2022年8月 5日 (金)

アジサイの季節に"伊豆のカエル旅"に行ってきました。/かえるモノ語り-自然と文化をつなぐカエル67「ほっと・ねっと」2022年7月

<“伊豆のカエル旅”に行ってきました。>

高山ビッキ(100年カエル館)

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静岡県の河津(かわづ)町は、早咲きの桜「河津桜」で知られ、春には毎年各地から観光客が集まります。

そこに4年ほど前、日本最大の体感型カエル館、その名もKawaZoo(カワズ―)ができてからは、カエル好きの間では「カワズ―行った?」が挨拶代わりになりました。

にもかかわらず、なかなか足を運べないでいたのですが、この6月、ついに行って参りました。

沼津市に仕事で30年以上もお世話になったMさんご夫妻がお住まいで、今回、「カワズ―」と、沼津にある「あわしまマリンパーク」のカエル館めぐりをメインにした、伊豆のカエル旅へとご案内いただいたのでした。

三島駅で出迎えてくださったMさんのクルマで、伊豆といえば現在大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で注目の北条一族ゆかりの地を通り、一路カワズ―へ。

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ここカワズ―では常時120種の国内外のカエルを展示しています。昨年文庫になった拙著『ときめくカエル図鑑』に紹介したカエルたちと同種のカエルも多くいて、久しぶりに対面できました。

美しくもはかなげにカサッコソッと動くヤドクガエルたち。

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カエルは水槽の生態の中でも、葉っぱや枯れ枝、土の中に隠れたり、潜ったりしている場合があり、木の葉に間違えそうなコノハガエルとは目が合ったのですが、コケに似た姿のコケガエルにはこの日はお目にかかれませんでした。

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無人島にある水族館あわしまマリンパークには、対岸から約3分、船に乗って向かいます。

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大きな水槽の水の中にプカリプカリとビニールの玩具のように浮いているアフリカツメガエルは、生きているように見えず大丈夫かなと思うと、意表を突いたように動き出します。

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 人見知り(?)とも思えるカエルも多いなかで、つぶらな瞳でアイコンタクトをとってくれたのは宮古島などに棲むミヤコヒキガエル。

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こうして半日カエルたちとの時間を楽しんで、三島駅に戻る途中、Mさんに「こんなところもあるよ」と言われて立ち寄ったのが、三嶋大社の摂社、楊原神社(やなぎはらじんじゃ)。

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ここに「三島の七石」の一つとされる蛙石がありました(写真)。

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 まだ6月だというのに猛暑日だったこの日。雨乞いの祈りも込められていたかもしれないこの蛙石に、ハッピーフロッグ、今日はなんてラッキーなのだろうと思えた1日でした。

◎体感型カエル館KawaZoo 静岡県賀茂郡河津町梨本377-1 TEL.0558-36-3990

◎あわしまマリンパーク「カエル館」 静岡県沼津市内浦重寺186 TEL.055-941-3126

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2022年6月28日 (火)

日本の湖水地方、猪苗代にすむというファンタジーのカエル。/かえるモノ語り-自然と文化をつなぐカエル66 「ほっと・ねっと」2022年6月号

<日本の湖水地方、猪苗代にすむというファンタジーのカエル。>

高山ビッキ(100年カエル館)

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 前回、本連載では『ピーターラビット』シリーズの絵本の一冊に登場する、カエルのジェレミー・フィッシャーを紹介しましたが、その舞台はイギリス北部の湖水地方でした。

 イギリスには“もう一人”ミスター・トード(ヒキガエル氏)というカエルが、ジェレミー・フィッシャーとだいたい同じ時代に描かれた、ケネス・グレアムの童話『たのしい川べ』の中で冒険を繰り広げます。こちらはイギリスのテムズ川付近の川べにすんでいます。

 ジェレミー・フィッシャーもヒキガエル氏も湖や川などの淡水にすんでいます。

 そして、猪苗代町にあるアクアマリンいなわしろカワセミ水族館は、福島県に棲息する淡水生物を展示紹介しています。ここでは水槽の生態展示で福島県の在来種のカエルを見ることができます。

 カエルは身近にいる生きものとは言え、日頃民家の庭などで出合うのは二ホンアマガエルぐらいだと思うのですが、同じ在来種でも、田んぼ、山中、渓流、樹上と、生息地の異なるカエルたちが、一堂に会したように集まる様子は壮観でさえあります。

