを設けている、演劇研究家にしてカエル好きの河竹登志夫氏。その父の繁俊氏が逍遙と深い係わりがあり、ドラマで「逍遙」が話題にしていた早稲田の演劇博物館の館長も務めました。生前登志夫氏は、幼い頃逍遙に頭をなでられたことを覚えているとエッセイに書き遺しています。

 ドラマ同様、牧野富太郎は東京大学に長く勤務しましたが理学博士の学位を受けたのは60代に入ってから。それまではひたすら日本のフローラ(植物相)を明らかにすべく植物の標本作製にエネルギーを注いだと言っていいのでしょう。

 日本の植物学も、カエルを含む両生類の研究も、近代に入って最初はドイツ人シーボルトら外国の研究者によって進められました。

 それを自らの手で採取し、描き、図鑑にし、日本人の手で未来に伝えようとした博士のロマンは、現代の私たちにも大きな夢と希望を与えてくれるものです。

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<関連サイト>

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カエル大学通信 www.mag2.com/m/0001378531.html

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2023年9月18日 (月)

とんでもなく暑い8月、久しぶりにかえるくんに会いました。/かえるモノ語り―自然と文化をつなぐカエル81「ほっと・ねっと」2023年9月

かえるモノ語り~自然と文化をつなぐカエル81

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<とんでもなく暑い8月、久しぶりにかえるくんに会いました。>

高山ビッキ(100年カエル館)

 

 オランダのかえるくんにばったり、喜多方で出会ったような気持ちになりました。

 毎年夏に開催されている、「喜多方発21世紀シアター」。今年のプログラムの中にオランダ生まれの「かえるくん」がいたのでした。残念ながら観に行けなかったのですが、それはオランダの絵本作家、マックス・ベルジュイスの作品をもとにした人形劇でした。

 「かえるくん」といえば、アメリカの絵本作家、アーノルド・ローベルの『がまくんとかえるくん』のかえるくんの方が先に生まれ、日本でもよく知られているかもしれません。ローベルは1933年生まれで、その〝ふたり〟の仲良しのカエルたちの物語シリーズが出版されたのは70年代。 

 一方、ベルジュイスは1923年生まれですが、彼の「かえるくん」シリーズが始まったのは80年代の終わりでした。

 ベルジュイスの「かえるくん」は、運河でのウォータースポーツが盛んなオランダのカエルらしく、いつも赤いボーダー柄の水泳パンツを履いています。

 緑色と茶色の抑えた色調で描かれたローベルの絵本と違い、ベルジュイスの絵本は色彩豊か。「がまくんとかえるくん」でふたりの関係以外は外の世界の生きものとして描かれるのに対して、ベルジュイスの「かえるくん」の仲間たちは、あひるさん、こぶたさん、ねずみくん、のうさぎくんたちです。かえるくんは他の生きものたちと暮らす中で、なぜ自分はトリのように飛べないのかと考えたり、旅人のような存在のねずみくんに自分も旅に連れて行ってもらうがすぐに帰りたがったり……。かわいい姿形の動物たちでしか伝えられない方法で、私たち誰もが日頃漠然と抱いている「自由って何?」「自分って何?」といった疑問にさりげなく答えてくれます。

 2005年に他界したマックス・ベルジュイス。その2年前にオランダの評伝作家ヨーケ・リンデルスさんの執筆で彼の評伝『かえるでよかった』が出版されています。07年にその日本語訳が出版され講演のために来日されたヨーケさんに、100年カエル館は当時発行していた「カエルタイムズ」で取材させていただきました。

 写真の「かえるくん」人形はそのときヨーケさんからいただいたもので、本館「名作童話に登場するカエル」として展示しています。

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<関連サイト>

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