 先日、同館を訪れたとき、居並ぶ在来種の中で特にその“キャラ”に惹かれたのはアズマヒキガエルで、ヨコを向いたまま、どうも隣のカエルの水槽のエサを狙っているようでした。

 その貪欲な食いしん坊ぶりは、『たのしい川べ』のヒキガエル氏に通じるものを感じました。

 また、カワセミ水族館の水槽をひとつひとつ見ていくと、絵本の中で釣りをするジェレミー・フィッシャーのゴムぐつを引っぱったゲンゴロウや、植物のアシの中にひそんでいる川ネズミがいて、まさにビアトリクス・ポターが観察して描いた、湖水地方の自然がそこに出現したようでした。

 やはりここは日本の湖水地方なのだ、と確信できた気がしました。

100年カエル館は、今年はこのカワセミ水族館で、コラボ企画の「カエル展」を716日から1127まで開催することになりました。

 ところで、日本では童話作家の石井桃子の翻訳で親しんだ人も多い『ジェレミー・フィッシャーどんのおはなし』ですが、一緒にイベントの準備を進めているカワセミ水族館のスタッフのお一人が、同姓同名の石井桃子さんだったことに、偶然とは思えないファンタジーを感じました。

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その姿にはちょっと哀愁もある、カエル好きのヒーロー。/かえるモノ語り-自然と文化をつなぐカエル65 「ほっと・ねっと」2022年5月号

<その姿にはちょっと哀愁もある、カエル好きのヒーロー。>

高山ビッキ(100年カエル館)

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 イギリスの絵本作家、ビアトリクス・ポター(1866_1943)。彼女の「ピーターラビット」シリーズは日本でもとても親しまれています。特に今年はその出版から120周年ということで、新訳の出版も始まりました。

 同じシリーズには、「ミスター・ジェレミー・フィッシャーのお話」もあります。もしかするとよほどカエルに興味がある人でなければご存じないかもしれません。

 ジェレミー・フィッシャーはカエルです。

 モデルは、その姿形からすると、ヨーロッパに比較的多く棲息しているアカガエル系のカエルでしょう。

 ずいぶん前のことになりますが、私はこのジェレミー・フィッシャーに会いたくて、ひとりイギリス北部の湖水地方にある、作者が後半生を過ごしたヒルトップ農場を訪ねたことがあります。

 まだインターネットのない時代。そこで「ピーターラビット」に会えるのは確かでも、そこにジェレミーに関する資料展示やミュージアムグッズがあるかどうか、事前情報なしに向かったのですが……、会えました。

 ジェレミーのグッズだけでも、オルゴール、陶磁器の置物、石けん、パズルなどいろいろあり、特に英国のフィギュアブランド「ボーダーファインアーツ」のジェレミー(写真)には、その精巧さに魅了され、今も100年カエル館のジェレミー・フィッシャーのコーナーで“センター”を取っています。

 1906年に出版されたジェレミーの「お話」の中で、彼は夕食にカメやイモリの両生爬虫類界の名士を招待すべく、小魚を釣りに行きます。でも全然釣れず、大きなマスに飲まれそうになるなど散々な目に遭って、最後は友人たちにテントウムシ・ソースをかけたバッタのローストをごちそうします。

 ジェレミーという名前には「悲嘆」という意味も込められていて、このお話を書いたときの彼女は私生活上とても辛いときにあったようです。

 また、当時の欧米で、カエルの絵本が好意的に受け入れられるかどうかわからない状況を押し切っての出版でした。

 結果は他の作品に負けない人気を博しました。

 21世紀の現在も、世界のカエル好きにとって間違いなくヒーローです。

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2022年4月29日 (金)

100年カエル館に新しい?!ガマ仙人が現れた。/かえるモノ語り-自然と文化をつなぐカエル64 「ほっと・ねっと」2022年4月号

<100年カエル館に新しい⁈ガマ仙人が現れた。>

高山ビッキ(100年カエル館)

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来訪神のように現れたガマ仙人。

その正体は、人形作家、林垣内瑞枝(はやしがいとみずえ)さんからの寄贈作品の「GAMA仙人」。2匹の「ガマ」それぞれが子育てをしているのか、「それはそれはしい幼子」を連れていました

 そのキュートな二人が、作家が生み出したガマ仙人というからびっくり。

 そういえば、仏教では紀元前にインドのルンビニで生まれたお釈迦様、ゴータマ・シッダールタの誕生日4月8日は、今でも花祭りとして祝われ、キリスト教では、その誕生が西暦紀元とされるイエス・キリストは、今では日本でもその降誕祭のクリスマスが年末に欠かせない行事になっています。

 そして我らがガマ仙人(蝦蟇仙人)は、お釈迦様やイエス様のように歴史に記録された人物ではないのですが、中国の道教にかかわる仙人とも伝えられ、そのルーツは5世紀頃に遡ることができます。

 日本でも特に江戸期に美術や工芸品のモチーフになり、今も寺社建築、祭りの山車、絵画、根付などに見ることができます。「カエル文化」的にとても重要な存在なのです。

 林垣内さんは、100年カエル館に展示されている骨董などの蝦蟇仙人を見て、「ガマ仙人はなぜガマ仙人になったんだろう」と考えたそうです。その結果生まれたのが、ガマに育てられた、この高貴な自然児とも言える、ガマ少年たち(写真)。

 その、アーティストならではの、まっすぐに真実を貫くような発想と表現に目が覚めるような思いがしました。二人のガマ少年を、その昔、ガマ仙人と呼ばれた人の一人、劉海蟾(りゅうかいせん)に因んで名づければ、リュウとカイでしょうか。

 初めて動物の人形を制作したという林垣内さんは、二人を育てたガマの造形を、ひとつは野外に生息するヒキガエルのように、もうひとつは、江戸の絵師が描いた「蝦蟇図」のように表現しています。

 100年カエル館は、現在、この「GAMA仙人」たちとコロナ収束後の再開の準備を進めています。

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2022年4月10日 (日)

土製の鉢の中に見つけた春と縄文のカエルの物語。/かえるモノ語り-自然と文化をつなぐカエル63 「ほっと・ねっと」2022年3月号

<土製の鉢の中に見つけた春と縄文のカエルの物語。>

 高山ビッキ(100年カエル館)

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 今年の冬は全国的に例年以上に寒い日が多かったせいか、3月になり啓蟄からお彼岸に向かって少しずつ温かくなっていくことがひときわうれしく感じられました。今頃近くの田んぼや池では、この土製の鉢の中(写真)のように、卵から孵った(かえった)オタマジャクシたちが泳いでいるかもしれません。

 そんな冬から春への季節の巡りは、縄文時代の人々も繰り返し感じていたことでしょう。近年、縄文文化に関する発掘調査やその研究報告、出版、博物館のイベントが増えています。新聞等メディアの報道でもさまざまな見解を読むことがありますが、文字で書き記されたもののない時代だけに、想像がかき立てられます。

 縄文時代に対するこれまでの一般的なイメージとして、稲作が始まる弥生時代の前の、狩猟採取を中心とした時代。文化度が低く原始的な暮らしをしていたという認識があったとしたら、再考すべきことが多いのではないかという見解が主流にあるようです。

 また、縄文文化といえば、日本の国土内だけで培われたイメージも少なからずあると思いますが、土器や石製の装飾品などの遺物の解釈などにより、大陸の諸文化との交流がまったくないとは考えにくいとも言われています。

 たとえばこの、カエルの造形とオタマジャクシの絵の装飾が内側に施された土製の鉢は、私の父が中国で購入してきたもので特に古いものではありません。でも、中国で日本の縄文時代のはじまりと同じ頃に起こった仰韶(ぎょうしょう)文化には、やはり、器の内側に蛙が描かれた彩陶(さいとう)器があると知って、この鉢に古くから伝えられた文化の一端を感じました。

 そして、以前、この連載でもカエルが描出された縄文土器、長野県曽利遺跡出土の通称「曽利の蛙」(蛙文・みづち文大深鉢)について書いたことがあります。まるでその装飾として浮彫されたカエルは現代のマグカップのカエルのデザインにも通じるキャラクター性がありました。

 文字のない時代、土器に施された装飾は物語の表現である可能性もあると言われます。今後の縄文文化の研究の進展によって、大陸の文化と共通性があったかもしれない縄文土器、そこに記された「カエルの物語」が読み解かれる日を楽しみにしています。

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2022年3月 6日 (日)

今も昔も空を見上げればカエルが降ってくる!?/かえるモノ語り-自然と文化をつなぐカエル62 「ほっと・ねっと」2022年2月号

<今も昔も空を見上げればカエルが降ってくる⁈>

高山ビッキ(100年カエル館)

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 冬に空から降ってくるものといえば、雪。しんしんと降る様子は神秘的で美しくもありますが、降り積れば雪かきが大変です。

 友人の真理さんから「でも最近の会津の雪は吹雪くように降るよね」と言われ、一月に喜多方に雪かきに戻ると、確かに子どもの頃の降り方とは大分ちがっているような気がしました。

 ただ世界各地で異常気象の報告があるなか、雪に混じってカエルが降ってくるわけではなく……?

 私は目撃したことはないのですが、2009年前後に日本国内数か所でカエルが空から降って来る事例が報告されました。

 実際に降っている状態を見たという報告よりは、水辺が近くにあるわけでもないのに、家の前にまだ生きている魚やオタマジャクシ、カエルを何匹も発見したというケースが多く、悪戯の可能性は充分考えられました。

 ただ、そうした現象は、自然科学の研究者の間では、飛んでいる鳥が捕食して呑み込んだオタマジャクシやカエルを何かの拍子に吐き出した可能性、そして、竜巻が起こったときに巻き上げられたオタマジャクシやカエルが降って来る可能性も否定できないようでした。

 その竜巻説。文献等によるとヨーロッパ、アメリカ、オーストラリアなど世界各地、古くは2世紀頃から20世紀までの記録がありました。

 そして21世紀の日本でも話題になったわけですが、いまだに決定的な科学的根拠が示されず、不思議な現象と受け止められるのは、旧約聖書の「出エジプト記」でナイル川にカエルが溢れた現象が記載されているように、「カエルが天から降って来る」現象は、竜巻が理由かどうかは別にして、創世記神話につながりやすいからかもしれません。

 写真はバリのウッドカービングのカエル。本当はありえない翼の生えたカエルの姿は、バリのシンボルである霊鳥ガルーダと、農耕の神ヴィシヌ神の使いのようなカエルが合体したイメージでしょうか。

 それは旧約聖書以来伝えられた大天使、その名も「ミカエル」の姿も思い起こさせ、カエルが空から落ちて来る現象に、つい超自然的なものを感じたくなります。

 

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2022年1月21日 (金)

七福神は身近なカエルたちのそばにいる。/かえるモノ語り-自然と文化をつなぐカエル61 「ほっと・ねっと」2022年1月号

<七福神は身近なカエルたちのそばにいる。>

高山ビッキ(100年カエル館)

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 毎年年頭は皆さまのご多幸を願って、一〇〇年カエル館のコレクションの中でも縁起物としてご利益がありそうなカエルグッズを紹介しています。

 今年は七福神を背中に乗せた金色の福蛙(写真)です。

 「七福神」と「福蛙」を合わせて、これ以上ないラッキーアイテムを造りたいという制作者の思いが伝わります。

 同様のことを同館の企画でも試みたことがあります。私たちの表現手段は展示イベントですので、アニメ作家で画家の前田康成さんにオリジナルの「七福神蛙」を描いていただき、その神様たちそれぞれの世界観に、写真家の矢内靖史さんのカエルの写真作品を組み合わせてホテルギャラリーに展示しました。

 たとえば、前田さんが描いた、カエルの姿で釣り竿と鯛を持つ「恵比寿蛙」には、矢内さんが写した繁殖期のカエルの写真を合わせて展示し、恋愛や結婚成就の願いが叶うように。

 音楽や知恵の神で、琵琶を奏でる「弁財天蛙」は、美しい鳴き声を聞かせるカジカガエル等の写真を合わせて学問や芸術・芸能を極めたい人のために。

打ち出の小槌(こづち)と大きな袋を持った豊穣の神「大黒天蛙」には、害虫を食べてくれる田んぼのカエルたちをパートナーとして。

 凛々しかったのは武将の姿をした守護神の「毘沙門天蛙」。繁殖期の〝カエル合戦〟に負けないオスのカエルや強面(こわもて)のヒキガエルを共通のイメージに。太鼓腹と大きな袋がトレードマークの「布袋蛙」は、案外、体は小さいけれど鳴くときにはのどの辺りにある鳴(めい)嚢(のう)という鳴き袋を大きく膨らまし、鳴けば恵みの雨が期待できるアマガエルが適役かと。そして、長寿を象徴する「寿老人蛙」と「福禄寿蛙」には、日本のカエルの中で比較的寿命が長いといわれるヒキガエルに登場願いました。

 テレビアニメ「まんが日本昔ばなし」の作家でもあった前田さんの愛らしく表現力豊かな絵と、福島に生息するカエルたちを愛情をもって撮影している矢内さんの写真は、見事な幸福オーラを放ったのでした。

 庭や田んぼでカエルを発見したら、大切に思ってください。幸せをもたらす七福神蛙かもしれません。

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2021年10月25日 (月)

「蛙文字(かえるもじ)」が教えてくれた幸福の意味/かえるモノ語り―自然と文化をつなぐカエル58 「ほっと・ねっと」2021年10月号 

<「蛙文字」が教えてくれた幸福の意味 >

高山ビッキ(100年カエル館)

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渡辺弥七 画

 福島県とカエルといえば、いわき市が「かえるの詩人」草野心平の出身地で知られ、当地に記念文学館があります。

 そして三春町には、有名な滝桜の近くに「蛙さんの家」と名づけたアトリエで、自ら生み出した「蛙文字」を書き続けた渡辺弥七さんがいましたが、今年8月に88歳で逝去されました。

 100年カエル館を開設する前のわが家にはすでに両親が「蛙さんの家」を訪ねて買い求めた「蛙文字」の色紙が壁に掛かっていました。

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 「蛙文字」は、漢字やかな文字の一点一画がさまざまなポーズの蛙の絵で描かれていて、言葉として読むことができます。でも描かれたーつひとつのカエルのポーズにフォーカスすると絵なのか文字なのか、不思議なアートでした。

 100年カエル館では、渡辺さんに草野心平が独自の「蛙語」で書いた「ごびらっふの独白」を蛙文字で大きな布の上に書いていただいたことがありました。世界的な両生類保全キャンペーン「国際カエル年」が行われた2008年のこと。 

 日本動物園水族館協会との共催により、京王プラザホテル(東京・新宿)のロビーギャラリーで「カエルプラネットへようこそ」と題した展示イベントを行ったときでした。

 蛙文字になった「るてえる びる もれとりり がいく」(日本語訳=幸福というものはたわいなくっていいものだ。)で始まる「ごびらっふの独白」は、蛙たちの歌に合わせて、文字の蛙たちが楽しく踊っているようでした

 蛙が表現された日本の詩歌には、日本人の自然観がよく表れていて「カエル年」にふさわしいと考え、渡辺さんには他に松尾芭蕉の「ふる池や蛙飛びこむ水の音」と、小泉八雲によるその俳句の英訳、そして小林一茶の「痩せ蛙」の句を「蛙文字」にしていただき、ホテルロビーの大きな壁面に展示しました。

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 イベントは、終われば跡形もなく消える夢のような時間で、渡辺さんと「蛙文字」でご一緒した時間も、ご本人亡き後、楽しい思い出として煌めいています。

 生前のご本人は、何万という蛙を一匹一匹描き続ける日々を送りながら、「幸福」の意味を伝えようとしていたのかもしれません。

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2021年10月 2日 (土)

かえるモノ語り―自然と文化をつなぐカエル57 「ほっと・ねっと」2021年9月号 ある会津人と小泉八雲、そしてカエル 

<ある会津人と小泉八雲、そしてカエル>

高山ビッキ(100年カエル館)

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 9月に入って急に気温が下がり、道脇の草むらからは秋の虫たちの“演奏会”が楽し気に響いてきました。

 日本人の暮らしの中には、スズムシやカジカガエルなど、心に染み入るような虫の音やカエルの鳴き声を愛でる風習が古くからありました。その美意識は、日本人特有とまでは言えなくとも、西洋人にはあまりない自然観であることを、異国からの来訪者の視点で評価したのは、小泉八雲、ラフカディオ・ハーン(18501904/以下ハーン)です。今でも日本では特にその短編小説『怪談』で親しまれています。

 ハーンがビッキ(=カエル)と呼ばれていたと教えてくださったのは、私がビッキと名乗っていることを知った、島根県松江市にある小泉八雲記念館館長で、ハーンのひ孫でいらっしゃる小泉凡さんでした。

 小泉館長には100年カエル館企画のフォーラムで二度ほど「小泉八雲とカエル」をテーマに講演をしていただいたことがあります。掲載した広告画像は、2011年に上野動物園で開催したときに制作したものです。カエル型宇宙人という設定の漫画のキャラクター、ケロロ軍曹と、明治の日本にやってきたハーン。「カエル」を共通項にもつ両者の「異界」からの視線を通じて、21世紀に求められている自然との共生について語っていただきました。

 その打ち合わせで小泉館長に初めてお会いしたとき、喜多方(100年カエル館の所在地)にはとてもお世話になった方がいるとおっしゃっていました。ただその時は、お名前まで伺うのは遠慮しました。

 しかし、その後、歴史小説家司馬遼太郎のエッセイ「ある会津人のこと」を読んで、その方とは、私たち姉妹にとっては母校喜多方第一小学校のときの校長先生、秋月一江先生なのではないかと思い至りました。

 先生のご先祖である会津藩士秋月悌次郎は、明治に入って熊本第五高等学校で教鞭を執っていた時期がありますが、同じ頃、ハーンも同校に在職していたからです。

 ハーンは秋月翁を「近づくと暖かくなる暖炉のような人」「神様のような人」と尊敬していたとそのエッセイには書かれていました。

 会津人秋月悌次郎は、日本人の自然観同様、ハーンが発見し理想を見た日本の心そのものだったのでしょう。

■画像キャプション 

上野動物園で開催したフォーラムのチラシ。ケロロ軍曹の右隣はイラストに描かれたハーンの後ろ姿。

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2021年8月22日 (日)

かえるモノ語りー自然と文化をつなぐカエル56 「ほっと・ねっと」2021年8月号 鋤(すき)のような足のニンニクガエルは土の中がお好き

<鋤(すき)のような足のニンニクガエルは土の中がお好き>

 高山ビッキ(100年カエル館)

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ニンニクガエル(柴田まさる画)

 猛暑のなか行われた東京オリンピック。一番印象に残った選手は誰?と問われれば“カエル好き”としては迷うことなく、ボクシング女子フェザー級のゴールドメダリスト、入江聖奈選手を挙げるでしょう。

 世界に向かって「カエル好き女子」の存在を知らしめたのではないでしょうか。

 「多様性」がテーマのひとつでもあった今回のオリンピック。何を好きかという、趣味嗜好も人それぞれであるという当たり前のことを、明るくあっけらかんと表明してくれました。

 カエルは、生物多様性を象徴する生きものです。世界には約6500種のカエルがいて、それぞれ生息する自然環境に適応して生きています。

 最近は日本でも水族館の生体展示や、世界の自然をテーマにしたテレビ番組などで外国のカエルを目にする機会が増えています。ただどちらかというと、見るからに日本のカエルとは違うビビッドな体色や珍しい生態をもつ、たとえばヤドクガエルやベルツノガエル、トマトガエルなど赤道付近から南半球に分布するカエルが紹介されることが多いように思います。

 では、日本とは同じく北半球でもヨーロッパ大陸にはどんなカエルがいるのでしょうか。今年、世界自然遺産に登録された奄美・沖縄を擁する日本と違って種類はあまり多くはありませんが、魅力的な生態をもつカエルがヨーロッパ各地にいます。

 一種挙げればヨーロッパ中部・東部を中心に分布しているニンニクガエル。スタミナがつきそうな名前のカエルですが、これは和名で、英名はCommon Spadefoot toad(コモン・スペードフット・トード)。スペードフットのスペードとは鋤(すき)のことで、かかとが硬い骨質で、これを鋤のように使って地面に穴を掘ります。ときには1mも掘って地下にもぐり、地上にエサを求めて出る夜間や春の繁殖期以外は、ずっと地中で過ごしています。 

日本のカエルの場合、冬眠する時季でも倒木や枯れ葉の下、地中でもそれほど深くないところにもぐり、冬眠から覚めれば土にもぐることはなく地上で活動します。

 カエルを通して日本や世界を再発見することも、「多様性」の理解につながるかもしれません。

 

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